居酒家ヨンスケ

仕事の傍ら、さまざまな居酒屋に出会う日々。すべての日本人にとって安息の地とも言える場所…

居酒家ヨンスケ

仕事の傍ら、さまざまな居酒屋に出会う日々。すべての日本人にとって安息の地とも言える場所・居酒屋の今を旅します。先達たちの歩んだ道を47都道府県ごとに記録中。

最近の記事

47の居酒屋日記 第16夜 岡山県「成田家」

日常的に気楽に行ける居酒屋チェーンは、ごまんとありますが、僕の中での“居酒屋”の定義は、あくまで1人呑み。酒と肴に向き合い、心の中の自分との対話。緊急事態ならまだしも、旅先で居酒屋チェーンに行くのはもってのほか。基本は許されませんが、岡山の「成田家」は例外でした。県民に訊いてみると、知らない人はいない、岡山市を中心に展開する居酒屋チェーン。“総本店”という肩書きの店舗もあるけれど、どうやら他にも“元祖”だという店舗もあったり、知れば知るほど謎多き居酒屋。そんな店の、のれん分け

    • 47の居酒屋日記 第15夜 大分県「湖月」

      大分県別府といえば日本随一の温泉観光地。道路の至る所の隙間から、「地獄」ともいわれる温泉の湯煙が立ち上っている光景が、今でも幻想的だったと思い出します。如何わしい風俗街も、日本各地の温泉地には付きもので、よく怪しい婆さんの客寄せを振り切って街を散策したものです。さて、そんな温泉地で、今回ご紹介したいのが、「湖月」という“居酒屋”です。特筆すべきが、そのメニュー。額装された色紙に、「舌代 鍋烚 六百圓也 ビール 六百圓也」と、書かれただけの潔さ。(『舌代(しただい)』とは、口

      • 47の居酒屋日記 第14夜 鹿児島県「丸万」

        鹿児島で「酒」といえば、芋焼酎であり、お湯割りや水割り、ロックやストレート、さまざまな呑み方も楽しめる不動の地酒。なんでも日本酒は、県内でもたった一つの酒蔵しか造っていなく、ほとんどの飲食店では置いていないに等しい。ちなみに、かつての焼酎ブームで人気を博した「霧島」は、実は宮崎県の焼酎で、いわゆる“薩摩焼酎”とは別もの。さて、そんな鹿児島で一人で呑むなら「丸万」は絶対外せない。あの天才バカボンの赤塚不二夫先生が描いたロゴマークが目印で、決して、“昭和レトロ風”の見せ掛けの店で

        • 47の居酒屋日記 第13夜 静岡県「泰平」

          “居酒屋”の楽しみ方は人それぞれですが、僕はなるべく「常連」(※客側の意識ではなく、店側の認識)にならないようにしたい。というのも、常連になってしまうと、一人でゆっくりしたい時にも、どこか気を遣い、話したくもない世間話を、店主や常連客としなくてはならないなど、ここでいう“居酒屋”の時間を十分に満喫できないからです。さて、今夜は静岡の居酒屋「泰平」をご紹介。外観は平屋造りの古民家風で、型染めののれんが芹沢銈介の出身地「静岡ならでは」を背負っているようで、少し背筋も伸びる。15時

        47の居酒屋日記 第16夜 岡山県「成田家」

          47の居酒屋日記 第12夜 京都府「京極スタンド」

          昼間から営業している定食屋兼居酒屋「スタンド」は、観光客も多い京都の商店街にある。ハイボールだけで、永遠と煙草を吸っている常連客の隣で、京大生が、メガ盛りの名物「揚げそば」を食べているのを見ていると、これこそ歴史情緒ある古都・京都の素顔のようにも思えてきます。かれこれ4年ぶりに訪れた「京極スタンド」でしたが、相変わらず揚げそばも健在で、もちろん客層も同じ、観光地だからといって一切格好つけていないのがいい。「スタンド」というけど、いわゆる立ち呑み屋ではなく、家族連れもいるほどの

