【本紹介】Brain Driven ①モチベーションの高め方
やる気が起きない、続かない。そんな悩みを持つ人は多いだろう。やらなければならないとわかっているのに手がつかず、後回しになってしまい、いつの間にか継続できなくなっている。そんな自分を変えたいと思っているが、変え方がわからない。そんな人には、本書「Brain Driven」(青砥瑞人著)がオススメだ。巷に溢れているHow to本ではなく、脳の専門家である著者が、脳神経科学に基づいた知見を私たちに共有してくれる。やる気が起きない、続かないその理由を、脳科学の視点からのアプローチで読み解いてみよう。
モチベーションの定義:「脳の高次機能または学習に関わる行動を直接的に誘引する、体内及び脳内の変化を認識した状態」
モチベーションには、トップダウン型とボトムアップ型の2種類がある。 五段階説の下部の機能ほどボトムアップ的(無意識に近い状態)で誘発され、上部の機能ほどトップダウン的(意識的)に誘引される。
ボトムアップ型が、優先されやすい。
このボトムアップ型のモチベーションを制御しつつ、トップダウン型のモチベーションに基づく情報処理を実行に導くのが「自制心」である。先ほども述べたように、ボトムアップのモチベーションのほうが強く影響しやすいからこそ、自制心を持つことが意図したモチベーションを持つうえで重要なのである。例: 腹が減ったという状態で、あと15分だけと決めて勉強する。集中して取り組める。(空腹状態のドーパミン性を前頭前皮質に作用させる)
・自分のやる気スイッチを見つける
実際に見聞きしたり、脳内でそのお気に入りの言葉をつぶやいたり、映像を頭に思い描いたりすることで、あなたのモチベーションは高まっていく。
本気で心を動かされ、それらのシーンに強い想いを持っている方なら、間違いなくモチベーションが高まる効果がある。なぜなら、本人にとってやる気が引き出されているのなら、誰がなんと言おうと、それがどこからの刺激であろうと、本人のドーパミンなどを誘導し転用できる可能性がある
自分の感覚で、自己が高まる音楽を聴く
自身の独特な身体的動作を取り入れると、モチベーターの効果が高まる(例イチロー、五郎丸のルーティン身体的動作)。 複雑過ぎず時間をかけずに出来るもの(例: 胸に手を当てて目を閉じて5秒数える)。
神経科学の大原則に、「Neurons that fire together wire together」という言葉がある。"同時発火された神経細胞は結びつく"という意味だ。
モチベーショントリガーの獲得においても、モチベータ、高揚感、作法の脳内での同時発火によるワイヤリングが重要であり、そのことを日々繰り返す必要がある。そうすることで、作法がモチベータの役割を担い、高揚感を引き出してくれるのである。ポイントは、高揚感を意識して作法を繰り返すこと。
・モチベーションに影響を与える神経伝達物質(脳の中で合成される化学物質)
①ドーパミンは、基本的に「SEEK(探し求める)」するための情動と説明されることが多い。つまり、シグナルや情報に向かわせるときに放出される。
②ノルアドレナリンは「Fight or Flight(闘争または逃走)」に役割を果たす交感神経と連動して放出されることが多い。どちらも行動を誘引する役割を果たす。
戦闘態勢的なノルアドレナリンの作用により、情報に意識を向けることは大切だ。そして同時にドーパミンによってワクワクと意図したものを求める心(脳)の状態にすることで、余計な情報に注意を向かわせないようにすることも大切。
ドーパミンが発露すると「βエンドルフィン」が作られやすくなる。このβエンドルフィンは、脳内アヘンと呼ばれる快感物質だ。一方のノルアドレナリンは、戦うときなどに出る「コルチゾール」と呼ばれるストレスホルモンを導きやすい。つまり、何か行動を誘発する要因が出てきたときには、 ① 「もっと行動したい」という快感を生むβエンドルフィン系 ② 「もうやめたい」というストレスを感じるコルチゾール系 の二つが拮抗的に働き始める。このバランスが、行動を起こしたときに長続きするか否かを決める指標の一つになっている。
ドーパミンは行動を開始(イニシエーション)する情動としても知られる。一旦行動を誘引し、刺激やシグナルを手に入れると、ドーパミンは出にくくなる。刺激を発見して求める(行動する)前、つまり探している(SEEK)段階でドーパミンは出やすくなる。ドーパミンによって情報や学びを得ると、それに伴う快感の発露としてβエンドルフィンが合成される。心地よさを脳に表現し、情動反応記憶として定着させ、次にその情報や近似したものが現れたとき、反応速度を高めるように作用する。
・続ける力を身につけるには?
