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雨降る京都でブローザホーンが初G1獲得!菅原明良騎手の好騎乗とドウデュースの誤算を振り返る(第65回宝塚記念回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.06.23 16:30~からの文字起こしです。


第65回宝塚記念

蒼山サグ:
本日は宝塚記念の回顧を早速行っていきたいと思います。こちらまずはゆたさんの方からお願いできますでしょうか。

くらみゆた:
今年の宝塚記念ですが、昨日の展望でも述べた通り、道悪の適性がかなり問われることになったのではないかと思います。その道悪にバッチリはまったブローザホーンが菅原明良騎手の好騎乗に導かれてG1初制覇という形になりました。宝塚記念は、チャンピオン決定戦という意味では難しい時期、舞台設定であるものの、展望で述べていた凱旋門賞壮行会としては意味をなしているようなレースになったと思いました。

レースを振り返りますと、まず注目されたのが逃げ争いです。どの馬が逃げるかというところがあったのですが、逃げたのはちょっと意外でしたね。川田騎手のルージュエヴァイユが逃げる形になりました。後ろから言っても余り勝ち筋はないというところで、過去先行したこともあるので逃げたという選択をしたのかもしれません。3番手のプラダリア。スタートで少し後手を踏む形になったのですが、かなり積極的に前を狙ってきました。結果的には4着という形になりましたので、もう少しスタートロスがなければ一つ上の着順だったのかなというところで、少しもったいないスタートになってしまいましたが、騎手としてはやれることはやったのかなという印象が残った形です。注目のドウデュースですが、こちらスタートまでは悪くなくて、真ん中あたりの枠の馬が前に行きましたので、競馬がしやすそうな形になるのかなと思ったのですが、内に寄られ、外からブローザホーンにブロックされるような形で外までは出せずという形で、少しリズムが悪そうな入りになっていました。

向こう正面に入ってからは予想通りというところですが、かなり落ち着いたラップで12.7秒、12.7秒、12.9秒という形になりましたので、予想通り誰が最初に動くかという我慢比べという形になっています。その中で動いたのがローシャムパーク、残り1000mぐらいから大阪杯の再現を狙うような形で動きました。ただこれは後ろの馬には良い目標という形の動き方になってしまいまして、ここで少し前を置いてしっかり反応したのがブローザホーン。ここで少しポジションを上げられたというのが大きかったと思います。ドウデュースもここでもう少しポジションを上げては良かったのかなと思ったのですが、ここでは動かなかったというのが少し意外でした。レース後の武豊騎手のコメントを見てみないと分かりません。ここは動けなかったのか動かなかったのかというところで、少しレースとドウデュースの今回の評価というのが変わってくるのかなと思います。

4コーナーの手前でプラダリアベラジオオペラ、それからローシャムパークが積極的に動いていく形で直線に入りました。外に進路を取った3頭が直線戦闘を繰り広げるものの、外から末脚を見せたのがブローザホーン。一気に抜け出すと道中適度に脚を溜めての地力を発揮するという形になりました。2着は札幌記念の再現とばかりに4コーナーから外に振って、大外から伸びたソールオリエンス。最後まで粘り込んだベラジオオペラ、こちらは本当に成長しているというか、ローテーションを見せた形になったと思います。

勝ったブローザホーンは、後ろ目からの位置取りになりましたが、逆に終始ドウデュースの外で動きを見られる良いポジションに収まったと思います。そのまましっかりドウデュースを内に見ながら、脚を溜められたところ。また、ローシャムパークを追う時に、ある程度前についていってポジションを上げて、ラップが大きく落ちたところで無駄なことをしなかったというところですね。さらにそこから一気に前まで伺うようなことはせずに、もう一回我慢できたというところ。これは馬も騎手もよく我慢できたと思います。そのおかげで4コーナーであまり外を回らずに済み、直線で一気に大外に進路を取る形になりました。我慢と思い切りの良さが呼び込んだ勝利だったと思います。本当にSNSでも上がっていましたが、シンザンの有馬記念のような、見てもいないのに言いたくなるような競馬だったと思います。

菅原騎手、最近は結果を出してきていましたが、ここでG1制覇という形で、秋の飛躍につながる成功体験を積めたのは大きかったと思います。馬も一気に成長しました。ブローザホーンエピファネイア産駒。古馬になってから成長力などいろいろ言われていましたが、馬によっては十分そこで通用するというところが出てきたのかと思います。ただ、秋にどこで戦うのかというと、秋の府中のパンパンの馬場はイメージできないですね。戦績から見ても、秋の府中の芝コースという形になると不利そうです。せっかくこれだけの内容で結果を出しましたので、タイトルホルダーの忘れ物を獲りに凱旋門賞に向かってほしいなと思わせるところでした

