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穴の中の君に贈る【毎週ショートショートnote】

地球のどこか。

地中の大きな穴に住むという部族があった。そこでは地中の染み出でる水と昆虫、小動物、木の根やわずかに育つ植物を食べ、その部族は生活をしていた。

地球の環境変化でその場所の気候も変わった。

その部族が住む場所も例外ではなく、日を追うごとにその部族の人口は減っていった。

「穴の中の君に贈るよ」

調査官の僕は部族の子供たちに食料を配った。

彼らは穴から出たことがなく穴の中だけが世界なのだ。嫌味でもなんでもなく穴の外にはいろいろあるよということを伝えたかった。

「お兄ちゃん、いつもありがとう。とても美味しいよ」部族の子供が感謝をしてきた。

「あんた、もう食料は持ってこなくてええ。早く帰れ」部族長にそう告げられた。

「でもみんな餓死して全滅してしまいますよ」

「それが地球の意志であればそれに従うまでじゃ。いいから帰っておくれ」

僕は何も言えずその場を後にした。

地中は湿度が高く、目がぼやけて、帰りはうまく帰ることができなかった。

(410字)



たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※SFショートショート?にしてみました。

※本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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