2023年第68回京成杯オータムH・第37回セントウルS・第8回紫苑S回顧
第8回紫苑S
蒼山サグ(以下、蒼):土曜の中山11レースで行われました、紫苑ステークスについてお話いただきたいと思います。こちらはゆたさんからお願いいたします。
くらみゆた(以下、ゆ):はい、よろしくお願いします。今週は雨、台風の影響がありましたので、馬場状態がどうなるのかなというところがありまして、中山競馬場は前日から不良という発表でした、含水率とかクッション値など含めても大雨の影響はでているな、というところからの土曜の競馬スタートでした。ただし、土曜が霧雨程度の雨というところ、2014年に中山競馬場も馬場改造されているので、これくらいの水分が溜まっても、雨が降り続きさえしなければどんどん水が抜けていくという形になるますので、土曜の時点で稍重はもう良馬場というところで、流石の日本の馬場だなと改めて思わせたところだったと思います。それを踏まえて、今開催の中山競馬場なんですけれども、いつも馬場についてよく語られる小島友実さんからも話が出てましたけれども、エアレーション作業が去年より早かったということで、例年より馬場が多少締まっているというか、時計が出やすい馬場状態だったのかなと。紫苑ステークスの結果についても、その辺の馬場状態の影響が出たかなと思っています。
レースの方ですけれども、フィールザオーラが引っ張る形で、人気はソレイユヴィータだったりとか、グランベルナデットあたりも好位、ヒップホップソウルも内から4番手という形で、かなり前に人気馬がいるというような展開でした。向こう正面で縦長の馬群で、前半の1000mが58秒1というところだったので、馬場が回復していることを考えると、すごく速い流れというわけではなかったのかなとは思いますが、人気馬が前にいたというところもあったので、あまり息が入らないような流れ。1000mから1600mも11秒8、11秒9、11秒9とダラっと脚を使わせるような流れだったのかなと思っています。牝馬限定の重賞で2000mとなると牡馬と違って、それなりに不慣れと言いますが、走り慣れていないような距離ではありましたので、そういう流れでこの距離となると、見た目以上にスタミナが問われる形になったのかなと思います。その中でヒップホップソウルが本当に良いレースで抜け出してきたのですが、残り1ハロンのところで馬群の中からモリアーナが猛追してきて、きっちりと差し切るという展開でした。春は全然うまくいかず、難しい競馬が続いたのですが、横山典弘騎手の最年長重賞勝利という形になりました。本当に見ていてスカッとする、というか面白いレースだったと思います。
蒼:差し切った相手が相手(横山武史)ですからね(笑)
ゆ:はい、本当に(笑)。勝ったモリアーナは春から素質は見せていたのですが、正直ちょっとしょぼい騎乗が続いていたという形もあり、末脚が弾けない競馬が続いていました。何回か馬券を買っていても、何だかないうレースが続いていたところ、前走から横山典弘騎手に変わって前走は勝てなかったのですが、今回は快勝という形になりました。この馬はエピファネイア産駒らしく使える脚が短いというところもあるので、乗り難しいところかなというところはありまして、武藤雅騎手では乗りこなせなかったのかなというのが正直な感想です。今日もペースは結構早く、ダラダラと速いペースでいたので、そこにくっついていったら厳しかったと思うのですが、そこは横山典弘騎手らしくポツンと言わないですが、自分の競馬に徹しました。そのため、各場がスタミナが切れたところで、最後に脚を残したというところで、ああいう騎乗ができる横山家らしい勝利だったのかなと思います。ただ使える脚も短いですし、コスモス賞を勝っているぐらいで、今日も上がり34秒3というところで33秒台の脚がバンバン繰り出せるというタイプではないところがありますので、なかなか走りどころは難しいのかなと思います。今回パトロールを見ても、加速するタイミングでも前がぽっかり空いていましたし、壁になりそうなところは横山典弘騎手がきれいに捌いたというところもありましたので、かなりハマりにハマった競馬だったかなという風に思います。個人的には、直線の短いコースが向いているので、秋華賞で買いたいと思って今回は下げてしまったのですが、改めて今日のレースを見ていると、京都の平坦なコースで脚を溜めて差し切るというイメージがちょっと湧かなくなってきたので、今回これで人気になるようだったら、ちょっと下げてもいいのかなというのは個人的な感想です。
