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上位騎手不在の重賞で見えた?魅せた?1コーナーから生まれる技術の差を振り返る(第61回アルゼンチン共和国杯・第13回みやこS・第59回京王杯2歳S・第28回ファンタジーS回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のレース回顧スペース2023.11.05からの文字起こしです


第61回アルゼンチン共和国杯

第61回アルゼンチン共和国杯 出馬表

蒼山サグ(以下、蒼):アルゼンチン共和国杯の回顧、ゆたさんからお願いします。

くらみゆた(以下、ゆ):お願いします。今週はとにかく騎手というのがポイントになった週かなと思います。ブリーダーズカップで海外遠征している騎手もいますし、武豊騎手は先週あった怪我でお休み。当然短期免許で来ている騎手も少ないというところで、手薄になっていたなというところ。東ではモレイラ横山武史。西では坂井瑠星が固め打ちというところで、モレイラはさておき、やっぱり他にもうまい騎手がいるときは目立たないものの、腕が達者な騎手というのがきっちり勝ってきたなというようなレースでした。アルゼンチン共和国杯もやっぱりモレイラがさすがというところだと思います。

レースの方を振り返りますと、アフリカンゴールドが予想通り引っ張る展開だったんですけれども、追いかける騎手も特にいなかったので、馬なりでハナに立っています。トラッキングのスピード表示を見ると、65キロぐらいで、つまり1ハロン11秒台のペースで単騎逃げができるという展開だったので、かなり楽にハナに立ったイメージですね。2500mなのでコーナーの距離が短いというところもあったので、1,2コーナーではほんとに隊列が決まるという形になりました。向こう正面に入ると、最初の700から900mは12秒6、12秒4という形でラップを落としていたんですけれども、1000mを過ぎたところからはじわじわと、ラップを少し上げて12秒0ぐらいが続くという展開。アフリカンゴールドとしては上がりの競馬にしたくなかったという意図があったと思いますが、刻んでいるペースが11秒9、11秒8、12秒0、11秒9という形で、ほぼスピード表示が60秒から動かないという、淡々とした競馬。後続が馬群を詰めるタイミングが難しいままでコーナーに突入しています。コーナーでもほぼほぼ速度変わらずというところで、後半は厳しい流れながらもこのあたりで各馬が動き始める形で直線に入りました。

直線入り口では横に広がって各馬の間隔が詰まった状態だったんですけれども、スムーズに大外から最初に動いたのが、マイネルウィルトス。良い末脚で残り400で先頭に立つんですけれども、坂を上がると内からスルスルとゼッフィーロモレイラが抜け出す形。そうなるとどの馬もあんまり脚が残っていないという形で押し切っての勝利。モレイラ無双でアルゼンチン共和国杯も幕を閉じましたという結果になりました。

勝ったゼッフィーロ、これ当たり前と言えば当たり前なんですけど、モレイラはやっぱり巧かったですね。直線の狭いところを抜け出すところが注目集まりがちだと思うんですけれども、スタートから1,2コーナーに入るところが上手だったと思います。スタート直後は1コーナーまでは結構周りの騎手もマークしているような感じで狭い場面というか、圧迫されているような印象があったんですけれども、2コーナーでチャックネイトの大野騎手があっさり内を放棄して外に行っちゃうんですね。そのタイミングで内ラチ沿いを取って、あとはじたばたせずに脚を溜める競馬。4コーナーでは後ろから2列目という形で、単純に見るとポジションを悪くしているような感じなんですけれども、直線狭いところを割ることに対しては自信があるなという形で、まずグランオフィシエが外に動いたところで1つ進路を確保。アリストテレスがフラフラしたところで再度馬を突っ込ませて進路確保すると、あとはまっすぐ走らせるだけというような競馬でした。本当に今日の東京でモレイラに対抗できたのは横山武史くらいだったと思いますが、今回は外から上がってきちゃったので、モレイラを潰すような形はできなかったなというところでした。

全体を見ると本当にモレイラはうまく乗ったなというところなんですけれども、もったいなかったのはさっき話しましたが、チャックネイトですかね。血統的にも能力的にも十分通用するこのレースだったと思うんですけれども、せっかくの内枠を活かせませんでした。やっぱり今年のダービーもそうだったんですけれども、前半がスローに流れると1,2コーナーのポジショニングが勝敗を分ける。ましてや2500だと直線からコーナーまでの距離が短いので、本当にそこの差というのが出るなというのを改めて思わされたレースだったと思います。以上になります。

