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世の中の当たり前

私は、自分のペースが乱されることが苦手である。

自分の中で「今からこの動画を見よう」「この本を見よう」「これをしよう」「あれをしよう」「今日はこの予定で行こう」などと思っている時に、他人から「〇〇して」「あれして」「〇〇しよう」など用事や誘いを受けるのが死ぬほど苦手なのである。それで自分の予定やペースを乱されるのが苦手なのだ。また急かされるのも苦手である。ほかにも、自分が集中して何かをしている時、話しかけられることも死ぬほど苦手である。

私は最近まで、万人共通でこういうものなのだと思っていたが、どうやらそうでは無いらしい。いつかTwitterで、「自己肯定感が低い人は自分のペースが乱されることが苦手」と言われてから、「そういえば私も自分のペースを乱されることは嫌いだな」と意識し始めた。それ以前は意識も何もしたことないし、ただ単に予定の途中に言われてるからムカついただけだと思っていた。

そして意識し始めでしばらくしたある日、私はなんだかわけも分からずイライラしていた。原因は単身赴任の父親が帰ってきたからなのだが、私は父親が別に嫌いでも苦手な訳でもない。むしろ普通に良好な関係である。なのにめちゃくちゃイライラしていた。なぜだろう、と考えていた時ふと、「自分のペースが乱されるから」という言葉が浮かんできた。

「自分のペース 乱される ストレス」と検索したら出てくる出てくる。知恵袋などを見てみれば、私のような体質が普通ではないことに気づいた。発達障害だという人もいた。

衝撃だった。そうか、世の中の人は自分が予定していた用事や何かやっている途中に何かされたり、何か頼まれたりしても、快く引き受けるのか。全然ストレスに感じないのか。そうなのか……。

…正直、全く理解できなかった。全人類、自分のペースが乱されることが苦手かと思っていた。どうやら違ったようである。私にとって、すごい衝撃であった。

そしてネットには、「自分のペースが乱されることが苦手な人は結婚ができない」と書いてあった。確かに父親が帰ってきただけでペースを乱され、イライラしている私は、恐らく結婚できないと言われてもまぁ、頷ける。ただ納得は出来なかった。

私の妹も、自分のペースが乱されることが苦手である。私は妹に接するとき、妹の生活のペースを乱さないように、頼み事をしたり、話しかけたりした。それが人としての気遣いであり、それが当然だと思っていた。

だがしかし、世の中は相手のペースを考えないのが当たり前らしい。相手がなんの作業をしてようとも、話しかけてもいいらしいし、相手が余裕を持って出かけようとしているところに「余裕があるのだから」と予定を頼んでもいいらしい。また相手がなにか楽しんでいる時に、大して急いでもない用事を今すぐやれ、と頼んでもいいらしい。それが世の中の【普通】であり、これが受け入れられない人は結婚出来ない人らしいのだ。そして変だと言われる運命で、「発達障害では?」と言われるのも普通だそうだ。


変な世の中である。


そんな気遣いができない男と私は結婚する予定は無いし、結婚してもイライラが募って爆発するだけだと思う。私は人のペースを考えるし、人は私のペースを考えて欲しいとおもう。ギブアンドテイクな世界だと思いたい。だが、世の中は私を【結婚できない人】とレッテルを張るのだ。気遣いが出来ない人を基準に。


おかしな世の中である。


私は自分のペースが乱されてイライラすることは、渋滞や天候による原因、自分の実力不足で時間通りに進まない、思ったよりも時間がかかったことなども含まれる。だがこういう「自分がいくら努力しても予定通りにいかなかったこと」のイライラくらいは自分の中で処理する。だが、それ以外の「明らかに相手や目の前の人の気遣い不足や努力不足が原因で、予定通りにいかなかったこと」は自分ではどうも処理できない。

私は自分のペースが乱されることが苦手だが、事前に言われていれば別に頼まれ事や誘いを受けることは苦手ではない。例えばなにか頼まれる時も、「時間が合う時に〇〇してくれない?」「キリのいいところで〇〇してくれない?」と言われれば私の予定に〇〇を組み込むし、「何日に△△行かない?」「何日に△△しない?」と言われれば、私は何日の予定に△△を入れる。それが自分のペースとなる。

また相手がなにかに集中している時は話しかけないで欲しいものである。相手の集中が切れた頃、キリが良さそうなところで話しかけるべきである。

世の中の人は全員最低限この努力をしてほしいとおもう。少なくともこの努力をしてくれさえ世の中全員がしてくれれば、ある程度の大人なら他のことで自分のペースが乱されてイライラしても自分で処理するのに、と思う。

というかこれくらいの気遣い、人として当たり前では?

けれど、世の中では当たり前ではないらしい。


椎名ゆず。



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