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妻の短い夏休み

「かあちゃんの夏休みはいつなんだろう」
そう書かれたクレヨンしんちゃんのポスターが、先日話題になった。

前回もnoteに書いたオイシックスさんのポスターで、母の日、父の日と続く三作目だ。

しんちゃんの言う「かあちゃん」といえば、野原みさえ

アニメのシーンをいくつかみれば、毎日こどもたちを追いかけ、怒るときはげんこつをし、必死になって自転車をこぐ姿が印象的なお母さん。

いつも体当たりで子育てをしている、すごいかあちゃんだ。

きっと同じように毎日体当たりで過ごす母親は、全国に多くいると思う。

アニメに多くは出てこないが、ときどき、こどもたちを強く抱きしめるシーンをみると無条件に涙がでそうになる。

こどもの親になると、急に涙もろくなるんですよね。
不思議なことに。

たとえアニメだとしても、
こどものことを最優先に考え、
どんなに振りまわされようとも
全てが無駄になろうとも
そばにいて見守り続け、優しく
無条件の愛で包み込む。

野原みさえさんと比べるわけではないが、僕の妻も、4人のこどもの母親として毎日大変だと思う。そんな妻の「夏休み」についても考えてみたい。

■毎日伝える「ごめんね」のメッセージ

夜11時に帰ってきて、妻が買ってきてくれたオリオンビールに口をつけながら、今日は一日どんなことがあったか話をする。

夏休みの宿題がやっと全部終わったとか、オイシックスのポスターがまた話題になったとか、夕食のカレーが大好評でみんながおかわりしたら、またパパの分がなくなったとか、長男が小学生だったころの大好きな担任の先生から、久しぶりに残暑見舞いが届いたとか。

夜遅く帰っても、妻と僕の他愛のない会話が続く。

毎日こどもたちと一緒にいる妻は、
次から次へと楽しそうに話をして、
少し眠たそうにあくびをする。

こんな時間が幸せだったりする。

妻がこどもと向き合っているとき、
僕は毎日仕事に追われ向き合っている。


毎日、夜遅くまでオフィスにいると「少しでも早く切り上げれば良かった」と後悔し、疲れきって先に寝てしまった妻に「ごめんね」という毎日の繰り返し。今年も、妻に楽しい時間を作ってあげたかった夏休みは、あっという間に過ぎていった。


外に出られないほど暑い日や、雨が止まない日は、ずっと家の中でこどもたちと一緒にいる生活。

朝、昼、夜と毎回違う献立を考え、家族旅行や週末のおでかけも「どこに行っても混んでそうだね」と苦笑いする妻の言葉に甘えて、旅行もおでかけも特に予定を立てずに過ごしていた。

家族を支えるため、働く時間をお金にかえるために家を出て、家族のことを考えれば考えるほど、ついつい仕事ばかりになってしまう。

「僕が毎日働くのは、家族のためだ」

というのはとても簡単だけれど、本当に大切にしたいことが日々おろそかになっていないか、夫として父親として、最大限頑張れているのか、正直不安になることもたくさんある。


今日もまた1つ、出張の仕事が決まっていた。
夜遅くに帰ってきて、疲れて寝てしまう妻をみて、そのことがうまく言えなかった。


明日、忘れずにちゃんと言おう。
少し早起きして、みんなの朝ごはんを作ったあと、
朝が少し弱い妻を抱きしめて「おはよう」と言ってスタートできたら。

■朝は家族とむかいあう大切な時間

コーヒーを飲みながら、妻に仕事の話をした。

「来週また出張になりそうなんだよね」
「毎日働きものだねー。あんまり無理しないで」
「ごめん…。ごめんね」
「うん。大丈夫。平気だよ?」
「それにしても、夏休みって毎日大変じゃない?」
「大変だけど、夏休みじゃなくても大変だよ。毎日毎日」
「一人の時間が欲しいってこと、ない?」
「うーん。特にないかな?」

