No.17 dビデオ 「海篇」

https://www.youtube.com/watch?v=oF6jW7cDEls

[企業・商材について]

（No.14 「出会い篇」と同様。）

定額制の動画配信サービス。毎月、一定の料金を支払えば、映画やドラマなどのコンテンツが見放題になる。

CMの放送時期である2013年8月時点、業界トップクラスのシェアを獲得している。ユーザー数は2013年3月に400万人を突破。同業他社が30万人や16万人というユーザー数の中、圧倒的な数字といえる。（会員数を公表していない同業他社がいるので「会員数トップ」と言い切ることはできないが、おそらく会員数No.1と考えられる。）

その要因は、料金とコンテンツ数。料金は、月500円～600円と、業界最安値。それにも関わらず、コンテンツ数はトップクラス。2015年の情報にはなるが、コンテンツ数は約12万。同業のU-Nextも約12万だが、同サービスの料金は月1990円。ｄビデオが優勢といえる。

以上のことを踏まえると、数多くある動画配信サービスの中でｄビデオはNo.1といえる。

[ターゲット]

（No.14 「出会い篇」と同様。）

10代以上の男女。主なターゲットは、動画配信サービスに興味を持っているがまだ登録をしていない人。また、サービスを利用していないが潜在的に「魅力的な映画やドラマが見たい」と思っている人。つまり、「改めて考えてみると、利用してみるのもアリかも」というレベルの意識の人を狙うべきだと考える。

既に他社サービスを利用している人は狙うべきターゲットではない。なぜなら、よほどのことがない限り企業を変更することは考えにくいから。他社サービスに何らかのメリットを感じたから利用しているはず。そのメリットは、「自分の見たい番組がある」「動画配信以外の付加サービスに魅力を感じている」など、人によって様々なため、心理変容（「この商品を使いたい」と思ってもらうこと）を狙うのが難しい。また、サービスに全く興味がない人に登録してもらうことも困難だと考えられる。

[企画の思考プロセス]

No.14 「出会い篇」と同様に、ターゲットに「動画配信サービスを利用したい」と思ってもらいたい。
↓
恋愛ストーリーなら、多くの人に興味を持ってもらえる。さらに、展開が予測できないストーリーにすることで、ターゲットの心を惹きつける。

[CMの仕掛けを簡潔に言うと]

ＣＭそのものを一つの映像コンテンツとし、ターゲットの興味を引く「展開が予測できない恋愛ストーリー」を見せることで、「動画配信サービスを利用したい」と思ってもらう。

[演出のポイント]

■小松さんの「すればいいじゃん」というセリフの後に、カットが激しく入れ替わる。

小松さんが「（キスを）すればいいじゃん。」と言って走り出すのは奇怪な行動なので、「次はどうなるんだろう」と受け手に思わせる。さらに、そのタイミングでカットが激しく入れ替わるので、受け手のドキドキしている気持ちに拍車を掛ける。

■小松さんが男子学生に向かって「好き。」と言う直前にBGMが消える。

友人のいる前で、友人の好きな人に向かって「好き」と言うことは、通常ありえない。だからこそ、受け手を驚かせる。加えて、直前にBGMが消えるので「好き」というセリフが目立つ。驚く気持ちを最大化させる工夫がされていて、受け手の興味を惹く演出になっている。

■小松さんが憎めないキャラクターになっている。

小松さんは、友人の好きな人にアプローチをかけるキャラクターなので、受け手に「人として問題がある」と受け取られかねない。つまり、受け手に嫌われる危険がある。「嫌なキャラクターが出る」と、ネガティブなイメージを持たれてはならない。その点、小松さんが「どこか憎めない子」として演出されているように感じる。

具体的には、小松さんが「ごめん。好きになっちゃった。」と宣言するカット。現実で考えると、友人の恋人を奪う人は隠れてコソコソと行動する。対して、小松さん演じる少女は堂々と笑顔で石井さんに宣言する。計算高い感じがなく、「自分の欲に真っ直ぐな女の子」という印象を受ける。どこか憎めないキャラクターとして表現されていて、CM自体が嫌われにくいように配慮されていると考える。

[自分がクリエイターだったら]

■ラストカットのコピーを変える。

No.14「出会い篇」と同様の理由で、「その一本が、二人を近づける。」のコピーを変更したい。次の「駅篇」で最後になる。連続ドラマでも最終回は注目を集めやすいので、次で最後になることを匂わせたい。加えて、今回受け手に感じさせたのは「展開が予測できない面白さ」。それを言語化して伝えることで、より実感してもらいたい。そのため、「そいつは、最後まで、読めないヤツだった。」というコピーに変えたい。