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発勁について

站樁(タントウ:立禅)を終え、定歩での重心移動が済んだら「発勁(ハッケイ)」を左右数回ずつ行う。

足は構えの状態、手は下段(臍下丹田:下腹部の前方辺り)に下ろし、前手の手首に反対の掌を当てる。

この状態で「発勁」を行うわけだが、そもそも「勁を発する」とはどういうことか。

ヒントは「勁」という漢字にある。

「勁」の「巠」の部首は「すべて垂直にして上下の緊張を保つもの」を意味する。

つまり力を加える対象の中心(重心点)に対して垂直に働きかけるのが、最も「勁い(つよい)」のである。

その勁さを爆発的に発揮するのが「発勁」なのだ。

一人で物を破壊したりせずに行う発勁は、何が対象となるのか。

それは大地、すなわち地球(の中心点)である。

地球の中心点に向けて、最も合理的に全体重を乗せながら、站樁(立禅)で充実させた「気」を爆発的に全身に巡らせる。

口を閉じ「(ッフ)ンッ!」という声(気合)を出しながら腹圧を高め、全身の内部が外側に拡張するようなイメージで「勁」を発する。

これを左右数回ずつ行う。

エビデンスはないが、発勁はし過ぎると内臓に負担がかかり良くないらしいので、一日に何十回とかはしない方が無難であろう。

発勁は打撃力を上げる基本となる。

レンガや瓦など、硬い物を破壊する硬気功は、対物の発勁といえるだろう。

意拳創始者の王向斉先生は硬気功をする必要はないと言われたそうだ。

対して太気拳創始者の澤井先生はこれを好み、石割りを教えたり、石灯籠の角を手刀で叩き切ったこともあったそうである。

私としては、好きで練習する分には止めないが、怪我のリスクもあるので、必要がないなら無理に取り組むこともないのでは…というスタンスである。

ただ「勁を発する」感覚が身についているといないとでは、打撃力に相当な差が出る。

「勁」を用いた打撃とは、自分の体重を垂直に相手の重心点に乗せながら、インパクトの瞬間に最大の力を発揮できる打撃なのだ。

これは心技体の一致(中国武術での六合)が要求される、難解で複雑なものなので、神秘的に捉えられることも多い。

しかし実は多分に物理的、合理的な身体運用法であり、攻防一致の技法を身につける上でも「勁」の感覚は不可欠なのである。

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