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深夜2時に

━━今からは?
「えっ? 今からって。今どこにいるの?」
━━多分あやさんとこから、近いと思うんだけれど……
 LINE電話ってなんでこんなに声が大きく聞こえるのだろう。と思いつつスマホの横にある音量を絞り、えっと、どこどこにいますね。といやに明るくいうひかるくんに、ヤダァ! 全然近くないじゃんといい大きな声で笑う。
 休憩時間に電話をしてきたのはいいけれど遠くにいるし休憩時間も1時間しかなく、全然ダメじゃんとまた同じことを繰り返した。
━━すみません。……じゃあ、今夜うち来れます? 今時短なので9時には自宅にいますんで。うちに着いたらLINEしますね。じゃあ
「あ、うん。わかったよ。仕事がんばってね」
 はーいとまるで子どものような返事を彼は返しLINE電話が切れた。
 ひかるくんと今年になってからあってないなとそういえば的な感じで思う。飲食店の雇われ店長の彼は今まさにコロナ渦の中時短で且つ暇なお店を任されており大変だという。暇だけれどやることもあり帰宅時間も曖昧だし朝は早いしと不規則極まりない生活をしているらしい。
 22時を回った頃もう帰ってますというLINEが届く。行こうと思っていたけれど最近何もしていないのにこの時間はとにかく眠くて眠くて仕方がない。既読無視? 寝ちゃったよ。明日の朝そうLINEに返そうかなと一瞬思い、ああけれどそれはもう何度もしてきた可愛い嘘だしそろそろバレそうだと思いしかし待て待て。別に好きでもないし会わなくてもいいじゃないか。そもそも会ってもやるだけだし。今特にしたくないし。頭の中が混沌とする。最近本当にそうゆう粘膜行為をしたいと思わなくなった。ヘルスの仕事は仕事なので割り切っているけれどなんというか私生活においてそういうことをしたいと思わなくなった。まあ性欲が全く無くなったといってもいい。わたしから性欲を奪ったら一体何が残るんだ? とぼんやりしながら考える。ひかるくんには会っても会わなくてもどっちでもいい。だって会っても喋ることもあまりないし彼はただしたいだけなのだし。わたしといえばしてもしなくてもどっちでもいいし。こんなことを考えるなんてなんだか歳を感じる。老いていく自分がいやになる。かといって。もう若い頃に戻りたいとは思わない。また人生をやり直す。わたしは首を横にふるだろう。人生は人は生きると書く。生きるとはもうなんというか試練なのだ。

「おじゃまします〜」
 結局ひかるくんのうちに行ったのは次の日になっていた時間で深夜0時半くらいだった。
「ういっす」
 お菓子を食べながら缶ビールを飲みソファーで寝そべっていたひかるくんはほとんど寝そうになっていた。
「ベッドにいて。先に。シャワーしてくるね」
 ひかるくんも眠たいだろうしわたしも早く帰りたく喋る間もないままシャワーをしベッドに入った。もう彼はベッドに移動しておりテレビをぼんやりと観ている。
「……どう? お店は? 暇になったまた?」
 わたしはひかるくんの背中に問いかける。彼の背中は温かい。スベスベしている。
「うん。まあね。仕方ないよ」
 そこで言葉が途切れなにか続くかと思って待ってみたけれど待っていると寝息が聞こえてきて、えっ? とつい声を出してしまった。眠っていたのだ。
 まずい。した後ならともかくまだなにもしていない。とゆうかわたしも眠い。どうしよう。テレビの中で誰かが大笑いし手を叩いている。音がする。部屋は薄暗い。動いたらひかるくんが起きてしまう。起きてほしいけれど起こしては悪いきがし動かずにいる。変な体勢でいるため右腕が痛いし背中が寒い。わたしは逡巡しつつ思考を巡らせ早く帰りたいなと思う。テレビの音がうるさい。わたしはひかるくんの背中にゆっくりと耳をつける。心臓の音がし呼吸をしている音がし生きてるんだなと当たり前のことを思ってみる。眠たい。わたしの意識が徐々に薄れてゆく。

 ひかるくんに起こされバックで挿入をされその瞬間に爆睡したひかるくんを置いて車に乗り込んだ。深夜2時45分。いくらコロナで時短・自粛とはいえども車が一台も走っていない道など初めて見た気がする。信号にも捕まらず、他の車にも会わずファミマに寄りココアを買うも外国人のレジ打ちさんしかおらず深夜だとはいえ不気味すぎるほど人の気配が消えていた。誰もいない世界に迷い込んだおばさんになった気分だった。コンビニに寄っても8分でうちに着きびっくりした。意外と近いなぁと。
 誰かに会いたい理由が今までは性的行為をするためだった。けれどそれはなくてもいいしまあオプションであってもいいなと思えるようになりだったら好きという思いと性的行為は別物かもしれないと不意に思う。ただ会いたいだけなのにな。けど会ってどうこうじゃないんだけどな。顔が見たいだけとかじゃダメなのかな。
 寝入りばなそんなことを考えているうちに朝になっていた。なんかそういえば昔殺人を犯した記憶がありそれは夢だったのか現実だったのか曖昧だ。またその現場の夢を見てしまい起き上がると心臓がバクついていて時計を見ると13時だった。
 めちゃくちゃ汗をかいていた。お腹が空きすぎていてけれどなかなか布団から出れないでいた。

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