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君はやさしいヒーローさ。


「アンパンマンにお茶入れて。」
と、この生涯で何回口にしたんだろう。
私が小さい頃から使ってるアンパンマンのコップ。
お茶もコーヒーもぜんぶこのコップに入れて飲んでいた。二十数年間愛用していた。それがとうとう最後の一個となってしまった。
"アンパンマンユニバーサルデザインカップ" 製造元:株式会社梅屋さん

そのアンパンマンのコップは緩やかな台形で、飲み口のところにストローが固定できる突起がついている。ストローが固定されるため、ストローと追いかけっこしなくていいし、コップからストローが飛び出すことがないので、とても優れたマグカップだ。この形は他のマグカップにはなくて、飲み物を飲むのに常にストローを使う私にはなくてはならない物だった。

そんな貴重なコップだが、つい先日私の不随運動には勝てず、元気のいい右手がアンパンマンを直撃してしまった。右手は私のものだけど、私の意思ではなく"右手"の意思だったため「右手ぇ〜😭」となった。右手は悪くない。
ストックが残り一個しかないことも分かっていたから、割れてしまったそのかけらを見て悲しみと寂しさでなんとも言えない気持ちでいた。

物心がついた時からアンパンマンのコップがそばにいて、私の生活をただじっと見つめていた。だんだん成長してくると、アンパンマンなのが恥ずかしくなり、思春期になると「なんでアンパンマンなんだよ〜」とそこにいるアンパンマンに睨みをきかせていた。だけれど使いやすいのは変わらず、アンパンマンのコップを使っている恥ずかしさより、次第にアンパンマンの便利さが勝っていた。少し年を重ねるとアンパンマンの産みの親やなせたかしが何故アンパンマンを描いたかを理解して、アンパンマンが愛しい存在となった。もう一周回って「アンパンマン可愛いじゃん!アゲ〜☝️☝️」とコップを使っていた。
病める時も健やかなる時も、アンパンマン。

アンパンマンよ、あなたはこれからも私の生活を支えてくれるのか。
それともここで砕けて消えてしまうのか。
頼むからこれからも私の生活を見守ってくれ。
株式会社梅屋さん、どうかもう一度このコップを再販してください。

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