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47の居酒屋日記 第1夜 東京都「赤提灯」

上野不忍池からすぐ、風俗店も立ち並ぶネオン街のど真ん中で、堂々と今日も赤提灯を揺らす居酒屋「赤提灯」。中央に長テーブルが並ぶいわゆる大衆酒場で、ジョッキグラスを片手に文庫本を読む若者がいる店内は、もはや〝正しい居酒屋の在り方〟にも思えます。 仕事が煮詰まったりした時についつい行ってしまうのは、頭を空っぽにできるからで、ボーッとテレビを見たり、人間観察したり、音楽を聴いたり、格好つけてバーとかに行くような性格でないからこそ、こういう店がいいのです。小柄で年季の入ったパーマ頭。酒が無くなるとすぐに隣に来ては、「何か吞む?」と、被せ気味に注文をとるお母さん。ちょっとお節介ですが(汗)、そんなお母さんの愛嬌のよさもこの店ならでは。昔は、どこのお店にも必ず看板娘がいたのだろうけど、チェーン店が増える今の時代でこそ、貴重な存在とも言えます。メニューも豊富で悩んでしまいますが、僕は決まって小なす。サッと出てきて、中まで青く染まったゴムチューブのような見た目も、クスッと笑ってしまうような可愛らしさ。ごちそう感からはほど遠いけど……もうお分りですね。お勘定も良心的。お母さんに見送られ、客引きを避けながら家路へと急ぐのでした。


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