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人気馬決着で決まるも、ルメール騎手の巧さがチェルビニアを樫の女王に(第85回優駿牝馬・第31回平安S回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.05.18 21:30~からの文字起こしです。


第85回優駿牝馬

蒼山サグ(以下、蒼):オークスの回顧、ゆたさんからお願いします。

くらみゆた(以下、ゆ):結果的には上位人気3頭で決まった今年のオークス。正直ここまで前のペースが流れるとは思わなかったのですが、離れた馬群は末脚をしっかり出し切れるミドルからスローに収まりました。結果的にオークス向きの末脚・能力上位の馬が順当に走れたのかなと。そしてチェルビニアの勝利で、ボンドガール組が最後の最後に意地を見せた印象です。

レースを振り返ります、スタートはちょっとばらついたものの、大きな出遅れはなありませんでした。外からショウナンマヌエラがハナを主張する形。タガノエルピーダが思ったより前につけてきたのですが、想定外だったのがヴィントシュトレ。そこまで制御できないというイメージではなかったのですが、2コーナーを過ぎても緩めることなく、大逃げという形でレースを引っ張りました。結果的にハナを譲ったショウナンマヌエラが2番手。ランスオブクイーンタガノエルピーダが離れた3,4番手。クイーンズウォークが比較的出していって5番手。中団にステレンボッシュその後ろにチェルビニア。その真後ろにライトバック、最後方にスウィープフィートという形の向こう正面での隊列に。

大逃げした2頭の前半が1000m通過57秒7とかなり早かったんですけれども、1000m通過時点でかなり後ろが差がありまして、3、4番手はもう2秒弱離れて、おそらく59秒5ぐらいの通過タイムだったのかなと思います。あとはクイーンズウォークあたりからステレンボッシュの馬群はそこからもさらに1秒離れていましたので、最初の前半1000mが60秒5ぐらいの入りだったように見えました。なので、前はすごく流れてましたが、後続馬群はそこまで速いペースでの追走という形ではなかったのかなと思います。

3コーナー過ぎて一気に馬群が詰まると、ヴィントシュティレショウナンマヌエラはあっさり潰れてしまって、ランスオブクイーンが先頭に。それを各馬が追いかける形になりました。外にスムーズに出していたクイーンズウォークが一旦は先頭に立ちましたが、内からステレンボッシュが先頭に立ったところ、最後の100m末脚比べでチェルヴィニアが前を撫で切って1着でゴールにしたという結果になっています。繰り返しになるんですけど、後続の追走が前半1000m61秒ぐらいで、結果を見ると最後の2ハロンは数字上、11秒5、11秒4という加速ラップになっているぐらいですので、全馬初距離、延長の中でスローに近い流れでしっかりと脚を溜められた馬がトータルで速く走れて上位に来たという点で、いつものオークスと同じような結果だったのかなと思います。馬群の先頭にいたランスオブクイーンが5着に入っていることを考えても、そこまで後ろが速い流れではなかったと考えてよいかと。こういう流れで慌てないルメールの良さというか、復活の勝利だったのかなと。

勝ったチェルヴィニア。スタートは、ルメール騎手が優しく出すと、すぐにステレンボッシュの斜め後ろを確保しています。結構、前進気勢の強そうなスタートだっただけに、前にいるアドマイヤベルを使って、ステレンボッシュを締めながら、自分はしっかりと馬の後ろで脚を溜めるというところは、前半本当に完璧というか、いつも通りのルメール騎手の見事な走りだったと思います。あとは、3,4コーナーですね。焦らず焦らずで、4コーナーの手前で斜めに外に出していって、外に誘導すると、直線仕掛けるところも2呼吸ぐらい待ってから追い出すという形。最後までしっかり脚を使い切れたのは、ルメール騎手の慌てない良さというのは出たのかなと思います。NHKマイルカップと違って、川田騎手も外にいなくて内にいましたので、そういう意味でも伸びる競馬ができたのかなと思います(笑)。勝ち馬の父がハービンジャー。種牡馬入りするときは、鳴り物入りというか、スタリオンの期待も結構高いというのは、見学でもよく聞いていた話なんですけど、なかなかディープインパクトサンデーサイレンス系の牙城は崩せていませんでした。ただこの種牡馬戦国時代にクラシックでも通用するところで見せつけたというのは、この後血を繋ぐという意味で価値のある勝利になったんじゃないかなと思います。