蒼:はい、ありがとうございました。こひさんの方はどのような感想でしたでしょうか。

こ:そうですね。逃げたアフリカンゴールドがラップを淡々と刻みにいったおかげで、結構締まった良いレースになったなというふうに思います。とはいえ、結構馬群が詰まってて、色々直線に入るとごちゃごちゃしていた印象ではあったかなと思ってまして、私が見てた感じでいうと非常に手応えが良かったんですが行き場がなかったアーティットですね、11着。2走続けて展開やペースに恵まれてない状況なので、どこかで穴を開けてくれないかなと思っております。

第13回みやこS

第13回みやこS 出馬表

蒼:京都第11レース、みやこSの回顧の方に移っていきたいと思います。こちらはまずこひさんの方からよろしくお願いします。

こ:はい、みやこSというレース、非常に難しいタイミングにあるレースでして、今年ですとブリーダーズカップ遠征組もいましたし、当然JBCが裏であるというような形で、例年一線級からメンバー的には落ちるんですが、今年はかなり新興勢力がずらりと顔を揃えた印象で、馬柱を見てると連勝してる馬が非常に多いというようなことで、ここでしっかり賞金を積んで今後挑戦権を手にするのはどの馬かというレースだったと思います。終わってみれば最終的に無傷の5連勝で勝ち切ったセラフィックコールの強さばかりが印象に残るレースではあったかなと思いますが、その中でも他の実績馬もある程度しっかり走れた印象ではありますので、額面通り受け取っていい非常に内容もあるレースだったんじゃないかなというふうに思っています。

レースの方ですが、スタートでセラフィックコールがゲートを出ることはできたんですが、その後につまずくような形になった印象で、そこである程度のロスが発生して後方からという競馬になりました。今回ペースを握ったのがペプチドナイルですね。エルムステークスを人気で攻めない騎乗をして、この場でも話題になりました富田騎手ですが、今回同じ轍は踏むまいときっちり先手を取りに行きまして、ただ先手を取るだけではなく600m過ぎから早めのラップを刻んでいき、さらに残り600mから後続を離しに12秒1を刻むというような形で、しっかりペースを自分で握っていってアグレッシブに勝ちにいく競馬をした印象です。ですので、このラップについてこれなかった馬が早めに脱落をしていった形ですね。今回先行した中で言いますと、アスクドゥラメンテですとかタイセイドレフォンあたりは厳しかったのかなという印象です。セラフィックコールもその時点では手応えが悪くて、こちらも脱落するほうになったのかなと正直レースを見ている中では思ったんですが、直線一旦はメイクアリープが完全に抜け出したところを直線本格的にエンジンがかかったセラフィックコールが猛追して、上がり36秒1でブチ抜くというような形で、最後はゴール前にデムーロ騎手が馬をたたえるような余裕を見せました。

勝ったセラフィックコールですね、今回道中の走りを見ていてもまだ体を持て余しているような走りで、正直レースを見ていてもまだ若さが伺えるように見えるんですが、それでこういった競馬で勝ち切るというのもかなり強烈な印象です。そのままチャンピオンズカップに行ってどうかというと、中京のコース形態とこの馬のスタイルがあまり合わないような気はするんですが、この後もすぐG1戦線でも戦えそうなインパクトはありましたがそれ以上に、この先さらに良くなっていきそうだなというふうに思います。特に父がヘニーヒューズで、母系がハルーワソング大魔神・佐々木主浩の牝系であるんですが、佐々木主浩ラインではない他のオーナーのところからやっと活躍馬が出たなという印象。この母系はそもそも3歳以降の成長力が一番の売りの母系だと思いますので、そういう意味でも非常に今後が楽しみな結果であつたかなと思います。

負けた組からは、まずは2着のメイクアリープですね。前で押し切りに行く競馬になったというところでありましたが、順当に力は示した形になったかなというふうに思います。この馬ももともと3連勝でオープンまで来たような素質馬ですし、正攻法の競馬で勝ち味が若干遅いところはあるんですけれど、関西のオープンクラスでは常に上位と思っていい勢力かなというふうに思います。3着のウィリアムバローズ。この馬も得意の中山ではない舞台でこういう競馬をして結果が出せたというのは、大きな収穫があったのではないかというふうに思います。この馬今回地元の方でしっかり結果が残せたのは良かったと思います。あとは逃げたペプチドナイル富田騎手ですね。よく頑張ったと思いますし、エルムステークスの悔しいところをちゃんと晴らそうという気持ちが見えて、ここ2ヶ月、だいぶ僕らの中で富田株が上がってきてるかなというふうに思います。はい、以上がみやこステークスの回顧になります。