          47の居酒屋日記 第12夜 京都府「京極スタンド」

          47の居酒屋日記 第11夜 愛媛県「サントリーバー露口」

          東京の人はご存知ないかもしれませんが、愛媛県松山の夜といえば、「サントリーバー露口」。19時オープン、たった13席しかないカウンターだけの店内は、20時を回る頃には、ほぼ満席状態。開業半世紀を超え、ツタに覆われた大谷石の外壁に、オレンジ色の照明が溢れる様子は、まさに昭和のバー。居酒屋好きの僕からしてみると、バーは若干抵抗があるが、この店だけはここでいうところの“居酒屋”に値する。入店すると、ママの「いらっしゃーい」という明るい声は、一瞬にかき消され、家族団らんのように常連客も

          47の居酒屋日記 第11夜 愛媛県「サントリーバー露口」

          47の居酒屋日記 第10夜 香川県「中華そば マーちゃん」

          今回の“居酒屋”は、高松の喧騒から少し離れた場所に佇むラーメン店。というのも、まず、香川県は「讃岐うどん」で知られ、その専門店がなんと700もあるというので驚く。しかも、讃岐うどん店の特徴の一つに挙げられるのが「おでん」。せっかちな香川県民は、うどんが茹で上がるまでの間、おでんを食べて待つのが習慣で、まぁ、そんなうどん店に負けじと劣らず、もはやそれだけでも酒が何杯でもいけてしまう名物おでんがあるのが、路面電車「ことでん」の線路脇に佇む「中華そば マーちゃん」。店内にラーメン屋

          47の居酒屋日記 第10夜 香川県「中華そば マーちゃん」

          47の居酒屋日記 第9夜 岩手県「中津川」

          デザイン系や民藝好きの聖地と言う人も多い「光原社」、そして、わんこそばで有名な「東家」(実はカツ丼も美味しい)など、観光地としても魅力ある岩手県盛岡。個人的には南部鉄器の「窯定」には人一倍の憧れもあり、約1年待ちの鉄瓶を買ったことだってある。そんな盛岡の中心は、実は盛岡駅ではなく、少し離れた「盛岡城」周辺から栄えた歴史がある。まるで映画のワンシーンのような古き良き城下町を感じる本丸地域は、小さな喫茶店やじゃじゃ麺屋が軒を重ね、若者にも人気のエリア。そんな場所に居酒屋「中津川」

          47の居酒屋日記 第9夜 岩手県「中津川」

          47の居酒屋日記 第8夜 山形県「久村の酒場」

          山形県鶴岡市に訪れたのはかれこれ5年ほど前でしょうか。谷口吉生建築の「土門拳美術館」や、庄内米のミュージアム「山居倉庫」など、デザイン的にも魅力ある場所が点在していて、ほぼ初めての東北の文化に感銘も受けました。食も北に行けば行くほど、冬を越すための保存食などが発達していて、どこの居酒屋に入ったとしても美味しい郷土料理に出会う確率が高い。「久村の酒場」は、1867年に創業した酒屋に併設した居酒屋。真っ暗な町並みに映える電光看板と2つの赤提灯。平屋造りの店舗デザインは見るからに間

          47の居酒屋日記 第8夜 山形県「久村の酒場」

          47の居酒屋日記 第7夜 山口県「三桝」

          本州の最西端に位置する山口県・下関。関門海峡を挟んで福岡県・門司は目と鼻の先。ここは、ふぐをはじめとする海産物が名物で、近代的な煉瓦造りの唐戸市場や水族館海響館があるなど、多くの観光客が集まる。さて、そんな下関で大衆酒場といっても、ふぐ料理や地酒があると聞いたものだから行かないわけにはいきません。「三枡」と書かれた看板が3枚並ぶ通路を奥へと進み、扉を2つ開ける。え、ここでいいの?と最初は疑うかもしれませんが、中は案外広くて、厨房を囲むようにカウンター席と、壁づたいに小上がり席

          47の居酒屋日記 第7夜 山口県「三桝」

          47の居酒屋日記 第6夜 高知県「味劇場ちか」

          この“居酒屋”は名前のとおり厨房を劇場にみたて、それを囲むように円弧状にカウンター席が並んでいる。臨場感ある空間デザインに、職人たちの声が響き渡り、四万十市という決して大都会ではない町に、取材中訪れるきっかけをつくってくれた店でもあります。地元の人や市外からの観光客も、みんな楽しそうに早い時間から吞んでいますが、何よりユニークなのが吹き抜けの2階席。1階と同じように円弧状のカウンター席は厨房を見おろし、料理を注文すれば、天の声ならぬ、店員の声が吹き抜けからダイレクトに厨房へと

