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わたしのお気に入り:セレンディピティを呼ぶ書店「葉々社」

本屋さんのない町で育ったわたしにとって、「本屋さん」は特別な場所です。

駅ビルに入っているような大型書店なら、店内に入るだけでワクワクしてしまいます。話題の本、SNSで見かけた本を手に取ることも。

こうしたチェーンの書店とは違った魅力を発見できるのが、「独立系」と呼ばれる本屋さんです。町の本屋が減っている一方で、インデペンデント書店は増加しているそう。

わたしも不定期的にウロウロしているインデペンデント書店がありますが、その中でも一番多く立ち寄っているのは、京急梅屋敷駅から徒歩3分のところにある「葉々社」さんだと思います。

店主の小谷さんはカメラ雑誌の編集者から、ひとり本屋さんへと転身された方。まもなく開店1周年を迎える、まだ新しい本屋さんです。

梅屋敷の商店街から細い路地を入って先に進むと、緑色ののれんが見えてきます。ここが、葉々社さん。

トレードマークは緑ののれん。オープン当初はまだなかった。

個人商店は入りにくい……と感じる方もいるかもしれませんが、このお店は大丈夫です。小谷店主はカメラに詳しい、韓国ドラマ好きのおっちゃんだから(失礼!)。

10坪ほどの店内には、新刊、古本、一箱本屋、雑貨などが並んでいます。

台湾や韓国の文学、言葉にまつわる本などが並ぶ棚


「NIR IDENTITY & BOOK」の「読むしかできないブックショルダー」。もちろん買いました。


絵本専門士さんやプロのカメラマンが選書した本が並ぶ「一箱本屋」


平岡瞳さんと共同制作された2023年の「版画カレンダー」

「おお! 梅屋敷に本屋さんができるんだ!!」と、こちらのツイートを見かけてノコノコ出かけて行ったのが最初です。まだ工事中でした……。

ツイートに出てくる小上がりには、昔なつかしい「ちゃぶ台」も。実はお客さまから購入されたそう。

小上がりは靴を脱いで上がります。出かける時は靴下に穴が空いてないか要チェック!

昭和レトロを感じられる町、梅屋敷。ちゃぶ台のある本屋さんなんて、ピッタリすぎる!

ちなみに葉々社さんに寄った後、昭和を感じる喫茶店・琵琶湖で休憩するのがお決まりのコースです。

昭和の喫茶店といえばクリームソーダでしょ!


葉々社さんでは、この一年で多彩な本に出合うことができました。

須藤孝也さんの『人間になるということ キルケゴールから現代へ』。付箋を貼りまくりながら読んだのがバレバレ。

芦野公平さんのイラストがかわいい、木村朗子さんの『平安貴族サバイバル』。寝る前のお供に、フフフと笑いながら楽しみました。

小谷店主のおすすめで買ったのが『今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談』。これ、すべての対談が超おすすめ!!

葉々社さんの選書の基準は、「考えるきっかけになる1冊を。」です。

小谷店主は元編集者だからか、次々におもしろい企画を起ち上げて、本を届けておられます。今年に入ってからは、すぐ近くにある東邦大学大森病院で、なんと「出張本屋」をオープン。

「本屋大賞」を企画された嶋浩一郎さんの言葉に、「たった五分、書店を歩くだけで世界を一周できる」があります。本棚を見ながらゆっくりと店内を歩く。パスポートも、両替もいらないプチトリップ。

リアル書店の醍醐味は、なによりも棚を直接見られることなんですよね。

まったく知らなかった世界が、見たこともない現象が、名前さえ知らなかった古代の社会が、ホレボレしてしまう景色が、よだれをこぼしてしまいそうな食の神秘が、本を通して目の前に表われる。

しかも、数千円で。

安すぎない!?

cotenラジオの深井さんが「もっと人文知にお金が払われるべきだと思う」と嘆いておられて、ガクガクガクガクとうなずいてしまいました。

でも、今以上に本の値段が上がったら、きっともっと買えない人が増えてしまう。

一方で、出版業界の末端で仕事をしている身としては、もっと制作費がかけられるようにならないと校正料も上がらないよね……という矛盾した気持ちを抱えています。

よく知られているように、2012年から2022年までの10年間で、書店は約3割減少しました。

そんな状況の中、小谷店主は新しく本屋さんにチャレンジされたわけです。

書籍はどこで買っても、いつ買っても、値段は変わりません(税金は別ですが)。だからこそ、気持ちのいいお店で選びたい。応援したいお店で買いたい。ついでにおしゃべりも楽しみたい。

「本屋さん」を特別な場所と感じるわたしにとって、葉々社さんとの出合いは、とてもうれしいご縁でした。

大型書店の「世界一周旅」が「用意された整った体験」だとしたら、葉々社さんのようなこじんまりした書店の「世界一周旅」で出合えるのは、「自ら手を伸ばす主体的な体験」です。

オンライン書店の残念なところは、一度買った本と似たような本を何度もレコメンドされることかもしれません。正直に言って興ざめ……。

それよりも、棚を眺めながら、プチ冒険を楽しみ、偶然手に取った本との出合いに心を動かされたい。そして、数百年経っても支持されるような「知」に触れたい。

葉々社さんでの出合いは、人生にセレンディピティを呼ぶかもしれません。「行きつけ」の本屋をもってみませんか?


<葉々社プロフィール>
営業時間:10:00〜20:00
定休日:月曜日、火曜日
(変更される場合があるので、ツイートを要チェック)
住所:東京都大田区大森西6-14-8-103
京急梅屋敷駅より徒歩3分
Twitter:@youyousha_books
Instagram:@youyousha_books



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