蒼山サグ:
オーナー的に凝っている可能性は結構ありそうですが(笑)。

くらみゆた:
オーナーはもう嫌だ、行くならアメリカだと言っていましたが、せっかくなのでチャレンジしてほしいところですね(笑)。(レース後、今年は国内専念の報道)

2着のソールオリエンスについて、昨日の回顧でもかなり期待していた馬でした。復活するのはここかなと思いましたが、期待通り皐月賞の再現を狙った競馬で2着という形になりました。ここでベラジオオペラを含めて4歳馬が上がってこれたというところは、秋に向けてトップクラスについては少し楽しみが出てきたのかなと思います。先ほど申し上げましたが、3着のベラジオオペラもかなり前々から粘り込んで、プラダリアローシャムパークあたりを抑えている結果ですので、かなり力をつけていると言っていいのかなと思います。

あとは今回、一番人気で崩れてしまったドウデュースですね。パトロールビデオを見ると、向こう正面では比較的馬場の良いところを走っていて、スタートはちょっとリズムが悪かったものの、そんなに悪くない追走ぶりには見えました。ただ、少し意外だったのは、ブローザホーンが動いたあたりで、外をまくっていくような競馬をしていっても全然不思議ではないと思ったのですが、そこでもう1回我慢するような形で、結果的に内を狙っていくという形になりました。

レース途中でものすごく雨が強くなったというところもあって、3コーナーから4コーナー、ちょうどドウデュースが走っているところが、そこからもう本当に泥だらけという形になってしまっていたので、そこでちょっと走る気をなくしてしまったのかなとも思いました。最後の直線自体は、馬場の真ん中辺りまで出ていましたので、そこまで馬場は荒れているという印象はなかったのですが、その前の時点、特に3、4コーナーの位置取りで内を選んでしまったというところで、進路の取り方に失敗してしまった印象があります。ブローザホーンが動いたところで、外に行かなかったというところ、内を選んでいたというところに関しては、武豊騎手がどう考えているのか、もしくは動きたくても動けなかったのかというところは、レース後のコメントでチェックしたいところかなと思います。(レース後のコメントでは武豊騎手は「外へ行きすぎるのを嫌って、内を選んだ」とのこと。結果論ながら騎乗ミスになった部分はあったかと)

今日の結果、馬場が悪いと言っても、京都競馬場の勝ち馬はみんな上がり34秒0で上がっているわけですので、このレベルでちょっと馬場が悪いと言ったとすると、凱旋門賞については、もちろん晴れてしまえば馬場が堅くなるというのは一つの論点ではあるものの、「海外遠征×」が付いてしまった感じもあるドウデュースですので、素直に秋は日本で、もう一度タイトルというかプライドを取り戻す競馬をしてもいいのではないかなと思いました。

蒼山サグ:
続いてこひさんはいかがでしょうか。

こひ:
このレースは直前に雨が降り始めて、さらにレース中に強まるという形でかなり3、4コーナーが大変なことになりました。何度か回顧の前に映像を見返すのですが、見れば見るほどすごい、印象的な絵面ことになったなという印象です。さらに通ったコースが大外一気ということで、すごく見た目ビジュアル的に印象的なレースになったなというところを思います。逆にそんな状況下でありながら、勝ち馬の上がりが大外をぶん回していくロスのどちらかというと多いレースの中で立ち回りをしながら34秒0が出ているというのは結構驚異的だなと思いました。リニューアルされた京都競馬場の排水性の良さというのはすごいなと非常に思わされます。そう考えると、そこまで馬場が悪かったというだけで言い切る結果でもないのかなというところはちょっと思ったところですね。

先ほどからも話題に出ていましたドウデュースですね。この序盤はどちらかというと回顧でもレースでも含めて何ら存在感がなく、適性がなかったのか消えていたような形でしたジャスティンパレスドウデュースは序盤ジャスティンパレスを意識していたようにも見えました。ちょっと後ろを伺うような動きがあったりですとか、直線でも最後インをついていった時もこのジャスティンパレスのインから合わせにいくというような動きをしていたので、若干外から動けるコンディションでもないなというところも含めての進路取りの判断だとは思います。消極的なのか、そういうつもりだったのか、ジャスティンパレスを目標にして競馬をしてしまったというところも結果的にはうまくはまらなかったのかなと思います。