2着のヒップホップソウルはまさに強い競馬で、仕掛けどころもバッチリだったんですね。本当に一頭というか親父がいたのは運の尽きたというところでしょうか。横山武史騎手も「100点の競馬だったのに、120点の競馬をした勝ち馬(親父)がいた」というようなコメントが残されていたのが印象的で、公共の場でイチャイチャしているという感じがありました(笑)。馬自身は本当に夏はきっちり過ごせたのかなと思いますし、前からの競馬もできたのは好材料だと思います。本番には怪物リバティアイランドがいますので、差しを意識した競馬になると思いますので、位置的に優位立てるのは楽しみですね。ですので本番でモリアーナかヒップホップソウルだったら、ヒップホップソウルを取りたいと思います。3着のシランケド、名前がなかなかインパクトがありますね。これがデクラレーションオブウォー産駒というところで、今日横山家ではなくて、乗っていたのが国分恭介騎手だったんですね。やはり横山家が勝つような流れというのは、デクラレーションオブウォー産駒が走ると覚えておくと良いのかなと思います。グランベルナデットやソレイユヴィータは、まだこのメンバーで戦うには敷居が高かったと思います。以上です、ありがとうございました。
蒼:こひさんの方から何か補足などございましたでしょうか。
こひ(以下、こ):モリアーナの武藤調教師なんですが、この馬もともとデビューして、オープン路線に乗ってきたあたりに、娘さんの武藤彩未が名付け親になって、息子の武藤雅騎手が乗るみたいな感じで、話題になっていたのかと思います。横山典弘騎手で勝った後に、武藤彩未がどんな反応してるのかなと思って検索をしてみましたら、「ここまで調教をつけてくれた雅にも本当に感謝です。最高のパートナー」って書いてまして、褒め方が上手いなとちょっと感心してしまいました。武藤調教師も、重賞は10年ぶりぐらいなんですね。重賞を見ていったらザラストロの新潟2歳S以来というところで、懐かしいというような感じではありますが、そういう意味でもすごく武藤家にとっては良い1日だったのかなと思います。あとこのレースで今後に向けてというところで見ると結構ラップがずっと淡々と流れていったところもありまして、いわゆる外を回して前に行った馬が一番きついレースだったんじゃないのかなと思っています。先ほどゆたさんからもコメントありましたグランベルナデットとかはもうちょっとすんなりと自分の流れに乗れるところでは見直せるんじゃないのかなと、ちょっとそんな印象ではありました。この馬が一番かわいそうなレースではあったのかなとは思います。
第37回セントウルS
こ:セントウルステークスは、スプリンターズステークスの3週前というところで、毎年メンバーが揃っているわけではありませんが、今回はビッグシーザー、ロンドンプラン、ドルチェモアという3歳馬たち、そして、ピクシーナイトが出てきたり、アグリ、ジャングロといったところの新興勢力も揃って、なかなか世代間の力関係を見る意味で見応えがあるレースだったと思います。このレースも、やはり開幕週らしく、一番のポイントは馬場だったのではないかと思います。それを象徴的に示していたのが、この日の8レースですね。8レースには芝の一勝クラスがあったのですが、これが1着から5着までの並びが1番、2番、3番、5番、4番という形になっていまして、わかりやすく言えば、ちょっと内を回っていかないと勝負がならなかったり、前に行かないと苦しいという馬場状態でした。
その中で明確に、絶対にハナに行かなければならないという馬がいなかったりしまして、ハナ争いがどうなるのかなというのが大きなポイントだったレースだと思います。ゲートが開きますと、こちらの方からヴァトレニとレジェーロがハナ争いをしていたのですが、外からテイエムスパーダが来て主張すると、割とすんなりと落ち着いたような形で、意外にも隊列としてはスムーズに決まったのではないかと思います。結果的には、前半の3ハロンが33秒4で、後半が33秒7でした。特に飛ばすこともなく、平均的なペースでレースが進みました。このような展開と、今日の馬場条件を考えれば、それはテイエムスパーダが残れるレースだったのではないかと思います。
詳細を見返しますと、ヴァトレニとレジェーロに乗っていた騎手を見ると、藤岡兄弟と書いてあるんですね(笑)。こういう状況で行ききった勝ち馬に対して、藤岡兄弟はきちんと控えてしまった。これが富田暁騎手の重賞制覇に繋がったのではないかという印象を受けました。テイエムスパーダは、自身のペースで先行して、直線も抜け出す形。最終的には、追い込んできたスマートクラージュ、ボンボヤージュそして最後は大外から差し込んできたアグリも含めて伸びてきましたが、完封をしたようなレースになりました。
