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リーディングを争う名手の冴え渡った騎乗を振り返る(第71回神戸新聞杯・第69回オールカマー回顧)

この記事は、2023年9月24日21時00分〜 競馬評論サークル芯力のレース速攻回顧スペース2023.09.24からの文字起こしです。


第71回神戸新聞杯

蒼山サグ(以下、蒼):まずは神戸新聞杯の方からいきましょうか。

くらみゆた(以下、ゆ):よろしくお願いします。神戸新聞杯ですが、阪神コースでBコースに変わって1週目というところで、馬場はまだ絶好。距離ロスが勝敗に直結するような馬場状態で行われたレースでした。トライアルとはいえども、どう勝たせるかを考慮した競馬をしないと、能力だけで勝てるような馬場状態ではなかったので、菊花賞を見据えてみたいな考え方では馬券に絡まないだろうなというのは事前に見えていたところかなと思います。そういう中で結果的に勝たせられる川田将雅の上手さというのが1つだったかなと思います。

レースは共同通信杯のような競馬をしたいとか、ダービーは不完全燃焼だったというような言葉が戦前からありましたので、武豊ファントムシーフがやるかなと思ったらやっぱり個人的には予想通り逃げたという形で始まりました。シーズンリッチが外から少しかかり気味を並ぶ形になったんですけれども、こういうところで武豊は絶対譲らないのでビシッと跳ねのけてハナを取り切り、2コーナー回るところではレースをコントロールするような形に持っていっております。前半800mから1000mが11秒9というところで本当隙を見せない流れ。1000mから1400mの区間、この辺で少し息を入れるような流れにはなっていたんですけれどもそこから12秒0、11秒6という後続が押し上げられないような流れをちゃんと作って、3コーナーに入れたという流れになりました。ここで3コーナーのところで後方からどう詰めるかというところで象徴的だったのがハーツコンチェルト松山弘平サトノグランツ川田将雅というところ。同じように押し上げを図らないといけないなという展開だったんですけれども、加速している流れだったので相当外回ると厳しいことのような展開でした。ここで松山騎手はやっぱり外からまくってしまったと。一方で川田騎手はインにこだわって動かなかったというか仕掛けてはいたんですけれども外は行かなかったという形で、ここで無理しなかったことは最後の貯金に繋がったのかなと思います。直線に入るとファントムシーフが先行馬を振り落とすような形で本当に武豊の逃げという感じだったんですけれども、そのぴったり後ろを走っていた池添謙一サヴォーナが先頭に変わるところで、サトノグランツが強襲したという形になりました。

勝ったサトノグランツなんですけれども本当にとにかく川田将雅騎手が巧かったというレースで、Bコース替わりで武豊が逃げる展開だったのでそう簡単に差せないだろうというのは、本当に誰でも分かるような流れだったかと思います。その中でそこを読み切っていたと思うんですけど、スタートからインを確保をすると道中はじっくり追走。やっぱりうまいのが武豊がペースを落としている区間ではじわっと前に差を詰めていて、急流となっている3コーナー過ぎでは我慢していると。あんまりジタバタとペースを上げることなく本当にうまかったなと思います。あと直線も結構ごちゃついたんですけれどもスムーズな加速。パトロールビデオを見ているとちょっとオッと思ったのが、前に行くサヴォーナが抜け出しにかかったとき右ムチ入れてたんですよね。なので外に行きそうな一瞬動きだったんですけれどもそれでも後ろから川田将雅騎手も同じように右からムチ入れていると。これ2,3秒後に何が起きるかというと、池添謙一騎手が左手にムチ持ち替えてファントムシーフに併せに行くんですよね。そこを外から右ムチで進路を確保するというところで、これは多分ファントムシーフの手応え、それから武豊が絶対外にヨレないなというのと池添謙一騎手が絶対併せに行くだろうなというのを読み切って、進路を狙いに行っているというところ。最後はハンドライドで脚伸ばすといういわば外国人騎手みたいなレースぶりだったと思います。馬の方も最後は脚をなくしている中で最後まで乗り切ったので父サトノダイヤモンドらしいスタミナを見せた形だと思いますし、3000mというくらいの自信を持っている馬が少ないだけに内容を評価できるかなと思います。このことを考えると菊花賞の左右翼と言ってもいいのかなというくらいの今回の内容だったかなと思います。

