案山子の声
空が青い。所々雲が泳いでいる。
周りには高い建物なんてないから、遠くの空までよく見える。
僕は案山子。
ずっとここに立っているただの案山子。
肩に雀が止まる。
「今年もうまそうな米ができたなぁ。どれ、ちょっと味見を…」
「・・・こらっ!」
声を上げたのは僕ではない。
真っ黒なカラスだ。
こらっ!ではなく、カァッ!だったかもしれない。
どちらにせよ、驚いた雀は遠くの空へ飛んで行った。
ああ良かった。大事なお米を守ることができた。
僕は案山子。僕には声がない。
だから、大好きもありがとうも言えない。
カラスは退屈そうにあくびをする。
「なぁ案山子よ、おめぇホントはしゃべれるんじゃねぇか?」
…。
「おめぇがしゃべれねぇって勝手に決めつけてるだけでよ、ホントはしゃべれるかもしれねぇじゃねぇか。試してみたのか?」
…ああ、試したよ。何度も、何度も試してみたんだ。
だけど、僕がしゃべることはなかった。
僕には声がないんだ。
声帯っていうのは凄く特殊で繊細な作りなのか、人間は僕を作る際に声を作れなかった。
いや、作らなかったのかもしれない。
しゃべる案山子というのは、凄く薄気味の悪いものだ。
それに情が湧いたら厄介だ。
無口で無機質。そうでなければ、あんな広い場所に1人ポツンと置いておけない。
そんな事を考えていると、カラスが急に飛び立った。
しゃべらない僕に愛想を尽かしたのだろう。
仕方のないことだ。
僕はまたひとりで、目の前の景色を当たり前に眺めながら、ただ立っていた。
次の日の明け方、カラスが戻ってきた。
くちばしに何か咥えている。
あれは・・・枯葉?
「ほらよ、口だ。これがあればおめぇもしゃべれるだろう。色々探したけど、これが1番おめぇに似合うと思ってよ。さぁ、これをつけて…と」
カラスは枯葉を案山子の口元につけ、目を輝かせながら僕の言葉を待っている。
(ありがとう。…ごめんよ。)
カラスは少し淋しい目をした後、「そういえば、さっき雀がな…」といつも通り他愛もない話を笑顔で話し始めた。
fin
【SNS まとめ】
https://aboutme.style/shin_Ishizuya
【Release】
2023.12.25 Release
「迷惑」
https://framu.world/groups/shinishizuya/albums/1174
歌詞
https://ishizuyashin.amebaownd.com/posts/40920229/
Album付きライナーノーツ「CARNIVAL」
[収録曲]
1.OPENING
2.悪魔とカーニバル
3.饗宴
4.Grin clown
5.幻想
6. Mr.Chaplin
7.羽を無くした鳥
8.ENDING
¥2,000
Design:siz
arrangement :ヒロハタケンジ
ご購入はこちら→ https://booth.pm/ja/items/4214670
♢Concept sigle 「夜空のサーカス」
[収録曲]
1..夜空のサーカス
2.サーカスのライオン
3.歌えジャンボ!
Design:siz
arrangement :ヒロハタケンジ
CDのご購入はこちら→ https://shin-ishizuya.booth.pm/
トレーラーはこちら→ https://youtu.be/54aMgyz1zuU
🎪2024年ライブ🎪
3/14(木)久米川 太陽と月灯り
3/30(土)神戸 カフェドジェーム
3/31(日・昼)大阪 吹田 izumicho cafe
【ホームページ】
https://ishizuyashin.amebaownd.com/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?