1月17日

 エド(飼っている猫)の調子が去年の終わりからおそろしく悪く、1日に10回くらい吐くし、ぐったりして寝てばかりだったのでかかりつけの動物病院に通っていたけれどそれでも良くなる傾向はまるでなくかかりつけの先生が、大きな病院に行ったほうがいいかもしれないね。といわれ、猫をたくさん飼ってきたいとこにお願いだからいいから〇〇動物病院に行って! とまるで切羽詰まった感じでいわれたのでわかったからと半信半疑でそこの動物病院に連れていった。
 そこの動物病院は設備が整っていると有名でなるほど。お高そうな犬や猫を大事そうに抱えたひとがたくさん座っていた。皆、こういってはなんだがお金を持っていそうな富裕層だ。
 「○○エドさん〜」
 診察室から声がし、まいちゃんと一緒に入る。そこにエドはいなかった。
先生がレントゲンの写真に目を向けてはーと息を吸いながらはー息を吐きながらこういった。
「……え、っとですね。率直にいいますと肺に影があり、多分肺がんだとおもいます。これから3日間食欲もないので点滴と検査入院をしてもらいます。これからのことはおいおい話していきましょう」
「……」
 隣にいるまいちゃんはえええというような顔をしていてまるで無表情だったが、わたしはその場で泣き出した。涙が止まらない。泣く以外の選択などその場ではなかった。他になにも。なかった。

「ママ! この猫がいい! 一番元気そうじゃん! で、名前はさ、エドワード・エルリックからとって『エド』にする! いいよね!」
「えーもっとさ、女の子だし可愛い名前に、」
までいうとおいかぶさるよう言葉を重ね「もう決めたんだもん!」
 そのときまいちゃんは小学3年性でりゅうのいいなりだったのでいいよなまい。と押し切られていて意見を出すこともできなかった。わかった。確かそれだけの言葉だけを述べた憶えがある。
 保健所からもらってきた子猫だった。
 小学校卒業・中学卒業・高校卒業・そして社会人。どの節目にもエドはいた。まいちゃんが結局率先して面倒をみるようになったのは中学に上がった頃からだった。
 「エドあのね」
 小学生の頃まいちゃんの部屋からエドと喋っている声が何度もした。
「あのね、でね。うん。いやんなっちゃうよ。ふふふ」
 あの頃きっと本当に話ができていたのかもしれない。まいちゃんとエドはいつも一緒だった。寝るのも、遊ぶのも。エドさ〜ん。エドが年寄りになってからはそう呼んでいた。
「ママよりもエドのほうが年寄りだよ」
 だからね、さんをつけてるの。
 最近の出来事だった。

 エドは13歳。まさか癌なるなんて。いや死ぬなんておもってもいなかった。いつかは命あるもの死はくる。そんなことなどずっと忘れていた。
 わたしはそれからもいつも泣いている。まいちゃんは布団の中に入ると涙が止まらないといいいつも目が腫れている。
 休職中でよかったね。うんそうだよね。ちょうど休職中でエドの様子をいつも見ていて今日も顔を真っ青にしながら「ママ! エドの呼吸が、荒いから病院連れて行く!」
 時間外だったけれど連れて行った。担当医も来てくれてレントゲンを撮ると肺に水が溜まっていて息ができないということを聞きまた入院をした。
 動物を飼う。それはとても贅沢なことだと知る。
 お金がかかるのだ。わたしのカードを渡してはいるが、あまりにもかかるからまいちゃんはびっくりしている。けれどそんなことはわかっている。
「心配しないでいいから」
 まいちゃんが納得する治療を。エドはたくさんまいちゃんを救ってきた。エドはまいちゃんの一部なのだ。
 けれど。細くゆらゆらとした灯火が消えていくのが顕著にわかる。エドはだからもう長くはない。長くはないのだ。
 まいちゃん、わかってるよね。うんと頷く娘の目尻に初めてみる水滴がついていて娘は人前では泣かないのにその小さな小さな涙にわたしはその涙にまた大声をあげ泣いた。
 肺に水が溜まっているからそれを処置し退院の時期はまだ不明だ。

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