2着のサヴォーナ。こちらも本当に池添謙一騎手らしいというか武豊騎手のことを信頼した競馬でもうぴったり後ろを確保すると、そこだけを目標に差し切りに行ったというところに、サトノグランツだけがいたというレースだと思います。今回は全てハマった感じがしますけれども枠が内だったら本番でも注意しないといけないなと思います。あとは3着ファントムシーフ。こちらはダービーと違って力出し切ってますしサンデーサイレンスを持たない血統ですのでキレ味を求められると後手を踏むだけに、この形がベストだったかなと思います。ただちょっとレース後に武豊が「ちょっと馬場が固くて」というようなコメントを残していたんですけれども。阪神競馬場、今週の金曜時点のクッション値が9.1で標準ぐらいだったと思いますので、京都に開催に変わって今よりも馬場が柔らかくなるかというと正直ないかなと。ですので、なかなか本番が難しいなと。ある意味海外の方が狙いやすいんでしょうけどターファイトでクラブ馬ですので、そう簡単に持って行くというところで難しいなと思いました。

あとは5着のハーツコンチェルトですね。残り3ハロンから12秒0、11秒6、10秒7という流れを外から捲って、3着以内に入れると思ったらそれは無謀というかそれで勝てるのはダービー馬ですので。これは前からこのスペースでは言っているんですけど松山騎手はやっぱりいまいちその辺のペース間隔が良くないというかレース後のコメントで「うまく脚は溜まった」というんですけど9着まで33秒台の上がり出してますから、当たり前だろうという感じはしますね。あとはレース後のコメントでは武井調教師も敗因分かっているという感じはしなくてですね、ここで菊花賞への出走権を確定させられなかったのがどういう流れになるかなというところ。やっぱりレースに向けて、どう勝たせるかというか戦略性がいまいちなのかなというところが春のダービー出走が滑り込みになったりとかですね、ちょっと言っちゃ悪いんですけど、ハルオーブを勝たせられないのは、こういうところだろうというのは思っちゃいましたというところです。以上になります。

蒼:ありがとうございました。こひさんから補足などございますでしょうか。

こひ(以下、こ):振り返ってみて面白いなと思ったのは1着2着がちょうど春にありました阪神2400mゆきやなぎ賞、これと同じ並びになっていたと。条件的に同じようなレースの春の結果が、そのまま再現されて人気的にも非常に馬券的にも跳ねましたし、なかなか面白い傾向だなという風に見ておりました。あとサヴォーナは非常にいいところがあったなと思って見ておりまして、ある程度前目のポジションを取ることもできますし、内枠に引いて流れに乗れれば池添騎手の勝負強さというところもありますので個人的には本番で非常に買いたくなった馬だなという印象です。あとは私もちょっとファントムシーフのコメントで触れたいなと思っていたところでして。武豊の硬すぎるというのはクッション値なんだろうかそれとも時計なんだろうかどっちなのかなというふうに思っていたところではあるかなと思います。それが時計的なニュアンスもやっぱり含んでいるというような話であると次の本番でよりこの馬に向くというところは難しいかなというところで見ています。またハーツコンチェルトがいろいろともったいないレースで、本当にもったいない結果ではありました。現状の結果を見てますと賞金1500万持って菊花賞に出たい馬というのが多分5頭以上いるような状態で、多分そこに対して枠は3つ4つぐらいだと、半分以上落ちるような抽選になるのかなというのが今の見立てかなと思います。そういう意味で考えるとやはりここで権利を取らないといけないというような意欲、覚悟というのが、陣営からちょっと感じられなかったなというのがグリーンファーム愛馬会ファンとして残念だなと思います。

