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47の居酒屋日記 第13夜 静岡県「泰平」

“居酒屋”の楽しみ方は人それぞれですが、僕はなるべく「常連」(※客側の意識ではなく、店側の認識)にならないようにしたい。というのも、常連になってしまうと、一人でゆっくりしたい時にも、どこか気を遣い、話したくもない世間話を、店主や常連客としなくてはならないなど、ここでいう“居酒屋”の時間を十分に満喫できないからです。さて、今夜は静岡の居酒屋「泰平」をご紹介。外観は平屋造りの古民家風で、型染めののれんが芹沢銈介の出身地「静岡ならでは」を背負っているようで、少し背筋も伸びる。15時半オープン、19時半オーダーストップという超健全な居酒屋。いつも行く時は閉店間際で、後片付けも始まる頃にいるものだから、ひと仕事終えた店の親父さんにも顔を覚えられ、不覚にも店の「常連」に……ところがそれが僕にとってのこの店の“居酒屋”としての楽しみ方の始まりだったのです。要は、店との「間」。椅子が片され、迫りくる閉店時間のプレッシャー。それでも親父さんは、タバコを吸いながら名物の「ながらみ」だけは出してくれたり、もはや常連だから味わえる特別な「間」。この何とも言えない距離感を、少しずつ縮めるのに味をしめたのでした。気づかない間に、客も僕一人。いい居酒屋です。

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