振り返ると今日は、富田暁騎手が3連勝で初重賞まで取る形となり、完全に富田デーでした。ちょうど1ヶ月前くらいに、この芯力の回顧の中でもエルムステークスでのペプチドナイルでの騎乗が消化不良だったという話をしていた記憶があります。今回は、ハナを取り切るという意思が感じられ、上手く相手方に引かせてレースを自分で握ったところでした。ちょうど騎手インタビューでも、北海道での経験も活かすことができたと本人が語っていましたが、思った以上に早く取り返すチャンスが来て、そのチャンスをしっかりと取り切ったという意味でも、本人にとっても、とても大きなレースだったのではないかと思います。特に師匠の木原調教師も、定年が近いところもありまして、そこでうまく師弟コンビで重賞を取れたというところも本人にとって大きなレースだと思います。あとは、テイエムスパーダという馬が今村先生が騎手で、もともとCBC賞で初重賞を勝っており、なかなか若手2人に初重賞を取らせるというのは馬の方もすごいなと思います。やっぱり行き切って、気分よく走れば残れるという馬の特性と、その中で思い切りよく騎乗ができた騎手と、そういったところでの組み合わせがいいのかもしれないなと思います。3匹目のドジョウはいるのかなというところは、今後気になるなというところです。
また今回レース見直していて感心したのは、最後大外からアグリが飛んできていたんですが、これがまたモリアーナ並みになかなか横山典弘騎手が好騎乗でして、この4コーナーまでは実は丁寧に内を回していて、距離ロスはすごくない形で回ってきていまして。直線はほぼほぼ斜めに走るような形で進路選択をしていく中で大外に行って、最終的には32秒4というようなすごい鬼脚を使ってきたというところで、なんだかんだで馬場のところをしっかり意識して、丁寧に乗った結果が最後の脚だったのかなというふうに思います。この横山和生騎手が最近、怪我か何かで2週ぐらい乗れなくなったことで、お父さんの方に回ってきたのかなと思いますが、やっぱりこの辺りも上手く情報の連携ができているからこそ、横山典弘騎手らしい決め打ちがうまくハマったというところもありまして。本番も同じコンビになる可能性が高そうかなと思いますので、十二分に通用する可能性あるかなと思います。
あとちょっと拾っておきたいのは、スタート直後もそうですし、直線もそうですし、ジャングロが割といろんなところで行き場を失っていた印象ではありましたので。本番スプリンターズステークスで内の方でうまく立ち回れればの条件付きではあるんですが、ちょっと見直したいなというところを思いました。はい、一旦全体の方は以上になります。
蒼:ちょっと僕から補足というわけではないですが、カラヴァッジオ産駒(アグリ)があんなに凄い脚を使われたら、日本での産駒も楽しみだなということを思ったりもしました。
こ:上がりは32.4秒ですからね、なかなかビックリしますよね。
蒼:ということで、今後一口などでカラヴァッジオ産駒の募集があったら、ちょっと注目していきたいと思っております。では、ゆたさんの方から補足などございますでしょうか。
ゆ:はい、そうですね。今の話もありましたけど、やっぱり短い距離になってくると、今後ストームキャットの血というのはどんどん重要性を増してくるのかなと改めて思いました。あとは、私個人的にやっぱりグラスワンダー系というところでピクシーナイトがなかなか復活できないというところで、今日もスタートがそもそも悪かったというところとレースもずっと外回しながら走っていて、上がりも出しきれない。一応上がり3位ではあるんですけれども、伸びきれないという傾向が続いていて、ちょっと騎手と手も合ってないのかなというイメージもあります。もうちょっとハマれば復活しそうな気もするので、長い目で見ていくしかないかなと思いました。
第68回京成杯オータムH
蒼:それでは、最後に中山11レースの京成杯オータムハンデの回顧をやっていきたいと思います。こちら、ゆたさんから先にお願いいたします。
ゆ:はい、よろしくお願いします。こちらも先ほどの話もありましたが、本当に馬場がどんどん乾いていって、最終的に勝ちタイムが1.31.6になりましたので、本当に開幕週らしい時計が求められる馬場だったのかなと思います。やっぱりこれくらいの速い馬場になってくると、秋の開幕週というところもありますので、全体的に追走自体にはスタミナを使うとは思うんですけれども、そんなに流れなければ当然前のほうがよりという形になりますので、その辺が今回、展開適には前が残るほうに出たのかなと思いました。