第69回オールカマー

蒼:続きまして中山11レースのオールカマーの方に移りたいと思います。ゆたさんの方からお願いします。

ゆ:はい、お願いします。こちらもCコースに変わったというところと、金曜土曜と天候悪かったんですけども、急速に乾いてくる形での良馬場という形になりましたので、内側が有利というようなレースだったと思います。その中でタイトルホルダーをどう評価するかというところだったんですけれども、まずレースとしては力を見せたかなというところと、まだまだ本調子ではないというところをこの後どう見るか。それからこちらもやっぱりリーディングを争っているルメール騎手が上手かったというレースだったと思います。

レースの方なんですけれども、タイトルホルダーはスタートからハナを主張して、1コーナー入る前に自分の形に持っていくという形になりました。向こう正面で12秒4、12秒5とペースを落としているんですけれども、ある程度みんな手の内も分かっているというのもあるとは思うんですが、後続勢があまり楽をさせない形で結構このタイミングで馬群も詰めていると。特にローシャムパークルメール騎手が積極的にポジションを上げていたというところが印象的でした。ここでセーフティリードを許さないという形になりましたので、中山の外回りを1000mから11秒5前後でラスト1ハロンまで流れていくというロングスパートのレースになったと思います。タイトルホルダーが直線に入って抜け出しにかかるんですけれども外からローシャンパークを襲いかかって、きっちり差し切った形での函館記念からの連勝という結果になりました。

勝ったのはローシャムパークなんですけれども、これ函館記念の回顧の時も同じような話をしていますが、ハービンジャーというところもあって、出入りの多い競馬というのは多分苦手だと思うんですけれども、ルメール騎手が馬にブレーキをかけないような形で丁寧に乗っていたというのは函館記念と同様に印象的だったと思います。先手先手でブレーキがかからないようにポジションをとっていますし、これ外枠だったんですけれども、1、2コーナーで内から2列目取って距離ロスなし。一方、道中ペースが落ちたところでは、そこに付き合わずに押し上げると3コーナーの手前でガイアフォースの外にちょっとコース取って、後ろも牽制して外から回しづらくしておいて、3コーナーや4コーナーはビッチリコーナーを回ってアウトイン、アウトみたいな形で直線抜け出してくるという形で、こういう末脚を無駄なく加速させるという意味でルメール騎手の技術が詰まったレースだったと思います。ただ本当にすごい綺麗に乗っての2連勝というところで、陣営も狙ったレースをしっかりとったという形がなるんですけれども、秋のG1となるとルメール乗れるわけではないですし、なかなか他の外国人騎手も同じレベルというわけにいかないと思います。ちょっとG1チャンスとなると香港あたりの方がもしかしたら狙い目になるのかなと。

蒼:ルメールのテンションというかトーンが非常に高くて、イクイノックスを忘れているのかというくらいテンションが高かったですよね。ルメール側の熱い営業で香港あたりに直行する可能性があるかも気がします(笑)

ゆ:もうちょっと裏で決まっているのかもしれないですね(笑)。どこか乗れるところがあるか。そう思わせるようなレースだったと思います。注目のタイトルホルダー、中山競馬場も人が多かったので、客を呼べるというのは良いことだなと思うんですけども。本来この馬はステイヤーであるんですが、小回り内回りのコースで機動力を活かして、可変ラップでセーフティリードを先に取って、最後は粘り込むというレースが得意。改めて戦績を見たんですけど、あえていうなら逃げてまくるみたいなレースが得意な馬でしたので、今回中山2200という外回りコースはそんなに向いてはいないのかなと思っています。セントライト記念の時にも不利があったという大負けしているコースでありますので、馬券的には外して負けてしまったという結果になりましたが……。その中でも2着という形なので休み明けとしては上々な走りだったと思いますし、衰えはないと言ってもいいのかなと思います。ただこのまま秋と考えると府中のG1というのは、ちょっと他に向いている強い馬が出てきますし、狙いは有馬記念という形になると思うんですけど。ここまで美浦の坂路が改修されている中で、コースで乗り込んできて結構今回、目一杯な走りをしたというところで反動が出ないかなというのは、メンタルフィジカルともに気にしたいところであるかなと思います。凱旋門賞の後も結構長引いてきたというところもありますので、どれくらいここからさらに上積みできるか。もちろん今回の出来は70点とそれくらいだと思うんですけども、なかなかここ最近100点まで持っていけるような形になっていないのでその辺は未知数だなという風には思っています。