2着のステレンボッシュですね。戸崎騎手が普通に乗れれば勝ち負けと考えていましたが、2着とはいえ、今日はちょっと戸崎騎手の悪い面が出てしまったかなという印象です。まず目立つのは直線の仕掛けですよね。内の馬群を抜けるところで、脚の使いどころがよくなかったように見えました。前方では直線スタミナ切れの馬も多かったわけで、焦る必要もなかったのですが、前が開くとすぐ全力で追い出してしまったという形になりました。パトロールビデオで見ると、結果的に勝ち馬の仕掛けのタイミングよりも100m以上手前で動き出してしまっているという形。個別ラップを見てみないと結論は出せませんが、仕掛けた後も結構進路は空いていましたので、焦る必要はなかったのではないかなと思います。さらに言えば、スタートですね。今日はBコースで内伸びというほどではなかったので、そんなに焦ってポジションを取りに行く必要はなかったと思うのですが、流れでポジションを取りに行くような形で早めに馬群の中に入ってしまいました。もうちょっと外に張っていってもよかったのではないかなと思います。選択肢の少ないポジションに自分からはまってしまっていったようなイメージはありますね。

去年から回顧で何度か指摘というか話に出ているのですが、どうしてもレースの流れを作れない、他力本願な形になってしまう。ゴールから逆算しての組み立てが弱いというところの弱点が出てしまったように思います。来週の日本ダービーも断然人気に乗るという形になりますので、今日の反省を生かして待てるのかどうなのか。Cコースに変わりますので、オークスよりは内前有利になると思うのですが、今日のレースを見ていると差し馬にワンチャンがあるのではないかなというのは思ってしまうところかなと思います。

3着のライトバック。スタートから1,2コーナー、折り合いに難があるのでしっかり後ろで脚を溜めるというところに専念して折り合いをつけられたというところも良かったのですが、それだけで終わらずにきっちりチェルヴィニアの真後ろを取ったというのが、今日に関しては最高だったかなと思います。そこから先はもう道中ルメール列車についていけばいいような形を作れました。直線に入って、こちらもすぐに前が空いたわけではありませんでしたが、ルメール騎手と同じか、それ以上のタイミングまで待って、ホーエリートサフィラの間が空いたタイミングで一気に動いて、末脚をきっちりと出し切ったというところで、馬の力を考えると100点の競馬だったのかなと思います。

4着のクイーンズウォークですが、この馬はポジションが取れないのではないかと思ったのですが、まだ緩い馬にも関わらず、しっかりとポジションを取りに来た川田将雅騎手というのは本当にすごいなと思いました。ただ、さすがに今日の相手では完成度に差があったかなと思います。5着のランスオブクイーンは先ほども話した通り、離れた位置から実質2番手みたいな形の競馬でも粘り込みでしたので、いいレースだったと思います。個人的にはホーエリートにこういう競馬をしてほしかったのですが、ホーエリートは少し出が悪かったので、3、4コーナーで自分から動いていくという形の競馬になりました。原優介騎手としてはやれることはやったのだと思うのですが、できれば前々の競馬が見たかったなという印象です。

今回の勝ち馬はハーヴィンジャーと2着がエピファネイアという形になって、キズナが勝ち切れなかったので、来週のオークスがどうなるのかなというところ。ドゥラメンテ産駒はなかなか上位までは来れなかったということを考えると、まだしばらく種牡馬戦国時代が続くというのを改めて感じさせられました。この後POGもありますし、一口馬主の出資選定もありますので、きちんと網を広げてみていくのが大事な時代だなと改めて思いました。ただチェルヴィニアは出資募集のタイミングでも人気だったんですよね(苦笑)。なかなか走る馬を選ぶのも出資するのも難しいものです。

