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47の居酒屋日記 第6夜 高知県「味劇場ちか」

この“居酒屋”は名前のとおり厨房を劇場にみたて、それを囲むように円弧状にカウンター席が並んでいる。臨場感ある空間デザインに、職人たちの声が響き渡り、四万十市という決して大都会ではない町に、取材中訪れるきっかけをつくってくれた店でもあります。地元の人や市外からの観光客も、みんな楽しそうに早い時間から吞んでいますが、何よりユニークなのが吹き抜けの2階席。1階と同じように円弧状のカウンター席は厨房を見おろし、料理を注文すれば、天の声ならぬ、店員の声が吹き抜けからダイレクトに厨房へと伝わる。すると、食品用エレベーターではなく、人の手で「ばんじゅう」がスルスルッと引き上げられ料理が宙を舞うのです。そのロープさばきも手際よく、それを見るだけでもここへ訪れる価値はある(?)メニューも四万十川の海苔や川エビ、ゴリ、鰻などを堪能できる郷土料理もあって楽しさは倍増。極めつけは、「皿鉢料理」の名物でもある鯖の姿寿司のホイル焼き。鯖の臭みが苦手な人も、酢飯ごと焼いちゃえば香ばしくなってたまりません。テーマパークのようなコンセプトの居酒屋はあまり好ましくはないけど、ここはそのあたりのバランスが絶妙で、デザイン性も感じる。2階と1階で、店員が吹き抜けごしに会話している情景もこの店ならでは。天(2階)か、地(1階)か、あなたならどちらに席を取りますか。

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