蒼:ありがとうございました。ゆたさんはどのような感想をお持ちでしょうか。

ゆ:そうですね。セラフィックコールは本当にまだバタバタした走りで、馬券的にはこういうタイプは切って美味しい馬だと思って買わなかったんですけれども、能力が違ったなという競馬でお手上げでした。詰めて使って壊れちゃうともったいないところがあると思うので、大事に使ってほしいなというところ。こういう荒っぽい競馬にデムーロは向いてるんでしょうけど、あんまり同じことをやられると馬に負担がかかるので、なかなか複雑な判断が必要だなと思いましたね。あとは直線先頭に立ったところで、デムーロのノリノリ具合が伝わってきたので、本当にG1じゃないですけど、ブーンされるかと思いました(笑)。

第59回京王杯2歳S

第59回京王杯2歳S 出馬表

蒼:京王杯2歳S、こちらこひさんの担当でということで、まずはこひさんからよろしくお願いします。

こ:では京王杯2歳ステークスに入らせていただきます。近年、結構荒れがちで、あんまり先につながらない印象もある。正直そういったレースではあるかなと思いますが、去年は勝ち馬が人気は全然なかったんですが、振り返ってみるとオーストラリアで大仕事をやってのけたオオバンブルマイ。今年も実は結構オープン馬が揃って上位人気になったというところで、このレースとしては非常に一定のメンバーが揃ったと言えるような年だったかなと思います。

レースの方ですが、ゲートを出てからオーキッドロマンスが逃げの形での隊列になりかかったところから、外からジャスパーノワールが飛ばしていくような形の流れになりまして、ペースが速めに流れていきました。実質馬群の方については2番手にいたオーキッドロマンスが事実上の逃げのような形に、ただそんなにペースを落とすわけでもなく、ある程度流れを作ったというところもありまして、結果的にレコードが出るような競馬になったかなと思います。最後、馬場の真ん中から突き抜けたコラソンビートはこのスペースでも何度も触れています、ボンドガールの新馬戦組の3着馬だというところでして、未勝利、ダリア賞、そして今回G2という形で3連勝で、プラスレコードというような形になりました。父が新種牡馬のスワーヴリチャードになりますが、スワーヴリチャードにとってもスピード勝負でやれるというところの裏付けができた意味でも、とても価値のある勝利だったんではないかなと思います。やっぱりノーザンですとか社台系じゃないところの牧場からこういう馬が出てくるというのは、今後の種牡馬生活に考えると価値のあるレースだと思いますね。特に時計もしっかり出ていました。今年のこのレースについては、このコラソンビートが牝馬というところもありますので、ファンタジーステークスとの比較というのも今後問われるかなと思いますが、内容的には多分ファンタジーステークスより上と言っていいレースだったのかなというふうには思います。また本番は先ほど言いましたボンドガール組が揃って出てくるというところもありますが、自分のポジションを取って能力を出し切るというところの安定感が光る競馬をしていますので、流れ次第では馬券になって全然おかしくないかなと思っています。

2着にはロジリオンが最後外から突っ込んできました。名前の通りの父リオンディーズ、母がフェアリーステークス勝ち馬のビービーバーレルという血統です。この馬は直線、前は結構壁になりまして、追い出しが他の馬と比べるとかなり遅れていまして、それが結果的にこのハイペースでうまくはまった印象というのはちょっとあるかなと思います。ですので、先行してレコードの時計を作りながら最後まで粘った3着のオーキッドロマンスの方が、今後に向けては面白いかなというふうに見ております。この馬もマイルの未勝利戦で足りずで1200に短縮してから未勝利、カンナステークスと連勝した状態で、ここで1400まで対応できるというところが示せた点でも非常に収穫は大きいかなというふうに思います。

あとはミルテンベルク、人気していた馬ですが、このレコードが出るペースでモレイラを乗せながらかかってしまうというのは、ちょっと僕が陣営だったとしてもどうしたらいいのかなというふうに思い悩んでしまう、迷路に入ってしまいそうなレースだったなと思います。それと人気でしたアスクワンタイムですね。兄弟制覇を狙ってみましたが、こちらは出負けして挟まれたというところでスタートのところで終わったかなというレースではありましたが、とはいえ負けすぎではあったかなというようなところで、このレースでは1着3着馬をちょっと高く評価したいなと思います。

蒼:全然他意はないんですけど、ミルテンベルクの調教師も武英智になるんですね。また新たなお悩みの馬を抱えてしまった感じがあります(苦笑)。では、ゆたさんの方からも感想などございましたらよろしくお願いします。