第31回平安S

こ:それでは平安ステークスの方の回顧を入らせていただきます。最近のダートレースの回顧で触れておりますが、川崎記念が移設されたこともあり、結構ダートの重賞というのがこの時期に集中してきているなというような印象があります。平安ステークスに関しては、マーチステークス組やアンタレスステークス組が出走してくるというケースが多いような形になりまして、一時期は帝王賞に繋がる割と格上なレースになりつつある印象がありましたが、最近は中央場所の重賞の延長線という意味合いになりつつあるのかなという印象でした。

今回のこのレースですが、多分レースを予想された方も皆さん同じことを悩まれたかと思いますが、ペースがどうなるのかというのが多分一番大きなポイントだったかなというふうに思います。内枠の方に行きたいミトノオーがいまして、外にはメイショウフンジン、こちらもどうしても行きたい馬がいるというようなところ。この2頭、昨年末の名古屋グランプリで直接対決しておりまして、その時には地方の方のマテリアルガールという馬も行きたがったというところもあって、見事な共倒れというような形になっていました。今回のこのレースも果たしてこの2頭が内外に分かれていく中で、ペースが速くなるのか遅くなるのかというところが一番のポイントだったかなと思います。余談ですが、私は早くなる方に張って馬券を買って、見事に外しました(苦笑)。

この2頭で言いますと、やはりダッシュが速いのは確実にミトノオーの方なんですよね。今回もミトノオーの方が内の枠の利を生かして先手を取っていきまして、スタートしてしばらくはメイショウフンジンの酒井学騎手もハナを取りに行こうというような動きを見せていました。ただ、そこでやはりミトノオーの方が速いというところと、コーナーで内の方が有利だというところもありまして、この辺りから積極的に競りかけていくのをやめまして、メイショウフンジンの酒井学騎手が2番手で妥協するというような形になりました。

ですので、ペース自体は1コーナーまでは早かったんですが、そこから後が急速に緩むというような形で、回顧でも何度か触れております時速の方のメーターですね、あれを見ると非常に分かりやすい形でした。結果としてミトノオーが本来のこの馬のマーチステークスなどで見せていたような、早めに逃げるような形でではなくて、初めに加速を生かして先頭に立ちつつ、その後はしっかりとペースを緩めるというような形でレースを支配した状態だったかなと思います。もうこの時点でレースの質というのは決まってしまった印象でして、ラップの方を見てみましても、500mを過ぎてからはもう12秒9、12秒8などの非常に遅いペースになりまして、最後の3ハロンが12.2、12.2、12.6といったような形で、完全に上がりの競馬になってしまったというレースでした。

その形でうまくレースを支配しましたミトノオーが直線でもさらに後続を引き離すという形で完勝。その2番手で妥協したメイショウフンジンですね、この馬についてもある程度遅いペースも我慢ができたというところで収穫があったレースかなと思っておりまして、この馬も3着に粘るというような形になりました。最後2着には、直線は外に出したんですが、同時はずっと内を回って、やはり距離ロスが少ないところを回ってきたハピが、外からいい脚で突っ込んでくるというような形でして、ちょっと3列目よりも外を回した馬については全く出番がなかったかなというような形のレースでしたね。

完全に逃げ馬にうまくしてやられた結果でして、本当に松山弘平騎手がうまくペースをコントロールして、このレースを支配していたなというような印象でした。勝ったミトノオーメイショウフンジンについては非常に収穫があるレースでしたが、それ以外の馬については展開的に出番がなかった形になりますので、今回少し着順が大きめになってしまった馬をそのまま評価する必要はないのかもしれません。改めて枠の並びや展開等を見て見直していいのかなという印象でした。ミトノオーメイショウフンジンは路線が被ることが多い馬ではありますが、共存するという生き方ができたというところが、このレースで一番の見どころだったと思います。以上です。ありがとうございました。

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