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「米国が日本にマルウエアを仕掛けた。発電所や鉄道を破壊し機能停止できる」 オリバー・ストーンのプーチンインタビュー最終話

LGBTのデモなどは「伝統的価値を破壊する欧米の思想」とするロシアのプーチン大統領のインタビューを通じて、プーチンは本当に悪の枢軸なのか、アメリカに正義はあるのか、について考えています。

 原題「ザ・プーチンインタビューズ」というドキュメンタリー番組で、2015年7月から2017年2月にかけて、JFK、プラトーン、スノーデンなど社会派作品で著名な映画監督のオリバー・ストーンがプーチンロシア大統領に密着しました。全4話の構成となっています。

 日本向け編集の「オリバー・ストーン・オン・プーチン」の第4最終話は、他国への選挙介入から始まります。

 オリバー・ストーンが「民主党全国委員会へのサイバー攻撃はトランプを勝たせるためか?」と聞きます。

プーチンは答えます。「本当にくだらない言説だ。ロシアとの関係修復に取り組むことを公言していたからトランプ氏には好感は持っていた。すると各国のジャーナリストが突っ込んできた。私をはめるために。ハッカーが暴露した疑惑は事実だから全国委員会委員長は辞任した。これはアメリカの内政問題だ。

 ロシアがハッキングしたというデマの目的は①大統領の正当性を失わせる②米ロ関係修復を難しくする③米ロ内で政治的争いの引き金を用意する、と分析しました。

 対して、ロシア大統領選への外国の関与はどうでしょうか?

オリバー・ストーン「2000年も2012年もロシア大統領選に米は介入したか?」

プーチン「特に2012年は強引だった。私はオバマ大統領とケリー国務長官に問題を伝えた。ロシア駐在の外交官があからさまに介入するとは信じがたい」

 ここで再び登場するのが外交官ビクトリア・ヌーランド氏です。
「我々はロシア活動家と国内外において報道の自由を強化するプログラムを実施しています」との映像が流れます。
この人は民主党政権で昇進を重ねバイデン政権では国務省の№3になっています。

プーチンは続けて「彼らは反体制派を結集し、抗議集会に資金援助した。外交官の本来の任務は二国間の良好な関係を築くことだ」と言います。

日本の外交官が外国のデモに参加すれば、いまだ「仮想敵国」の日本ですから国連などで袋叩きに遭うことでしょう。
今年は、アメリカのエマニュエル駐日大使がLGBT推進デモに稲田朋美代議士らと参加していましたね。
これは国際社会では非常識なことです。

 そして、極めて日本にも重要な情報が提示されます。

オリバー・ストーンの映画「スノーデン」の一場面が挿入されます。

スノーデンが日本に勤務していたときの話。NSA(国家安全保障局)は自分たちの能力を日本人に示そうとした。国民の監視活動に協力すると言うと日本側は渋った。日本の法に反するから、と。

※スノーデンは横目でオープンガラスの日米会談の様子を見ている場面があります。日本側も左肩に☆を載せた軍服を着た人が複数いました。オリバー・ストーンは細部にこだわる監督ですから、制服組が提案を受けたのでしょうか。

映画「スノーデン」に戻ります。

スノーデン役俳優のセリフは「だが僕らは実行した。通信システムにとどまらず物理的インフラにも手を出した。電力系統ダム病院にプログラムを潜伏させたから、アメリカと同盟を解消したら日本は真っ暗になる」

 以上のような映画内容を踏まえて、オリバー・ストーンは「アメリカが日本にマルウエアを仕掛け発電所や鉄道を破壊し機能停止できるなら、ロシアも危険性を認識し対策を講じているはずだ。ロシアはアメリカの仮想敵だから」と振ると、

プーチンは「技術面の自立と安全の確保を検討しはじめたのはここ数年のことだ。今は十分に考え適切に対処している」と答えました。
※「日本にそんなことが」と驚きも否定もせずに、自分たちも最近対策を検討し対処したという答えが何とも不気味です。スノーデンの関連著書も複数読みましたが、日本のインフラへの時限装置は具体的な記述がありませんでした。映画「スノーデン」だけで語られている点が何とも不気味であり、現代までの属国体制を説明しているようにも感じます。 

アメリカによるイラン核施設へのマルウエア攻撃疑惑を報じた米人気テレビ「60ミニッツ」の映像、大統領選後ロシア主要銀行六行で起きたサイバー攻撃を伝えるニュースと、バイデン副大統領とオバマ大統領が民主党へのサイバー攻撃をロシアの仕業と決めつけたうえで、報復をほのめかすインタビュー映像(バイデン2016年2月、オバマ2016年12月)が流れ、オリバー・ストーンは「(報復をほのめかすなんて)とんでもない発言だ。就任式の前に何かあったはずだ」と述べます。

 

最近のオバマ政権について、互いを表彰し合うソ連共産党政治局員の映像が流れ、「それを思い出す」というプーチン。オバマがバイデンに文民最高の大統領自由勲章を贈った映像を評して、「特に滑稽だったね。この政権はもう重大な決定を下せない」と話します。

 

2017年1月12日文民最高の大統領自由勲章をオバマ大統領(当時)からサプライズ授与され、涙ぐむバイデン副大統領(現大統領) ウィキメディアコモンズより

 

広島、長崎への原爆投下については、「人類史に悲劇的な1ページが加わった。軍事専門家いわくあの時点で敗北が決まっていた日本に核兵器を使う意味はなかった」と話し、原爆投下の映像にガムを噛みながら拍手を送ったオバマ大統領と、胸で十字を切って哀悼したプーチン大統領の人間性が対照的だった2014年のノルマンディー上陸作戦70周年記念式典を思い出しました。

 オリバー・ストーンの「ケイマン諸島に隠し財産はあるか?」に

「あればとっくに見つかっているよ。金持ちになったところで大きな幸せにつながるとは思わない」とプーチン。金儲け第一のグローバル勢力とはこの点でも対照的です。

長期政権と後継者について「後継者は必要だ。健全な選考プロセスが大切。この競争に参加できるのは国益を考える者に限るべきだ」と、日本の政治家から長らく聞こえない国益という言葉。

 インタビューは、7、8年前のことですが、ウクライナ問題の根っこは何も変わっておらず、マスコミ報道では正しく伝えていないことが当時も今も存在するようです。

プーチンはおかしくなったのか?

少なくとも、この当時は極めて冷静に状況を分析し、アメリカの内政にも外交にも通じています。

たったひとつ聞けなくて残念だったのが、第三次世界大戦の危機とも言われたトルコ・シリア国境付近でのトルコ軍機によるロシア軍機撃墜事件です。2015年11月24日のことで、オリバー・ストーンのインタビュー期間中でした。NATO対ロシアを回避できた真相について知りたかったと思いました。

 

ただ、その一点を除けば、本当に満足のいく作品でした。

「全体主義のロシア報道より自由主義の西側の報道の方が信頼できる」

そう言う日本の保守派を自認する方々に、是非見てほしい作品です。

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