失敗や未知の事項に遭遇した際に、プラスに感じられるか。
失敗の認識は、成長の差分・成長へのポテンシャルに目を向けられているという証。失敗の原因を素直に認識し、成長への栄養素と捉えられる時、ネガティブな情動をポジティブな感情に書き換えられる認知的柔軟性を身につければ、ものごとを継続でき成長していく人になれる。
心理的安全性をつくる。目標やゴールを設定する。それが曖昧だと不安を感じやすく、前進しにくい。曖昧性の回避は、心理的に脳を安全な状態に持っていきやすい。目標の設定は、ドーパミンの誘発に繋がり、前向きなモチベーションを保つ助けになる。
好奇心をもったり、何かやってみたいと思う時はドーパミンが出ている。
ドーパミンは、記憶に関連する脳部位の海馬と扁桃体にも照射される。
海馬はある出来事のエピソードや事実といった「エピソード記憶」を保存する。海馬が記憶に関連する脳部位ということはご存じの方も多いと思う。 一方、人間の親指の爪ぐらいの大きさの扁桃体も、記憶に関連する脳部位だ。扁桃体は、出来事があったときの「感情的な要素の記憶」を保存する。この二つの脳部位は解剖学的につながっていて、密接な関係を持つ。ある出来事を思い出すと、それに伴う感情も引き出される。この仕組みについては「海馬が上流、扁桃体が下流」という言い方をされることが多い。ある出来事を思い出したあとに、そのときの感情が蘇ってくるのは、あなたの感覚とも一致するのではないだろうか。
ドーパミンが放出される「求めている」状態とは、ある情報に興味関心があるために、脳が「知ろう、学習させよう」と反応している状態である。ドーパミンが海馬や扁桃体に照射されると、神経細胞同士が強い結びつき(長期増強)を形成するように働く。つまり、記憶に残りやすいということだ。だからこそ、我々が何かを学ぶときには、まず興味関心を持つことが大切であるし、それが脳が学びをする状態なのである。そして、誰かに何かを学んでもらうときに、「いかに興味関心を持ってもらうのか」が相手の学びに大きな影響を与えることは、多くの人が経験していることだろう。
・直感を大切に
直感は脳がこれまでの経験から学習してきた帰結としての反応。直感力を高める学習をすることによって、我々の意思決定能力はより迅速に高められる。そのためには普段から自己の感覚や感情に目を向ける必要がある。自己の行動や意思決定の際にどのような感覚があったのか、どのように感じたのかを認識し、その行動や意思決定による最終的な結果も把握しておく必要がある。意思決定や行動のプロセスにおける脳の状態と結果を関連付けた学習が、直感力を高めてくれる。
好きなものや大切にしていること、価値として認めているものなどを頭の中で想起している状態は重要な内側モチベーターになり得る。
1日のスケジュールの中にいくつかの自分のモチベーターを散りばめてみよう
自己と向き合うことがモチベーションにおいて大切なのは、あなたのモチベーションを高める要因のヒントは、外側にだけあるのではなく、あなたの内側、脳に刻み込まれた記憶にあるからだ。自己の高まりを感じさせる瞬間への気づき、そんな体験の記憶の検索、あなたの中に眠るそれらの情報を引き出すことで、ますます自分のもちβに気づきやすくなり、あなたの脳をモチベーションが高まりやすい状態に導いてくれるだろう。
希望とは、「基本的にどうなるかわからないことに対して前を向かせる脳の機能。」
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