竹熊健太郎『フリーランス、40歳の壁 自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか』ダイヤモンド社 2018年刊

著者の仕事を「肩書き」で言えば、フリーライターであり、マンガ原作者であり、編集者であり、大学教員であり、会社経営。
これは目の前の選択を常に著者自身でしてきた結果であり、それこそが自由業の正体。何をして、どういう肩書きなのかは問題ではない。
大手雑誌の連載も、大学教員の肩書きも捨てることに迷いはない。
大病(脳梗塞)におかされ、借金を抱えても著者はまだ生きて、仕事をしている。
前例主義的に考えれば、もう一つの選択肢の方がよっぽどまともだと言われても。

本書では竹熊さん同様、自由業やってる人間が少なからず登場する。
とみさわ昭仁さん、杉森昌武さん、田中圭一さん、FROGMANさん、都築響一さん。
とみさわさんはフリーライターとしてキャリアをスタートし、その後、ゲーム業界に身を置いていた。
しかも『ポケットモンスター』を開発したゲームフリーク。そのまま残っていれば、楽な人生を歩めたかもしれない。
しかしそこで退職するのがとみさわさん。
その後、紆余曲折がありながら妻を亡くしている。
杉森さんは麻雀に一億は使った、というエピソードが強烈。
遊びと金を循環させるのがうまい人、という印象だが、
奥さんが仕事の上でも良きパートナーとなり、杉森さんを支えている。
フリーは一人ではできない、というのが彼の言。
田中さんはサラリーマンとマンガ家の二足の草鞋。
しかも、職場が4回変わっているというのが面白い。
4社目に入ったあたりで鬱病を発症し、カウンセリングを受ける。
印象的なのは結局、会社員は環境なのだということ。
環境が変わればすべてが変わる。
そして、マンガ家としてたしかな実績がありながら、
サラリーマンを続ける田中さんのような生き方もあるのだということ。
FROGMANさんは実写映像畑の出身。
その仕事では食えなくなり、島根に移住。
生活コストを極力切り詰めるも、奥さんの妊娠で崖っぷち。
そこで脚本、作画、編集、録音がすべて一人でできるアニメに活路を見出す。
コストを極限まで抑え、作ったものの権利を自分たちで持つ。
これにつながるのが、都築さんの発言。
「出版社の社員がお金をもらい過ぎている」。
お金がたくさんかかると、そのためにやることが増える。
根本的に構造を変えることは難しくなる。
だから当然、好きなことはできない。
でも給料が良ければ、わざわざ辞める人はいない。
それでも決断しちゃうのが、この本に出てくる皆さんです。

仕事ということの意味を、自分たちが得ているお金の正体を見直すきっかけになる一冊。

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