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『孟子』90 離婁上ー孟子の言葉(11)ただ仁であれ

孟子は言った。

「夏、殷、周の三王朝が、天下を獲得することができたのは、仁であったからだ。だが、彼らは天下を失った。仁ではなくなったからだ。

諸侯の国々の興亡、そして存亡も同じ理由だ。
天子が仁でないならば、世界を保つことはできないのだ。

そして、諸侯が仁でないならば、社稷を保つことはできない。
卿や大夫が仁でなければ、宗廟を保つことができない。
士や庶民が仁でなければ、自分の身を保つことができない。

今、死ぬことを憎んで、仁でないことを楽しんでいるならば、
それは、酔っ払うことを憎んで、酒を強引に飲みまくっているのと同じことだ。」

孟子は言った。

「人を愛して親しまれない、ならば仁に立ち返るのだ。
人を治めて親しまれない、ならば智をつくすのだ。
人に礼をつくしても答えてもらえない、ならば敬うのだ。
何かを行って結果が出ない。ならば、どんなことであっても自分自身に反省するのだ。

そして、その身を正していけば、天下は、あなたに帰服するだろう。
『詩経』には、このようにある。
〈すえながく、天命に一致するよう心がけ、自ら多くの幸福を求めた。〉」

孟子は言った。

「人々が、常に口にする言葉がある。
誰もが、〈天下〉や〈国家〉という言葉を口にするのだ。

さて、天下の本は、国家である。
国家の本は、家である。
家の本は、自分自身である。」

*以上、『孟子』90 離婁上ー孟子の言葉(11)ただ仁であれ

【原文】
孟子曰、「三代之得天下也以仁、其失天下也以不仁。國之所以廢興存亡者亦然。天子不仁、不保四海。諸侯不仁、不保社稷。卿大夫不仁、不保宗廟。士庶人不仁、不保四體。今惡死亡而樂不仁、是猶惡醉而強酒。」孟子曰、「愛人不親反其仁、治人不治反其智、禮人不答反其敬。行有不得者、皆反求諸己、其身正而天下歸之。『詩』云、〈永言配命、自求多福。〉」孟子曰、「人有恆言、皆曰〈天下國家〉。天下之本在國、國之本在家、家之本在身。」

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