京都の下りでは動きにくいタイプなのか、この馬場なのか、道中で動ける自信というのが持てなかったのもあって、道中ずっとブロックされていたところも含めて後手後手になってしまったなというような印象のレースだったかなと思います。そういった中で言いますと、逆に条件揃っていた組で言いますとプラダリアですね。ゆたさんの解説でもありましたが、このまま本当最高の条件がレース前には揃っていたなというふうに思われたので、スタートでちょっと後手を踏んでしまってポジションを取るのに馬を動かしてしまったというところだけが悔やまれるなというところは見直していて思いました。

あとはやはり勝ったブローザホーンは菅原明良騎手の判断というところをすごく褒めたいなというふうに思います。やはり道中ちゃんと意識してドウデュースを外から視野にいれていたというところと、外から自分が動くべきところでソールオリエンスあたりと比べても早くちゃんと動いて自らが進路選択をできるというところを取り切ったというところもありますので、若手のG1未勝利の中で自分で積極的にレースの中で動いて、その結果につなげていったというところですごく本人の自信にもなるそういったレースだったのかなというふうに思います。改めて結果見てますと1着菅原明良騎手で2着横山武史騎手3着横山和生騎手というような形になってまして、徐々に騎手の世代交代というところは見えるなというふうになってきている近年のJRAでもありますが、その中でもかなりちょっと印象的なこの騎手の並びというところも思わされたところですね。

あとはこの勝ったブローザホーン、先ほど凱旋門賞の話がありましたが、私も個人的にはそっちに行ったほうがいいんじゃないのかなと。次国内で言うと有馬記念かなというようなタイプでもありますので、特に最近ノーザンファームですとかが意識しています馬体重ですね。このブローザホーン428キロでこの馬場を勝ち切っているというところも非常に凱旋門賞で上位に進出できるチャンスがあるタイプというところの条件は備えているかなと思いますので、ぜひちょっと前のところの体験をトラウマにせずに積極的にチャレンジしてほしいなというふうに思います。

逆にドウデュースについては、ちょっと私以前から思っているので言いますと、ブリーダーズカップのほう行ったほうがいいんじゃないのかなというのは率直に思います。あちらは逆にちょっとコーナー結構タイトな条件でもありますし、この馬のパフォーマンス出せるんじゃないのかなというところと、多分ディスタフに行く馬ですとかが同じオーナー系列にいたりですとか意外に都合も良さそうな気もするので、ちょっとそこの辺選択肢の幅を広げて考えてもらえたら嬉しいなというのはちょっと思ったところです。

改めてレース見直してみますと、本当にやっぱりこういう条件ですとかの中で自分の馬にとってどういうことができることかなというところをしっかり考えてやり切った菅原明良騎手が勝ち切ったところもそうですが、2着の横山武史騎手、3着の横山和生騎手もすごくうまく騎乗して自分の馬の特徴を理解をした上で動くべきところで動いていたというような判断をしていたなと思いまして、そういったところの騎手の世代交代というのが私の中ですごく印象的なところで大きなレースだったかなと思います。はい、一旦私の方からは以上です。

蒼山サグ:
はい、ありがとうございました。お二方からご意見いただきましたが、何か最後に補足などございますでしょうか。

くらみゆた:
そうですね、騎手っていう意味で言うと春のG1勝っている騎手が全部違いますよね。

蒼山サグ:
しかもなんかおめでとうって心から言いたくなるメンバーというか

くらみゆた:
逆に言うとこの順番で武豊騎手が来なかったというのはちょっとこう意外というか、やっぱり時代が変わったなというところは感じさせられるところがありましたね、というところですね。あとはブローザホーン、多分428キロってことも含めて多分TT型ってことなんでしょうけど、母父デュランダル、母母父フォーティーナイナーでも母によってはTT型にでるもんですねと。

蒼山サグ:
はい、ありがとうございました。こひさんはどうでしょう、最後に。

こひ:
そうですね、やっぱり騎手が春のG1の間全然かぶらないまま終わったって本当にすごいことだなと思いまして。また近年短期免許で来ていた騎手であったり川田騎手であったり、ルメール騎手であったり、一昨年辺りであれば福永騎手というようなところが一定G1で結果残していくなか、完全な確たるトップホースがいない、1頭でG1何個も勝つ馬がいないということの裏返しでもあるのですが、色んな騎手にチャンスがあるというのは面白いですよね。若手にとってもモチベーションが上がる部分もあると思いますし、外国人騎手や短期免許の騎手も集う中でもやれることを示したことは意義があると思います。武豊、横山典弘とまだまだ元気ですが、彼らだけに任せ続けるわけにもいかないですしね。より短期免許組が揃う秋にもこういったシーンが見たいと思います。

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