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時間栄養学という考え方

時間栄養学とは、生体リズムを食によってコントロールしようという考え方を言う。
具体的には、①食品の機能性を利用した睡眠改善、②生体リズムを利用した食リズムの改善によって、健康機能の向上を目指すことをいう。

人のからだには、日内リズム(サーカディアンリズム)という24時間15分前後の時計があるこれによって、睡眠覚醒・体温調整・代謝機能・免疫機能・栄養の効率的な消化吸収をおこなっている。

生体を構成する全ての細胞には、時計機能が備わっている。夜行性であるマウスは夜に傷口が治る機能が早いし、人は昼間の火傷は夜に比べて60%早く治癒するという実験結果が出ている。

また、午前中のワクチン接種は、午後より抗体反応を高めると言われている。獲得免疫に関係するT細胞、B細胞はどちらも時計遺伝子を発現する。T細胞の分化には、時計遺伝子が重要とされている。午前中には交感神経が活発になり、リンパ節にT細胞、B細胞が高濃度に蓄積しているタイミングでワクチンを与えたので、効果が強く出たと考えられている。(不眠症や睡眠略奪の状態ではワクチンの効果は出にくい。免疫は体内時計の支配にある睡眠の影響を受けやすいと言われている)

体内時計が日常生活に密接に関連している例を、下記みてみよう。

①時差の解消


海外旅行に行く際には、機内で現地時間の時計に合わせるようにして睡眠をとり、現地時間の朝にしっかり朝食を摂り、体内時計を前に進めるようにすることはよく知られている。
早朝の光を浴びることで、体内時計の位相を前進させて、体内時計を現地の時間に調整するのがよいとされている。これは、光の情報が視神経から中枢時計(視交叉上核)に届くと、神経伝達物質であるグルタミン酸の受容を介して、日の出前の光は体内時計を前に動かし、日没後の光は体内時計を後ろに動かすためだ。 

朝食を決まった時間に摂らないと、胃の蠕動運動が起こらず、食欲がわかなくなり、ホルモンバランスの乱れが生じる。

②体内時計とホルモン


AM0:00-3:00  松果体からメラトニンが分泌される。しっかり夜間に睡眠をとらないと成長ホルモンが分泌されない
AM5:00-8:00  副腎皮質ホルモンは早朝に分泌が高まる。朝にグレリンも多く分泌される
PM5:00-8:00  肝臓にてコレステロールが合成されやすい時間帯

➂アレルギー(lgE)のモーニングアタック


アレルギー反応にかかわるlgEのマスト細胞への働きかけには日内リズムがあり、朝にヒスタミンの分泌が盛んになる。明け方はアレルギー疾患の症状が出やすいとされる。

④食事のタイミングと高血圧



朝食:朝食時のタンパク質摂取による筋肉増加は、分岐鎖アミノ酸(筋肉の合成を高める)がかかわっている。筋肉量増加は体内時計を介して引き起こされるため、体内時計の正常機能は必須と言える。
昼食:野菜をしっかり摂ること。ナトリウムとカリウムのバランスを考慮。ナトリウムが過剰な場合、果物や野菜に多く含まれるカリウムがナトリウムを追い出してくれる。
夕食:脂質を多く摂ることを控える。昼食の野菜不足と夕食の高脂質な食事は高血圧と関連している。

遅い時刻の夕食は、なぜ血糖値を上昇させるかご存じだろうか。A①夕食が遅くなり空腹状態が続くと、血中の遊離脂肪酸が上昇し、インスリン抵抗性が増大するため。A②食事誘発散性熱(DIT)は、昼と比べ夜は50%低下するため。

また、食事を分割すると、1回の食事量・糖質量が減少し、食後の血糖上昇を抑えることができる。分割することで、1回目の食事で膵臓のβ細胞の応答が高められ、次の食事の際にインスリンが分泌されやすくなる。

⑤セカンドミール効果

最初にとる食事が、次にとる食事後の血糖値に大きな影響を及ぼすこと。例:1食目に食物繊維をしっかりとることで、2食目の後の食後高血糖を抑える事ができる。

1回の朝食抜きは、昼食後の高血糖・インスリン反応障害を引き起こす。

糖尿病・耐糖能があるなら、朝食をしっかり食べて、かつ夕食を早めに食べることを検討されたい。(アーリーダイニング)


 以上みてきたように、人の身体は、昼間がエネルギー代謝が高い。夜勤シフトの人が体調を崩しやすいのは、体内リズムに反した活動を行っていることだ。

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