見出し画像

HSPとうつ病の関連性についてのお話

人の言動や気持ちを敏感に感じ取って、動揺してしまいやすい、周囲の音や匂い、光などを苦痛に感じやすいなどの特徴を持った人をHSPといいます。

HSPはあくまで生まれながらにして持つ「人の気質」ですが、うつ病にもなりやすいといわれており、そのままにしておけばいいというものでもありません。
今回は、そんなHSPとうつ病の関連性についてお話ししていきます。


HSPとは

HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、「人一倍繊細な人」という意味です。
これは90年代のはじめ、繊細な人の研究を行っていた心理学者のエレイン・アーロン博士によって名付けられた「人の気質」を表す言葉です。

アーロン博士によると、5人に1人はHSPだそうです。
また、HSPは人に限ったものではなく、犬や猫、魚、霊長類など100種類以上の動物にも見られる気質で、繊細さは生存本能のひとつであると考えられています。

HSPの人は人混みが苦手だったり、音や光に敏感だったりする傾向があります。
また、あらゆる物事を深刻に考えすぎてしまったり、人の言動に左右されやすかったりするために、生きづらさを感じやすいのも特徴です。
一般の人にとっては何でもないことに過剰反応しやすく、同じHSPでも女性より男性のほうが葛藤を抱えやすい傾向にあるでしょう。

HSPは仕事でうつ病になりやすい

HSPの人は、以下の理由から仕事によってうつ病になりやすい傾向があります。

・自己肯定感が低い
・他人に共感しやすい
・疲れやすい

仕事では、さまざまな年代や職種の人と交流する機会が増えます。
同僚や先輩、上司や取引先などに人一倍気を使うので、ストレスを溜め込みやすく、うつ病発症のリスクが高くなりがちです。

自己肯定感が低いため仕事での達成感が得られにくく、また、自責の念にかられたり、塞ぎ込んだりする傾向もあります。
そうした環境が長く続くと、気づかぬうちにうつ病を発症している可能性も低くありません。

HSPは細やかな気遣いができる、共感力が高いといった良い面をたくさん持っていますが、うつ病を発症しているとHSPの気質も悪いほうに作用しやすくなります。
最近、以前にも増して人とうまく接することができない、人の言葉に傷つきやすいと感じたときは、うつ病の可能性もありますので、早めに診察を受けるようにしましょう。

HSPとうつ病の見分け方

「塞ぎ込みやすい」「物事に敏感になる」など、はたから見ると似たような特徴を持っているHSPとうつ病ですが、明確に違う点があります。

それは、HSPは「気質」であり、うつ病は「病気」であるということ。
気質であるHSPは先天的に持っている、気分や感受性のことを指します。
病気であるうつ病は、人間関係やストレスによって発症する後天的な症状です。発症してから性格や思考がガラリと変化し、治療することでまた元に戻るという特徴があります。

HSPには、うつ病のように突然性格が変わるといった現象は起こりません。
自分への違和感を覚えたときは、家族や友だちなどに「以前と今の自分に大きな変化がないか」を確認することも大切です。

うつ病は、できるだけ早い段階で適切な治療を行っていけば治る病気です。
HSPとうつ病のどちらかわからない場合も、「つらい」という気持ちを我慢しすぎず、精神科や心療内科へ相談することをオススメします。

HSPとの向き合い方

HSPの自分に生きづらさを感じている人にまず試してほしいのは、自分を変えようとすることではなく、生きる環境のほうを自分に合わせることです。

例えば、適正のある職業に就くこと。
HSPの繊細さは、社会のなかで優れた能力を発揮する土台でもあります。
例えば、共感力が高く気配り上手なので人から好かれやすい特徴を活かして、ホスピタリテイが求められる接客業などを選ぶのもいいでしょう。想像力が豊かな点を活かすなら、芸術家(音楽家や画家、作家など)として活動すると強みになりやすいです。
HSPの強みを活かすことで、ありのままの自分を好きになっていくこともできるはずです。

また、自分に合った職業を選ぶことで、性格的に親和性の高い人が周りに集まってくることは言うまでもありません。自然と生きやすい環境が整うので、つらさも軽減します。

上手な生き方をするのではなく、上手に生きられる環境に身を置く。その生き方こそが、HSPを克服することと言っても過言ではないでしょう。

おわりに

生きているだけで、心の葛藤を抱えやすいのがHSPです。
人が気にならないことが気になり、繊細で傷つきやすく、精神状態によって体調も左右されやすいでしょう。
自分でも生きづらさを感じており、時として周囲からも奇異な目で見られる場合があります。
そうして周囲の理解が得られない環境に居続けると、まるで自分が悪いような気になってくることもしばしばです。

しかし、HSPが悪いわけでも、間違っているわけでもありません。
周囲の人の誰よりも多くの場所に馴染みにくく、自分には居心地のいい場所などないと感じたときは、どうか忘れないでください。
HSPの人の気遣いや優しさは、多くの人に愛されています。
自分を変えるのではなく、環境を変えることでそのつらさは軽減されるはずです。

自分が悪いと責めて耐えるのではなく、勇気を出して次の一歩を踏み出しましょう。
どうしても八方塞がりに感じるときは、友だちや家族だけでなく、精神科や心療内科での相談も視野に入れてください。HSPはうつ病になりやすい傾向があるため、うつ病の予防や早期発見にもつながります。
HSPの人の生きづらさが、少しでも解消されることを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?