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「無効有害」を「有効」に見せる熟練技 肺炎球菌ワクチンの欠陥臨床試験

以前は西田敏行さんのテレビCMがよく流れていましたが、1月21日読売新聞朝刊の全面広告で高齢者向けの肺炎球菌ワクチンの広告を見ました。広告主はHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)ワクチンでも知られる米国メルクの日本法人MSDです。
65歳から100歳まで5歳刻みの対象者は今年度中接種費が公費助成されると強調しています。しかし、100歳への定期接種など正気の沙汰ではありません。
よく新聞広告を目にする帯状疱疹ワクチン同様に、年配者へのワクチン医療を強力に推進しようということでしょう。
今回は肺炎球菌ワクチンの臨床試験が非科学的、非合理的な審査を経て承認された経緯について考えます。そして結論として医薬品の審査は、それこそ裁判員制度のように一般市民が審査した方がましです。
 
「ワクチン副作用の恐怖」(近藤誠著、2017年文藝春秋)が教えてくれる肺炎球菌ワクチンの概要と有効性についてです。漢数字は洋数字に変更し、太字はブログ主によります。
65歳以上への肺炎球菌ワクチンは2014年度に定期接種化されました。
2011年に日本の国民の死因が三位に浮上し、臨床試験が行われ、有効となっためです。
ひとくちに肺炎球菌といっても、ほんのすこしずつ違う菌が90種以上あります。ニューモバックスという23のサブタイプに効く23価ワクチンの比較試験は、介護施設に入所中の男女1006人を二班にわけ、片方には肺炎球菌ワクチンを打ち、もう一方には偽薬(プラセボ)として生理食塩水を打ちました。
その結果、
 
肺炎球菌肺炎の発症数はプラセボ群37人、ワクチン群は14人。
肺炎球菌肺炎による死亡数はプラセボ群13人、ワクチン群0人。
 
これは素晴らしく有効に思えますが、ここからが論文の矛盾点を見落とさない近藤先生の真骨頂です。
この試験には欠陥が多々ある」と述べます。
 
副作用について記載がない。他の報告では、ニューモバックス接種者の7割以上に副作用が発生し、呼吸困難や知覚異常などの重大な副作用も見られる。
▼論文掲載のグラフごとに母集団の人数が違う。ワクチン接種群の総数は502人なのにグラフ2では399人、グラフ3では350人、グラフ4では413人とその都度人数がかわる。前述の肺炎の発症数や死亡数を鵜呑みにできない。
▼信頼できるはずの総死亡数がプラセボ群80人、ワクチン群89人
近藤先生は「ワクチンが肺炎球菌による死亡者を10人減らし、副作用で亡くなる人が19人増え、差し引き9人増えたことになります。――これでは肺炎球菌ワクチンは無効かつ有害です」と見破りました。
 
さらに、「肺炎が死因の第三位になったのは、要介護の高齢者が増加し、食事を半強制的に口から流しこむため、誤嚥性肺炎が増えたからです。そういう肺炎をワクチンで予防するアイデア自体が無理で、ましてや介護施設での試験結果は、健康な人たちにワクチンを打つ根拠にはできないはず」と述べ、我田引水的な思惑を浮かび上がらせました。
肺炎を減らすためには別に介護の問題があるようです。ワクチンは関係ありません。厚労省の審議会は、介護施設の試験結果を健康な一般高齢者への定期接種の決め手にしました。
「この審議会の出席者中、ニューモバックス製造会社であるメルク社から研究費をもらっている者が、参考人を含め15人中5人。他のワクチン製造会社からを含めると7人」
プレーヤー兼審判員が半数近くいるということです。
 
では健康な人に生じる市中肺炎にワクチンは効果があるのでしょうか。
近藤先生は海外の臨床試験にも通じています。
▽スウェーデンでの臨床試験。市中肺炎の治療歴がある50~85歳の男女691人を二班に分けて片方はプラセボ、片方には23価肺炎球菌ワクチン。
その後の市中肺炎の発症率はプラセボ群16%、ワクチン群19%で、
肺炎球菌肺炎の発症率はプラセボ群4.5%、ワクチン群5.6%
「厚労省審議会はこのデータを無視してワクチンの定期接種化を決め、年100億円以上が国庫から製薬会社に流れています」
 
もっと大規模な臨床試験、13価ワクチン、プレベナーの比較試験です。
▽オランダでの臨床試験。65歳以上の男女8万4000人を二班に分け、片方に肺炎球菌ワクチン、他方にプラセボを打ち、4年経過を見た。
肺炎球菌肺炎の発症数はプラセボ群90人、ワクチン群49人
肺炎球菌肺炎による死亡数はプラセボ群2人、ワクチン群2人
総死亡数はプラセボ群3005人、ワクチン群3006人
近藤先生はこうまとめます。
「3000人の高齢者が亡くなるうち、ワクチンに含まれるサブタイプの肺炎球菌肺炎で亡くなる人が二人。それをなんとかしようと、4万2000人にワクチンを接種しても、死亡数は減らない」
 
製薬会社から研究費をもらわない一般人なら「こんなムダに国庫100億円は遣えない」と冷静に判断できることでしょう。
専門的知識? 総死亡数に気を付ければいいだけです。
 

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