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反プーチンだったナワリヌイ。でも、帝国主義的、排外主義的な感覚はプーチンと一緒

アレクセイ・ナワリヌイという名前を聞いた事がある人も多いと思う。あの独裁国家ロシアにおいて、絶対的権力者のウラジーミル・プーチンに対して徹底的に抗ってきた男だ。ナワリヌイはその活動が故に逮捕され刑務所に入る事となるわけだが、2024年2月16日、刑務所内で死去した。享年47歳だった。

何度も何度も拘束、逮捕されようが、何者かに毒を盛られようが、ナワリヌイは徹底的にプーチンに抗い続けた。最期は刑務所で亡くなってしまったわけだが、この男の根性や気概は恐るべきものがあり、常人には到底真似する事ができないだろう。その点については素直に尊敬してしまう。

ナワリヌイを賞賛する声は世界のあちこちで聞かれるのだが、しかし彼は民主的なロシアを作りたかったのだろうか? 民主的なシステムが整った近代的なロシアを作りたかったのだろうか? 実は、私はそうは思っていない。ナワリヌイは、ただただ独裁者プーチンを引きずり下ろしたかっただけで、プーチンと同じく帝国主義的、排外主義的な感覚と野望は変わらなかったんじゃないだろうか? 周辺国が安心できるようなロシアを作る気なんてさらさらなかったんじゃないだろうか? 私はそう考えているのだ。

本日は米国の国営放送、「ボイス・オブ・アメリカ」でペンタゴン特派員を務めるOstap Yarysh(オスタップ・ヤリッシュ)氏のツイートを紹介したい。ナワリヌイという男を知る為には、彼のツイートが非常に参考になるし分かりやすいのだ。

以下、2023年1月28日(※ナワリヌイが死去する前)に投稿されたヤリッシュ氏による一連のツイートを紹介したい。

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●西側諸国の多くは、ロシアの野党指導者#ナワリヌイと、アカデミー賞にノミネートされた彼についてのドキュメンタリーを賞賛している。しかし、忘れてはならないことがある。反プーチンであることは、ナワリヌイの帝国主義的、排外主義的見解を否定するものではない。このスレッドの具体例を見てみよう。


●2008年にロシアがジョージアを攻撃したとき、ナワリヌイは侵攻を支持し、自身のブログに "ジョージアの参謀本部を巡航ミサイルで攻撃したい "と書いた。彼はジョージア人を「rodents(げっ歯類)」と中傷し、ロシアから追放するよう呼びかけた。


●ナワリヌイは次の投稿で、ジョージアのサーカシビリ大統領(当時)をヒトラーになぞらえ(こんなレトリックを他にどこで見ただろうか)、にもかかわらず、ジョージア人は他と比べてそれほど悪くないと述べた。
Дайте Грузии шанс! (livejournal.com)


●その後、ナワリヌイはジョージアに関する国連安全保障理事会の会合に腹を立てた。コスタリカ大使の発言が気に入らなかったのだ。「ジョージア爆撃が終わったら、コスタリカに対処すべきだ」と書き、コスタリカも爆撃することを示唆した。


●ずいぶん昔のことだと言うかもしれない。しかし、2017年のゼニア・ソブチャクとのインタビューで、ナワリヌイはジョージアを攻撃し、巡航ミサイルで攻撃するという言葉を支持していた。2021年、ナワリヌイのウェブサイトでは、ロシアが支配するジョージア領土は別の国家として表示されていた。


●ウクライナについて話そう。ナワリヌイのウェブページの同じスクリーンショット👆では、クリミアはロシアと表示されている。ウクライナ人が直接変更を求めたが、ナワリヌイのチームは拒否した。他のナワリヌイチームの地図でもクリミアはロシアと表示されている(最新のものは2022年12月)。


●クリミアに関するナワリヌイの個人的な立場は? 2014年、彼は "クリミアはロシアの一部であり続け、当面ウクライナの一部になることはない "と述べた。


●同じインタビューでナワリヌイは、クリミアは違反行為で併合されたものだと付け加えたが、返還するかどうかの質問にはこう答えた: "往復させるのはサンドイッチか?"と。その後、彼は言い方がよくなかったと認めたが、クリミアをウクライナに返還するという考えには決して同意しなかった。


