【ロシアによるウクライナ侵攻 10つのターニングポイント】5章:ハルキウ反攻作戦(2022年8月〜9月)
1. ハルキウ州でのウクライナ軍の大規模反攻作戦
2022年8月下旬から9月にかけて、ウクライナ軍は東部ハルキウ州で大規模な反攻作戦を開始した。この作戦は、ロシア軍が主力を南部のヘルソン州に集中させている隙を突いたものであり、ウクライナ軍は迅速かつ効果的に行動した。ウクライナ軍は機動戦術を駆使し、装甲部隊や機械化部隊を用いてロシア軍の防衛線を突破し、広範囲にわたる領土の奪還に成功した。
この反攻作戦により、ウクライナ軍はハルキウ州の要衝であるイジュームやクプヤンシク、バラクリヤなどの都市を短期間で解放した。これらの都市は、ロシア軍にとって補給線や通信網の重要な拠点であり、その喪失はロシア軍の東部戦線における戦略的立場を大きく揺るがせた。ウクライナ軍の成功は、ロシア軍の防衛体制が脆弱であったことや、部隊の士気低下、補給の問題などを浮き彫りにした。
2. ロシア軍の急速な撤退
ウクライナ軍の電撃的な進撃に対し、ロシア軍は急速な撤退を余儀なくされた。多くの地域でロシア軍は組織的な抵抗を行うことができず、装備や物資を放棄して逃走したとの報道もある。この撤退は、ロシア軍の指揮統制や兵站に深刻な問題があることを示唆している。また、部隊間の連携不足や情報伝達の遅れも明らかとなった。
ロシア国防省は当初、この撤退を「ドンバス地域での作戦を支援するための再配置」と説明したが、実際にはウクライナ軍の進撃に対する防御が崩壊した結果であった。この撤退により、ロシア軍はハルキウ州の大部分から排除され、東部戦線での戦略的立場が大きく後退した。
3. 国際社会のさらなる支援決定
ウクライナの反攻作戦の成功は、国際社会からのさらなる支援を呼び込む契機となった。アメリカ合衆国は追加の軍事支援パッケージを発表し、高機動ロケット砲システム「HIMARS」の弾薬や精密誘導兵器、装甲車両などの追加供与を決定した。また、ドイツやフランス、イギリスなどの欧州諸国も、先進的な防空システムや重火器の提供を拡大した。
さらに、NATO加盟国はウクライナ軍の訓練プログラムを強化し、自国領内での訓練を実施することでウクライナ軍の戦闘能力向上に寄与した。これらの支援は、ウクライナがロシア軍に対して優位性を維持し、さらなる領土の解放を進める上で重要な役割を果たした。
一方、ロシア国内では軍事的失敗に対する批判が高まり、政府や軍部に対する不満が増加した。これに対応して、ロシア政府は9月21日30万人の予備役の部分動員令を発令し、予備役の召集や新たな徴兵を開始した。しかし、この動きは国内外でさらなる反発を招き、ロシアの戦争遂行能力に疑問を投げかける結果となった。
出典
BBCニュース日本語版(2022年9月11日)「ウクライナ軍、東部で大規模な領土奪還 ロシア軍は撤退」
https://www.bbc.com/japanese/62870015CNN日本語版(2022年9月13日)「ウクライナ軍、ハルキウ州での反攻で大きな成果」
https://www.cnn.co.jp/world/35193473.htmlロイター通信(2022年9月15日)「米国、ウクライナに6億ドルの追加軍事支援を発表」
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-arms-idJPKBN2QG02Nドイツ政府公式サイト(2022年9月12日)「ドイツ、ウクライナへの防空システム供与を拡大」
https://www.bundesregierung.de/breg-de/aktuelles/deutschland-unterstuetzt-ukraine-mit-luftverteidigungssystemen-2097068フランス国防省(2022年9月18日)「ウクライナへの追加軍事支援について」
https://www.defense.gouv.fr/actualites/articles/la-france-renforce-son-soutien-militaire-l-ukraineロシア大統領府(2022年9月21日)「プーチン大統領の国民向け演説:部分的動員令について」
http://kremlin.ru/events/president/news/69390ニューヨーク・タイムズ(2022年9月22日)「ロシアの部分動員令、国内外での反発広がる」
https://www.nytimes.com/2022/09/22/world/europe/russia-mobilization-protests.html
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