妻は、心から笑っているようにみえて、どこか諦めたような表情をした。


勘違いかもしれないが、結婚して10年経っても分からないことのほうが
多い気がする。

「仕事も家庭も、大切にして欲しいけど無理しないで」

どちらか無理をしすぎたら疲れてしまう。

我慢しすぎたら壊れてしまう。

溜めこんでしまったら爆発してしまう。

僕は、少しでも妻が休める自由な時間を作ってあげたいと思っていた。


■夫婦の働きかた、夫婦の休みかた、家族の休みかた

数日後、少しでも妻が休めるようにと、仕事のスケジュールを調整して1日空けていたら「私は一人の時間とかいらないの」と言われてしまった。

たしか、過去に何度か試したことがあった。


テレビドラマや漫画によく出てくる話で

「今日はパパが一日こどもたちといるから、ママはのんびり外で1日過ごしてきて」
                                        
という典型的なやつだ。

実際に、母親が一日好きな時間を過ごしてリフレッシュすることもあれば、一人の時間をもらっても結局何もできないパパに呼び出されたり、思った以上に一人の時間を余らせてしまい、早く家に帰りたくなる3パターン。

妻はどれにも当てはまらなかった。

「私はどれでもない」
「そうなの?」
「私がちょっとネイル行ったり、髪を切ってもらったり、ママ友と予定ある時にパパがこどもとたちと一緒にいてくれたら、それだけで満足なの。」
「そっかぁ」
「長い夏休みよりも、短い休みがたくさんあればそれでいい」
「なるほど。たしかに…」
「それよりも、私との約束を守って欲しい!」
「えっ?」

システムエンジニアだったころ、いまよりも100倍くらい忙しかったときに、妻とした約束だった。


・忙しくても必ず連絡をする
・家族を不安にさせない
・仕事相手を大切にする
・無理はしないこと
・かならず我が家に帰ってくること
・朝から喧嘩しない、不機嫌にならない
・休むときはとことん休む

仕事も家庭も大切にしようとして、僕が潰れてしまったときの約束だ。


妻は一人の時間よりも、そんなことよりも、毎日を大切にして欲しいと願っていた。僕は、忙しさのあまり、また大切なことを忘れていた。


僕は一人ではなく、いつも家族に支えられていて、家族は僕を待っているということを。ちゃんと連絡をし、無理をせず、休むときはとことん休んで欲しいということを。

妻の諦めた表情はきっと、そういうことなんだろう。
僕の表情からも何かを感じとったのか、妻は話を続けた。


「私は一人の夏休みよりも、週末にこどもたちと『どこに行こうか』なんて話をしてくれることを期待していたの。特別じゃなくてもいい。別に近場でもいい。仕事だったら帰りが遅くなるとか、早く帰れるとか、家で待っている家族のことを考えてくれている時間がないと、待ってて不安になるんだよ」


一番近くで心の支えになってくれている大切は人は、いつも期待していたんだと思う。

それでも僕は、ときどき連絡を忘れてしまうし、計画を立てるのが苦手で、妻が毎年夏に行きたがっていた沖縄旅行にもなかなか行けず、週末のおでかけもドタバタで行けなくなることが多かった。

きっと、まだできることはたくさんあったと思う。

■やっと終わる夏休み

こどもたちは「夏休み」をそれぞれ楽しみ、僕は毎日仕事に行き、妻は家事を追われるようにしつつもテキパキとごはんを作り、育児をこなしてくれた。

この夏休みが終わったら、妻の負担はかなり楽になるかも知れないが、こどもたちを毎朝見送り、ごはんを作ったり洗濯をしたり掃除をしたりする毎日の繰り返しは、きっと夏休みが終わっても変わらないことだ。

僕は少しでも家事をして仕事に行き、早く帰れるように頑張ろうと誓った。

Oisixの広告は、全国のお母さんにとって励ましのメッセージになったと思う。

毎日の献立を考えるのが楽になったり、産地や栄養を知ることができたり、手のかかる料理が楽しくなる工夫がさたくさんある。Oisixのサービスは全てにおいて「家族が素敵な時間を過ごせるように」という願いや努力が伝わってくる。


いまは静かに寝息を立てているこどもたちも、いつか親として、夏休みの大変さを想うときがくるだろうか。

かなり先のことになりそうだから、僕は妻に感謝を伝えたい。

こどもたちの楽しい夏休みをありがとう。


*Special thanks* 
Oisix オイシックス

<写真>ぱくたそ
<執筆協力>ニノ口(にのくち)

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