あとは個人的には期待していたジェラルディーナが、本当ハーツコンチェルトみたいな感じでもたもたしたレースを見せてしまったというところで気に入らないなという感じではあるんですけれども(苦笑)。まあエリザベス女王杯は外国人ジョッキいっぱい来るので乗り変わるんじゃないかなと思っていますので、ちょっとでも人気落ちるようだったら楽しみにしたいなと。

蒼:着差で見るとちょっと衰えというかメンタル面の何かあるのかなって感じもしつつ、そんなに大負けもしてないですからね。

ゆ:そうですね。宝塚記念武豊で好走といって良いレースを見せていますので、ちょっとズブさが出ているという陣営へのコメントもあるので、動かせるジョッキー。まあそれこそマーカンドとか来るんだったら楽しみにしたいなと思いました。はい。以上になります。

蒼:ありがとうございました。ではオールカマーの方で、こひさんの方から補足などございますでしょうか。

こ:はい、そうですね。このレースで触れておきたいなと思ったのは自分自身も馬券的に複勝で勝負をしながら4着のマリアエレーナに注目したいと思います。ある程度前に行って流れに乗る競馬で、目標にされるような立場になってから勝ち切れずというような競馬が続いていた中で、今回ちょっと坂2回で一周するようなコースで使ってきて鞍上も松山騎手から三浦騎手に乗り換わりどういう競馬するかという風に見ておりました。いつもの2、3番手ポジションではなくて、ガイアフォースの外目から回ってきて直線も最後まで伸び続けているというような競馬を見せまして、かなり新味の方が見せられた競馬だったかなという風に思います。今回非常に人気がなくなったところで複勝狙ってはいたんですが、ひょっとしたら人気にしばらくならないかもしれないなと思いますので、また牝馬同士の競馬に戻ったり条件によってはやり合える力があると思いますので、天皇賞なのかエリザベス女王杯なのかわかりませんが、馬券になるチャンス自体はあるのではと見ております。

あとは今回勝ちましたローシャムパーク田中博康調教師ですね。この勢いがすごいなと。元々同期の中では重賞勝ちが遅いみたいなことを、今年の頭に根岸ステークスを勝った時にはおっしゃっていた記憶があるんですが、そのあとレモンポップ根岸ステークスフェブラリーステークス、今回ローシャムパーク函館記念オールカマーレーベンスティールセントライト記念。なかなか初重賞を取ったあとに重賞を5勝というのはちょっと記憶にないレベルだなと思いまして。この田中博康師レモンポップローシャムパークを見てますと、2歳3歳とかレースの数を使わないで慎重に慎重にやってきているのではあります。そういったところからレモンポップローシャムパークレーベンスティールと1世代に1頭ずつこういうレベルの馬を出せるような厩舎になってきているなというところは非常に注目するところかなという風に思います。去年35勝ぐらいにしていて今年も多分30ぐらいには届くんじゃないのかという勢いで来ていますし、預かる馬の質が上がってきているなというような印象もありますので、使われるレース数は少ないですが、そういったところに我慢ができる方であればいい厩舎だなというようなポジションになってきたかなと思います。ありがとうございます。

ゆ:来週はシリウスステークスレモンポップ登録してますからね。出てくるかわからないですけども、もし重賞3連勝などとなったらすごいなって感じです。


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