レースではグラニットが想定通りの逃げというところ。ソウルラッシュもスタート出て好位、あとはウイングレイテストが2番手につけましたので、この辺で完全に流れが決まったというところがあると思います。前半は34.6秒というところなので、馬場を考えればゆるいと言ってもいいぐらいの展開だったかなと思います。ウイングレイテストがちょっと離れて2番手でしたので、そこがもう本当にスローの単騎逃げみたいな形でしたので、もうちょっとこの時点で、後ろにいる馬にはだいぶ厳しいレース展開だったかなと思います。
ソウルラッシュが4コーナーで促しながら上がっていくと、あとは前の2頭との勝負というところで、ちょっとグラニットが能力的に足りないところはありましたけど、それでも6着に粘ってましたから、やっぱり前じゃなきゃダメかなというレースで、前の2頭をソウルラッシュがゴール前で捉えて1着という形で、ミスニューヨークが3着、2着がウイングレイテストというような結果でした。
勝ったソウルラッシュは、ここではやっぱり1枚上の走りというところで、トップハンデの力を見せたのかなと思います。今日のように、ある程度追走力が問われ、スタミナが問われるような馬場状態で、最後まで我慢強く伸びる走りというのは、父ルーラーシップらしさというのが出たのかなと思います。ただ本番では、もう少しキレ味が求められることになると思いますので、G1で勝てるかというと、少しうまくいかないかなと感じます。ただ、G2レベルのマイルでは、本当に大将的な存在になると思いますので、今後もハンデに関わらず注意が必要だと思います。
2着のウイングレイテストは、少しいつも足りない競馬で、使える脚も短いので、少し乗り難しいかなと思います。鞍上は工夫しているとは思うんですが、長い間乗っていて、結果が出ていないので、違う騎手でも見てみたいという気持ちが正直あるところです。なお誰が乗ってたんだろうと思って、改めて戦績を見たら、ファルコンステークスはミナリク騎手が乗って6着だったんですよね。ちょっとしんみりした気持ちになりました。3着のミスニューヨークについては、ソウルラッシュと同じように、少しスタミナ、追走力が問われるところで、速い時計が出せるタイプで、これは父キングマンボで、母父マンハッタンカフェというところで、勝ち馬と同じような配合ですので、セットで今後も出てきたら気にしたいところだと思います。一番人気だったインダストアの方は、調整過程には不安がありましたし、今日はあまり無理させない競馬だったのかなと思います。次走以降、楽しみにしたいところなんですが、なかなかちょっと適鞍に苦労がありそうなのかと思います。この辺は、(一口出資者の)サグ先生から最後にコメントをいただければと思います。
蒼:はい、では少しコメントを。恐らく、一般的には、マイルチャンピオンシップへのエントリーをするかと思いますが、賞金については微妙かもしれません。また、マイルチャンピオンシップで一線級に勝つというイメージもあまりないです。ですので、個人的な希望、あるいは試してみたいことと言ったら、右回りで距離を伸ばし、2000m、例えばチャレンジカップに挑戦してみるのもいいのではないかなと思っています。その他に、オーストラリアに行くという選択肢も考えていますが、現時点ではまだ実績が足りないかなと。それについては、来年以降に考えたいと思います。
ゆ:2000mの弥生賞も大負けしているわけではないですし、幅を広げたいという気持ちが強くなりますよね。
蒼:ありがとうございます。次に、こひさんからの補足や意見はございますか?
こ:はい、このレースを見直していて、良いなと思ったのが、4位に入ったメイショウシンタケの浜中騎手ですね。この馬は最終的にサマーマイルの王者になったわけですが、このレースで4,5位以上というのが条件だったのかなと思います。ゲートを出てからは後方を進んでいましたが、完全に腹をくくっての決め打ちで、最後も同じく、ミッキーブリランテと競り合って先着しました。馬券的には、レースには参加していなかったのですが、個人としては、与えられたミッションをきっちりと消化して、良い結果をもたらしたと思います。
蒼:米子ステークスを勝って、サマーマイルを手に入れる、この流れはかなり力技ですよね(笑)。
こ:もし米子ステークスをサマーマイルに指定していなければ、該当無しで終わっていたかもしれません。そういう意味では、良かったと思います。
蒼:しかも、米子ステークスは10番人気でしたからね。なかなかすごいことをやりましたね。
こ:本当に地味にいい仕事をしていたなと思います。この馬も含めてこのレースすごく内をうまく使ってた馬がみんな上位に来たなというところはありますので、外で後ろにいた馬は、その時点で終わってたのかなとというような印象でしたね。はい、以上です。
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