『孟子』96 離婁上ー孟子の言葉(17)天の道~誠実であること

孟子は言った。

「道は、ここにある。
なのに、道を遠くに追い求める。
そして、事は簡単なのに、事を難しくしてしまう。

そうではないのだ。
人であれば人として、自分の親を親としてうやまい、年長者を、年長者として大切にするのだ。
そうすれば、天下は平定されるだろう。」

孟子は言った。

「下位にあるものが、上位のものによって取り立てられることがなければ、民を治めることはできない。

目上の者に取り立てられるには道がある。
そもそも、友人から信頼を得られなければ、上の者に取り立てられることはない。

友から信頼されるにも道がある。
そもそも、親に仕えて喜ばれることがなければ、友から信頼されることはない。

親に喜んでもらうにも道がある。
そもそも、自分自身に反省して、誠実でなければ、親を喜ばせることはできない。

自分自身が誠実であることにも道がある。
そもそも、善とはなにかを明確に理解していなければ、自分自身に誠実であることはかなわない。

であるからこそ、誠実であることは、天の道なのだ。
誠実であろうという思いは、人の道なのだ。
だが、極めて誠実にして不動の者、そのような者は、いまだかつて存在しない。
それでも、誠実ではないのに、物事を動かすことができた、という者も、やはり存在しないのである。」


*以上、『孟子』96 離婁上ー孟子の言葉(17)天の道~誠実であること

【原文】
孟子曰、「道在爾而求諸遠、事在易而求之難。人人親其親、長其長而天下平。」孟子曰、「居下位而不獲於上、民不可得而治也。獲於上有道、不信於友、弗獲於上矣。信於友有道、事親弗悅、弗信於友矣。悅親有道、反身不誠、不悅於親矣。誠身有道、不明乎善、不誠其身矣。是故誠者、天之道也。思誠者、人之道也。至誠而不動者、未之有也。不誠、未有能動者也。」

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