●長い間、ナワリヌイはウクライナに関するクレムリンのトーキングポイントとあまり変わらない発言を繰り返してきた。例えば、彼はウクライナ人とロシア人は同じ国民だが、当然ロシアが支配すべきだと言った。

●2018年、ウクライナ正教会がついにコンスタンチノープルから自治権を認められたとき(モスクワからの宗教的独立に向けた歴史的な一歩)、ナワリヌイは、ロシア文化の優位性を示す植民地的概念である "ルースキー・ミール "にとって災難になると訴えた。

※ルースキー・ミール
ロシア語を話し、キリスト教ロシア正教会を信仰する人々が居住する地域を独自の文明圏とみなすロシアの世界観、思想、イデオロギー

ルースキー・ミール - Wikipedia


●ナワリヌイは「ルースキー・ミール」を悪いものとは思っていないようだ。それどころか、彼はプーチンがそれを台無しにしたと批判した。彼はプーチンが他国を服従させ、その文化的アイデンティティを消し去ろうとしていることを非難したのではない。

●民族的、人種的中傷の使用もナワリヌイにとっては問題ではないようだ。彼はウクライナ人を「khokhols(ホホール)」という民族的中傷で呼び(そのツイートはまだ入手可能だ)、ロシアの非スラブ系民族に対しても蔑称を使った。


●例えば中央アジアでは、ナワリヌイは強固な反移民論で知られている。彼は何度も何度も、この地域からの移民はロシアにとって脅威であると述べた。彼は彼らを犯罪者や麻薬の売人と呼んだ。聞き覚えがあるだろうか?
Alexey Navalny’s views on migrants run counter to his pro-democracy discourse · Global Voices

●2017年の大統領選挙期間中、ナワリヌイは中央アジア諸国の「美しい市民」にビザ制度を課すと約束する一方、ドイツはロシア人のためにビザなし入国を確立すべきだと述べた。


●このスレッドでは、主にジョージア、ウクライナ、中央アジアに関するナワリヌイの見解に焦点を当てたが、バルト三国、モルドバ、ベラルーシなど、ロシアが "勢力圏 "とみなす場所についても同様の例を見つけることができる。

●これらの事実のいくつかは、おそらく映画が説明するような
「一人の男と権威主義政権との闘いの物語」には当てはまらないだろう。ナワリヌイをロシアの新たな英雄、プーチンに代わる民主的な英雄とみなす西側の多くの人々にとって、それは受け入れがたいことかもしれない。

●ナワリヌイは反プーチンなのか? そうだ。そのために彼はクレムリンに不当に投獄されたのか? もちろんだ。反戦か? 彼はそう言っている。しかし、彼は植民地的なアプローチや、他国に対するロシアの優越性/優位性を否定しているのか? そうではない。そして、これは心に留めておくべきことだ。


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以上だ。

見てきたように、ナワリヌイは反プーチンだからといって、決して帝国主義的、排外主義的な人物ではない、とは言えないのだ。

勇気がある男だという事は認める。しかし、だからといって手放しで賞賛して良い人物だとは、到底私には思えないのだ。

そして、このナワリヌイに抱くような感覚は我々日本人にとって危険だとも思うのだ。ロシア人がウクライナで行っている残虐行為の数々を目の当たりにしている私は、残念ながらロシア人一般を我々日本人と同じような感覚を持った人たちと捉える事はできなくなっている。差別だ偏見だとツッコまれようが、私はこのロシア人に対する印象を捨て去るつもりはない。

ナワリヌイに学ぶ点は多々ある。しかし、我々日本人は彼の別の一面を知っておく必要が絶対にあるのだ。さらに押し広げて、ロシア人とはどのようなものか、我々は知っておく必要が絶対にあるのだ。

日本の事を考えるならば、日本の未来を考えるならば、もう少し注意深く彼らを観察しておかないといけないのだ。

ロシアは日本のすぐ隣の国なのだ。



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