          47の居酒屋日記 第6夜 高知県「味劇場ちか」

          47の居酒屋日記 第5夜 東京都「ふくろ」

          池袋西口公園のすぐ側、その名も「ふくろ」という。地元の人や池袋で働くサラリーマンにとっては定番中の 定番で、いかにも大衆居酒屋という店構えで、僕も何度か利用したことはあったのですが、3人以上で行くと、基本的に三階のテーブル席へ通されてしまうので、どちらかと言うと、二次会の駆け込み寺的な感覚で利用していました。しかし、ある晩1人で行ってみると、今まで縁のなかった一階の細長い「コの字」カウンターに座ることになり、そこからがこの「ふくろ」の真骨頂。むしろ、最初からこの店は1人で行く

          47の居酒屋日記 第5夜 東京都「ふくろ」

          47の居酒屋日記 第4夜 愛知県「丸八寿司」

          名古屋は、全国的にも珍しく、港ではなく、大都市の駅前に卸売市場があって、その地区にはたくさんの飲食店がひしめいている。そんな市場の場末にある「丸八寿司」は、薄暗い階段が入り口で、上がってみないと中の様子も覗けないという、限りなくハードルの高い店なのですが……種(ネタ)明かしをしてしまうと、店内はいわゆる回転寿司のような職人を囲むカウンタースタイル。個人的には、座敷部屋に通されると、俄然、気分が高まりました。ひと昔前の宴会場のようで少しくたびれた畳もよい。さて、メニューがまたユ

          47の居酒屋日記 第4夜 愛知県「丸八寿司」

          47の居酒屋日記 第3夜 高知県「葉牡丹」

          誰彼構わず盃を酌み交わす「おきゃく文化」がある高知県。そんな酒呑みにもってこいの土地には、居酒屋も名店ぞろい。そんな中で僕がお薦めするのは、まちがいなく高知人も納得の「葉牡丹」です。高知の商店街を見守るように大通りを挟んで建っていて、小さな店構えなのに、奥に長い鰻の寝床のような店づくり。味のあるイラストが描かれた暖簾をくぐると、威勢のいいお母さんたちの声が店中に響き渡っています。従業員はほぼ女性が占め、まさに女性の県民性を表す「はちきん」を具現化したように、時には言い争いにな

          47の居酒屋日記 第3夜 高知県「葉牡丹」

          47の居酒屋日記 第2夜 香川県「なぎさ」

          香川県にある酒蔵は、わずか6蔵。とはいえ、凱陣や川鶴などのうまい地酒はあるし、またそれらをいただける上等な料亭などもあるにはあります。しかし、肝心の“いい居酒屋”が少ないのです。それは酒好きにとっては死活問題で、特に高松は、うどん食文化に侵食され、居酒屋はおろか、閉店時間が早い飲食店が多く、人気の店にはアート好きのインバウンドがこぞって行列をつくり、地元の人でさえ肩身がせまい。では、そもそもここでいう“いい居酒屋”とは何か。うまい酒と肴があって、お洒落で綺麗、という店ではなく

          47の居酒屋日記 第2夜 香川県「なぎさ」

          47の居酒屋日記 第1夜 東京都「赤提灯」

          上野不忍池からすぐ、風俗店も立ち並ぶネオン街のど真ん中で、堂々と今日も赤提灯を揺らす居酒屋「赤提灯」。中央に長テーブルが並ぶいわゆる大衆酒場で、ジョッキグラスを片手に文庫本を読む若者がいる店内は、もはや〝正しい居酒屋の在り方〟にも思えます。 仕事が煮詰まったりした時についつい行ってしまうのは、頭を空っぽにできるからで、ボーッとテレビを見たり、人間観察したり、音楽を聴いたり、格好つけてバーとかに行くような性格でないからこそ、こういう店がいいのです。小柄で年季の入ったパーマ頭。酒

          47の居酒屋日記 第1夜 東京都「赤提灯」