ゆ:まあ調教師としてはこういうちょっと難しい馬や牝馬をどうこなすかというところが見られている気がするので、本当にクセ馬というところに逃げずにきちんと矯正してほしいというふうには思いました(苦笑)。

第28回ファンタジーS

第28回ファンタジーS 出馬表

蒼:京都で行われましたファンタジーステークスの回顧に移りたいと思います。こちらはゆたさんの方からまずはよろしくお願いします。

ゆ:はい、お願いします。こちらもダノンファンタジーレシステンシアなど、阪神ジュベナイルフィリーズの勝ち馬が出ていますが、最近は春のクラシックを狙う馬はアルテミスステークスとかサウジアラビアロイヤルカップに向かうというところで、あまりマイルで末脚勝負ができる馬が出走してこないというようなレースかと思います。今回も出走表を見ると1200で下ろした馬が多い。その結果レースとしてもスプリントの流れからどこまで馬がバテないかというレースになった印象です。

レースの方はピューロマジックが逃げて、人気のちょっとかわいい名前のシュークリームが追いかけてというスタートという形になりました。スタートから最初の2ハロンが11秒8,10秒8、トラッキングの表示を見ていると瞬間的には72キロまで上がるような感じで、1ハロン換算10秒1。本当にダッシュを効かせる競馬、いかにもスプリントの逃げ馬が出ているような展開になりました。一方で2歳戦らしくゲート直後にお行儀が悪い馬も目立って、特に4番のヒヒーンですね。スタート直後に外に寄れてクイックバイオが挟まれる形になって自分の競馬ができませんでした。そのまま前は坂の下りの後半から再加速して800-600mの区間が11秒1と、前に負荷がかかる流れで直線に向かうという形になりました。そこに突き上がるに我慢したのが、内ラチ沿いで脚を溜めていたカルチャーデイ。スムーズに外に出して前をかわすと、内から刺してきたドナペティ、シカゴスティングを抑えての勝利。ケントク買いじゃないんですけども、文化の日の翌日に15番人気でカルチャーデイが勝利という結果になっています。

勝ったカルチャーデイ。札幌の芝1200メートルからの延長でのこのレース。新馬線でも味な競馬を見せていたんですけれども、このレースも上手に走っていたと思います。420キロの軽量スプリンターというところで、大物感というのはあまりないんですけれども、斤量の恩恵は受ける場面がありそうなので、そこで狙いたいなという馬だと思います。

ドナベティ。2着ですが、カルチャーデイの後ろから一枠を存分に活かして脚を溜めて走りました。鞍上が200メートルの延長をうまく走らせる騎乗だったと思うんですけど、最後は止まっているので、やっぱり1400はギリギリだったかなという印象はあります。あと3着のシカゴスティング。こちらもほぼ2着まで同じ位置取りだったんですけれども、追い出してからはちょっと離されてしまって、この辺はドナベティリアルスティール、この馬がロゴタイプというところの差かなと思います。こちらのも斬れ味がない分、あまり長い距離は厳しそうですし、距離も1400がギリギリという感じかなと思いました。あとは負けたところでは、最初に話したクイックバイオですね。ゲートの直後に結構不利を受けて競馬にならなかったところがありますので、次走人気が落ちるようだったら積極的に狙ってもいいんじゃないかなと思っております。はい、以上になります。

蒼:はい、ありがとうございました。こひさんはどのように見られましたでしょうか。

こ:はい、そうですね。ゆたさんからも触れられてました。ヒヒーンですね。直線も無理矢理差してこようとしてまして、結構他の馬に迷惑をかけていたので、ちょっとお行儀の面で気をつけたほうがいい馬なのかなという印象でした。またこのレースは勝った酒井学騎手がうまく外に出したなという印象がありまして、この日私たまたま出資馬が3レースと12レースに出ていたので、一日京都にいたんですが、Bコース替わりもあって序盤はみんな内を回っていたんですが、途中からちょっと外差しが決まり始めて、今回このカルチャーデイ酒井学騎手が前に行きながら外に出すコース取りをしていって勝ち切ったというのは、馬場状態が見えていてお見事だなと思いました。これを見ていたのか、2着でしたドナベティ坂井瑠星騎手ですね。その坂井瑠星騎手が最終レースでは逃げ馬を馬場の真ん中に持っていって勝たしてるのを見て、ああ、乗れてる騎手はこうやって他の騎手のうまいことやってるのをちゃんとパクっていくんだなとちょっと感心させられました(笑)。

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