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世界は一冊の本

気付いたらずっと考え事をしている。無意識に没入していて、周りの声が聞こえないこともよくある。一体何を考えていたのか思い出せないときもあるが、それでもきっと何かを考えているのだ。考えることがとても好きだ。

毎朝決まったルーティンをこなしている。乱れた布団を畳んでベットメイキングし、眼科で処方された緑内障の目薬を両目に垂らす。目頭にある皮膚を右手でつまみ、全体に行き渡る感触を確かめながら瞑想に入ったら、ただただ呼吸を数え続ける。最後は詩集を手に取り、毎日1つずつ、ページをめくって現れる詩をじっくりと読む。

本を読むのはとても苦手だ。それでも本を手に取るのはそこに学びがあるからだと思う。そして、その行為の中に自分の足りない何かを感じ取っているんだろう。そんな僕にとって今日の詩はとてもよく響いた。

世界は一冊の本

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

書かれた文字だけが本ではない。
日の光、星の瞬き、鳥の声、
川の音だって、本なのだ。

ブナの林の静けさも、
ハナミズキの白い花々も、
おおきな孤独なケヤキの木も、本だ。

本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。

ウルムチ、メッシナ、トンブクトゥ、
地図の上の一点でしかない。
遥かな国々の遥かな街々も、本だ。

そこに住む人びとの本が、街だ。
自由な雑踏が、本だ。
夜の窓の明かりの一つ一つが、本だ。

シカゴの先物市場の数字も、本だ。
ネフド砂漠の砂あらしも、本だ。
マヤの雨の神の閉じた二つの眼も、本だ。

人生という本を、人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
記憶をなくした老人の表情も、本だ。

草原、雲、そして風。
黙ってしんでゆくガゼルもヌーも、本だ。
権威をもたない尊厳が、すべてだ。

200億光年のなかの小さな星。
どんなことでもない。生きるとは、
考えることができるということだ。

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

長田 弘


僕は考えることがとても好きだ。答えがあるものも、答えがないものも、ずっと考えていく。自分のために、誰かのために、いつまでも学ぶのだ。

明日も本を読もう。そして、書かれた文字だけが本ではないことを考えよう。

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