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成人BLSとの違いが知りたい人のための小児・乳児の心肺蘇生法

今回は小児・乳児の心肺蘇生法について書かせて頂きたい。大人のBLSについては何回か勉強させていただいた。しかし、小児や乳児に対して同じでいいのだろうかと疑問を感じていた。今回、20年以上救急の現場で働いていた救急救命士の方の講義を受ける機会に恵まれた。そこで教えていただいたことやJRC蘇生ガイドライン2020 オンライン版も参考に書かせて頂いた。この記事で小児・乳児の心肺蘇生法の理解が少し深まると思う。あくまで分かりやすいように書いているのでニュアンスの違いがあるかもしれないが書いていく。


①周囲の安全確認後、反応を確認


小児の場合は「●●ちゃん大丈夫と。」と両肩を叩き声掛け行う。乳児の場合は 足の持ち上げ、踵を叩き反応をみる。誰に指示したか分かるように、身振り手振りを入れながら、119番やAEDの指示を行う。周りに人がいない場合はその場を離れるよりも119番に電話した後、心肺蘇生をすぐ開始する。AEDもあるに越したことはないがない場合はすぐに切り替える。

➁反応がなければ呼吸の確認(熟練者は心停止の確認)を行う。


呼吸は胸と腹部の動きをみて「普段通りの呼吸かどうか。」を10秒以内で確認する。胸郭部分を触ると呼吸の振動が伝わり、胸郭の浮き沈みを感じやすくなる。また、頭から斜めにみることで胸郭や腹部の動きが見やすくなる。脈に関しては、熟練者のみ行い、乳児の場合は上腕動脈(腕の所)、小児の場合は頸動脈(首の所)の他、大腿動脈(股の付け根の所)でもよい

➂脈拍があって呼吸がない場合は12回から20回程度人工呼吸を繰り返す(慣れていないと自分の脈を相手の脈と勘違いしてしまい、対応が遅れる場合があるので熟練した人でなければここはとばす)。

④人工呼吸の実施


 片側で下顎を挙げて、小児の場合はもう片方でひたいと鼻を抑え、安定をさせるために肘をつき気道を確保する頭部後屈顎先挙上法で人工呼吸を行う。乳児の場合は援助者の口で乳児の鼻と口を覆うようにして空気を吹き込む。約1秒かけて、胸の上がりが見える程度の量を2回吹き込む。口対口、口対鼻人工呼吸を行うときは可能であれば感染防護具をしようすることが望ましい。

④胸骨圧迫の実施


「普段通りの呼吸」がない場合は心停止とみなして、胸骨圧迫から開始し、胸骨圧迫を30回速やかに開始する。1秒に2回のペースで行う。60秒×2回=120回/分 100回/分以上の胸骨圧迫に当てはまる。
 小児は片方で頭を押させて、下顎を挙上させて、気道を確保し、片手の掌で胸骨圧迫を行う乳児の場合は、片方で下顎を挙げて乳首と乳首の間に人差し指を置き、そこから脚側に中指と薬指を置き、人差し指を離して胸骨圧迫を行う2本指圧迫法と援助者が二人いる場合は両手で胸郭と包み込むように両手を置き、親指を交差或いは並べ、胸骨を圧迫する胸郭包み込み両母指圧迫法がある。
押す強さに関しては胸の厚さの約1/3程度に圧迫を行う

⑤胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返し続ける。


⑥AEDを持ってくる

AEDがあればAEDを使用する。まず、AEDの電源を入れる。大人のパッドしかない時は、乳児の場合、パッドは胸と背中に貼り、ショックを行う。AEDは機器により、小児用のパッドがあるもの、本体の切り替えによって小児と成人の切り替えができるものがある。小児モードや小児用パッドを使用する年齢はおおよそ6歳未満とされている。6歳以上の場合は基本的には成人と同じように右胸部と左わき腹にパッドを貼る。基本的にはそうなのだが、心臓を挟めばある程度は大丈夫なので、左胸部と右わき腹につけることや、パットを逆に付けてもショックは与えられる。

⑦心電図の解析

AEDにより心電図の解析が行われるのでその時は胸骨圧迫等を行わない(誤った解析をしてしまうため)。VF(心室細動)、VT(心室頻拍)であれば「ショックをしてください。」とアナウンスが流れるので、周りにショックをする人に触れている人がいないかを確認してショックを行う。ショック後すぐに人工呼吸と胸骨圧迫を続ける。心停止の場合もあるので、ショックを打たなくて大丈夫と言われても、人工呼吸と胸骨圧迫は続ける。

⑨2分毎に解析が行われるのでそれまで胸骨圧迫と人工呼吸を続ける。解析が行われるのでその時だけ人工呼吸と胸骨圧迫は辞める。

⑩救急隊等に引き継ぐまで、あるいは呼吸や目的のある動作が認められるまで続ける。


CPR(心肺蘇生法)の議論

今回、一般的なアルゴリズムでは胸骨圧迫が手順としては先になっているが気道確保、人工呼吸を先に書かせていただいた。CPRの開始手順、つまり CAB か ABC かである(気道確保(A)、呼吸確認と人工呼吸(B)、胸骨圧迫(C)の頭文字を取ったもの)。JRC蘇生ガイドライン2020 オンライン版では、『現在の成人の BLS では,胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせよりも, 質の高い胸骨圧迫をより強く主張している。これは,市民救助者への教育を簡単にし,バイスタンダー(その付近に居合わせた人)CPR の施行率を上げるという考えを基本にしている。しかし,小児の心停止の多くが呼吸原性である。そのため、効果的な CPR の要素としての人工呼吸の重要性を示唆しており,小児へのこのアプローチが必ずしも最適ではないことを,現在のエビデンスが示していると確信している。』と述べている。https://www.japanresuscitationcouncil.org/jrc-g2020/)

また、講義をしてくださった救急救命士の方も人工呼吸を先にしてほしいとの説明をおこなっていた。そのためあえて、人工呼吸のを手順の先に書かせて頂いた。

以上BLSについて書かせていただいた。確率的に実際のAEDを使用する確率は医療従事者を除いて、一般的な社会人の場合、一生のうちあるかないからしい。ただ、知っていて損はないかなと思う。

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