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30代・40代独身男性のうつ病の傾向と対策とは


30代・40代独身男性のうつ病患者は増えている?

以前は30代・40代男性というと、働き盛りでバリバリ仕事をこなしているというイメージがありました。しかし現在の30代・40代は少し異なっています。
厚生労働省(注1)によると、うつ病が分類されている気分障害の患者数は年々増加しており、2002年から2017年までの15年間で約1.8倍にもなっています。
さらに中年男性の社会的孤立についての研究(注2)によると、うつ病・躁うつ病の患者数の増加は、女性よりも男性がより顕著であり(図1)、年代別では30代・40代が特に多くなっています(図2)。

図1 うつ病・躁うつ病患者数の推移

出典:「中高年男性の社会的孤立について」(注2)

図2 男性の年代別うつ病・躁うつ病患者数(08年)および患者増加数(99年⇒08年)

出典:「中高年男性の社会的孤立について」(注2)

また、厚生労働省(注3)によると未婚率も年々増加しており、35~39歳の男性の未婚率は1980年には8.5%だったのに対して2015年には35%に上昇しています(図3)。他の年代も増加しており、結婚しない男性が増えています。未婚者は既婚者よりも金銭的、時間的自由が得られやすい反面、抑うつ状態になりやすいとされており、うつ病のリスクが高まることが考えられます(注4)。

図3 年齢階級別未婚率の推移

出典:『令和2年版厚生労働白書』(注3)

以上のことから30代・40代の男性、特に独身男性の場合はうつ病になりやすく、実際にうつ病患者が増えていると考えられます。

患者数増加の要因

それではなぜ30代・40代独身男性のうつ病患者は増えているのでしょうか。いくつかの要因が考えられていますが、今回は2つのポイントに絞って解説していきます。

1.経済的不安定さと社会的孤立

30代・40代の独身男性がうつ病を発症する背景には、経済的不安定さや社会的孤立が大きく関係しています。この年代では、キャリアや収入が安定していることが求められますが、非正規雇用や転職市場の厳しさなどにより、安定した収入を得ることが難しいケースも少なくありません。さらに、経済的な不安定さが続くと将来への見通しが立てにくくなり、結婚や家庭を持つといった人生の選択肢が狭まります。
またこの年代になると人間関係の幅が狭くなりがちで、それまで交流を持っていた友人も家庭を持ち、子育てに忙しくなるため交流が希薄になるなど、孤立感を強く感じやすくなります。
そのような状況が続くとストレスが蓄積され、精神的に疲弊してしまうことが多く、うつ病のリスクを高める要因となります。

2.社会的プレッシャーと自己否定感

30〜40代は、社会的に「結婚して家庭を築くべき」「キャリアを確立すべき」といった期待が強くのしかかる時期です。特に、周囲が既に家庭を持ち、安定した職業についている場合、自身がその期待に応えられていないと感じることで、自己否定感や無力感が強まる可能性があります。また、結婚や昇進が一種の「成功」と見なされる社会的風潮があり、それに達していないと感じることで、精神的に追い込まれることがあります。こうした社会的な期待と現実とのギャップは、長期的に精神的なプレッシャーとなり、ストレスが蓄積されていきます。これが引き金となり、うつ病を引き起こすリスクが増大する可能性もあります。

うつ病の予防方法

うつ病発症リスクの高い独身の30代・40代男性がうつ病にならないためにはどのようなことに気を付けて生活すればよいのでしょうか。

1.社会的なつながりを保つ

独身の30〜40代男性は人間関係が希薄になりやすく、うつ病発症リスクを高めると解説しました。そのため社会的なつながりを意識的に保つことが非常に重要です。友人や家族との定期的なコミュニケーションは、孤独感を和らげるだけでなく、ストレス発散にもつながります。また、スポーツやボランティア活動、趣味のクラブなどに参加することで、日常のストレスを解消し、ポジティブなエネルギーを得ることができます。こうした社会的つながりは、自己評価を高め、精神的な健康維持に役立つだけでなく、何か問題が起きたときにサポートを得られる重要なネットワークともなります。

2.健康的なライフスタイルの維持

規則正しい生活リズムを保ち、バランスの取れた食事や適度な運動を取り入れることはうつ病予防において効果的な方法の一つです。
特に運動は、体の健康を維持するだけでなく、脳内のセロトニンやドーパミンといった「幸福ホルモン」の分泌を促進し、気分を安定させる効果があります。ジムやランニングといった積極的な運動が難しい場合でも、通勤時に少し歩く、休憩中にストレッチをするなど、日常生活に無理なく運動を取り入れることからはじめましょう。
また、バランスの取れた食事も心の健康に直結します。特に、魚やナッツなどに含まれるオメガ3脂肪酸は、脳の機能をサポートし、精神的な安定を保つ効果があるとされています。
これらのライフスタイルを整えることで、心身ともに健康な状態を保ちやすくなります。

3.ストレス管理とリラクゼーション

うつ病を予防するためには、ストレス管理を意識的に行うことが重要です。仕事や生活の中で避けられないストレスを感じたとき、それを抱え込まずに適切に発散する方法を持っているかどうかが、精神的な健康に大きく影響します。リラクゼーション法としては、ヨガや瞑想、深呼吸などの心身をリラックスさせる手法が有効です。これらの手法は、心のバランスを整え、日々のストレスを軽減することができます。また、趣味の時間を持つこともリフレッシュにつながります。映画や音楽、読書など、リラックスできる時間を確保することで、心をリセットしやすくなります。ストレスをうまくコントロールし、定期的にリフレッシュすることで、うつ病のリスクを減らすことが可能です。

「うつ病かも?」と感じたら

未婚率の増加や社会的なストレスにより、30代・40代男性のうつ患者が増加しているため、社会的なつながりを大切にし、規則正しい生活リズムの維持、ストレス管理を行うことで少しでもうつ病発症リスクを低下させる必要があります。
しかしいくら対策してもうつ病が発症してしまう可能性があります。
「気分の落ち込みが長く続いている」「夜中に目覚める/なかなか寝付けない」などの状態が続くようでしたらすぐに医療機関を受診してください。
例えうつ病になったとしても適切な治療を受けることで元の生活に戻ることができます。「気のせいかな」「ただ疲れているだけ」と安易に受け止めるのではなく、早めに専門家に相談することをおすすめします。

脚注
注1)厚生労働省(2022)「参考資料1:参考資料」, 『第13回「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」(2024.9.15参照)
注2)土堤内昭雄(2010)「中高年男性の社会的孤立について」, 『NLI Research Institute REPORT』, December 2010, 30-35(2024.9.16参照)
注3)厚生労働省(2020)『令和2年版厚生労働白書:令和時代の社会保障と働き方を考える』, p.10(024.9.15参照)
注4)藤森克彦・杉山京(2021)『中年未婚者の社会的孤立の実態とその特徴』, 国立社会保障・人口問題研究所(2024.9.22参照)


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