気功で優秀になってみる
気功というとイメージされる絵柄は仙人のおじいちゃんや、ぽっちゃりした太極拳の先生などだろうが、最もメジャーなのは陰陽図(双魚図)ではないだろうか。
これ、黒が上か?とか、白が上か?とか議論があるようだが、白を陰、黒を陽とすると、北方が陰、南方が陽となるので、白が上になるものと、遁甲盤のように、「指南」の伝統から南を上にする両方があるっていうのが正しいと思う。
さらに言えば、北を上にした場合、右が東、左が西になるので、北(水)・東(木)・南(火)・西(金)・中央(土)の五行配置が出来上がる。四季は春(東 青)・夏(南 朱)・秋(西 白)・冬(北 黒)となり、橋渡しの時期を土用(中央 黄または玉)とするとわかるだろうか。
これで何で優秀になれるのかだが、それには小さな「目玉」に着目してほしい。
黒には白の、白には黒の目玉がある。実はこの目玉の意味が大きい。
陰陽の動きは四象でいけば「少陽(春)・太陽(夏)・少陰(秋)・太陰(冬)」になるし、経脈などではこれに陽の極まりである陽明と、陰の極まりである厥陰を置く。
そこで目玉に着目すると、陽明においても陰を含み、厥陰であっても陽を含むというのがわかる。陰陽どちらかの極大にあってももう片方の極小を内包することがわかる。
つまり、一般に言われる「陰陽」は実はゼロサムの二元論ではないのだ。陰極まれば陽に転ずというためには、2対問題ではなく立体的な3対問題を最低でも解かないと理解できない。
中国の哲学的な理想は「中正(中庸)」にある。諸々の転変・変化を経て王土である中点を保つことが求められる。全ての変化はある意味での立体的な交点としての中正に帰着する。この中正の原初を太極とすればそこから両儀(陰陽)が生じ、四象(上記参照)が生じ、八卦(乾兌离震巽坎艮坤)が生じることになる。
その太極を現象中(動態の内)に求めようとすると、それは中正になる。全ての運動・変化を止揚して中正で陰陽未分の状態を無極と言う。
私の師にあたる中医師(百名医の1人)で新医学気功創始者の楊峰老師も、中気(冲気)の重要性を説いている。陰の気でも陽の気でもない中正に生じる中気である。
さらに言えば、気功を練習する過程では、多情報を同時に感得することが求められる。例えば、私たちは太陽暦によって生活をしているが、実際には月の影響も色濃く受けている。月の満ち欠けの29日周期だけでは季節は定まらず、それは太陽の運行の夏至点・冬至点、春分点・秋分点や二十四節気によらねばならない。
無自覚に生きていると何も感じないが、多少意識的に生活すれば、季節ごとの服や調度の変化に意識的になる。また自分の多調や生理的な変化が月齢に対して同じような変化をすることもわかる。
この月齢と太陽運行の両方を自覚した暦が旧暦(太陽太陰暦)であり、ある意味、気功ではまずこの二つの影響を感じ、自身の気のありようをコントロールすることに要諦がある。
たとえて言えば、まずは太陽か月というバランスボールに乗ることを覚えて、次にそれを重ねてみるという感覚を身体と呼吸と意識の交点で養うことをする。
こういうと難しいことのようだが、それを実に簡便に、楽しく負荷なく行うことに気功の妙味はある。
幼稚園児がスイスイと一輪車に乗るあの感じである。
日常から複雑な問題とともに(しかも繰り返すけれども「負荷なく」である)暮らせば、さまざまな感覚は向上する。ゼロサムしか意識できない状態で学習をするより多元的で立体的なインプットに慣れていれば、自然と解析能力にも向上が見られるというわけだ。
練習者の中には大人になって知能の向上が見られた人もいる。
特に新医学気功の初級動功(9つの簡単な動作で構成されている)は誰でも簡単にできるもので(時間もとらない)ので、2対問題思考から3対問題思考への飛躍が簡単である。また、いきなり3対問題の立体思考を獲得することもできる。
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