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話を嚙み合わせる技術 (横山信弘著)

 はじめに元も子もない本音を書いてしまうと、世の中にはどうしようもない「話がかみ合わない人」がいます。

そんな人には、もしかすると本書に書いてあるあらゆる事を実践しても、恐らく何の効果もないかもしれません。正直あきらめた方が良さそうという場合も多々あるでしょう。

しかし、だからと言って、あなた自身がのあなた自身の貴重な人生の時間をその相手に使っている、使わざるを得ないという事実は変わるものではなく、何もしなくてはいいいということにはなりません。

あなた自身が、話が嚙合わない人とのやり取りから「何か」を学び、次回から生かす事が出来れば、そのどうしようもない人との出会いも少しは意味のあるものになるのですから。

本書は、そんな方にとって、少しでも前向きに歩むために、役立つ1冊です。


 本書では、コミュニケーションの種類として、感情的コミュニケーションと論理的コミュニケーションが紹介されており、顧客、取引先、職場の人といった、特に仕事におけるコミュニケーションにおいて必要と思われる、
「論理的コミュニケーション」の方に多くのページが割かれています。


私が本書から学びがあった点は、下記です。


1. 話がかみ合わない理由を明らかにする。


話が噛み合わない人には、相手を「外国人」だと思って接することが重要になってきます。英会話を例にして例えると、英語を勉強するうえで大切なのは、「語彙」「リスニング」「リーディング」「文法」です。


・語彙

使っている言葉の定義は、双方でずれがないか。定義が曖昧な言葉、解釈の幅が広い単語を使っていないか。


・リスニング、リーディング

「自分(相手)が話していることを、正しく認知しているか?」


<相手の話に、黙って耳を傾ける(hear)>

相手が話したがっている場合、こちらの言う事を全く聞こうとしない場合に有効。
相手が話している最中に口を挟まない、適度に相槌を打つなど聞いている事を示す事も重要。
感情的コミュニケーションの場合は、こちらが有効になる場合も多い。相手は、別にあなたの意見を求めているわけではない場合もある事に注意しよう。


<相手の話、要望の論点を掴む(listen)>

論理的コミュニケーションではこちらが重要。
感度を高め、相手の話のどこが論点なのか、何を要求しているのかに正しく注意を払う。

つまり相手の要求は何なのだろうか、整理するといくつに分けられるのだろうか、
自分の頭で考える事が要求される。


<相手の要求やニーズを整理するために質問を重ねる(ask)>

Hear,listenを経て、さらに一段階上のステージがask。

Hearの段階で相手の話を正確に、時には根気強く耳を傾け、
Listenの段階を経て、自分自身が相手の要求を項目ごとに整理出来るようになって初めて、
相手の要求やニーズを整理するための効果的な質問を投げかける事が出来る。

多くを期待できない相手かもしれないが、
質問を重ねる事で、相手の頭が整理される事もあるだろう。(そんなあなたは、相手に恵まれていて、とてもラッキーですね)


タイミングを外す事なく、効果的な質問を重ねないと、うまくいかない。

リーディングは、上記リスニングについて、書かれている事で応用すればよいです。「書いてある(書かれている)ことを間違えずに知覚しているか?」です。資料のまとめ方を後述していますので、このまま読み進めてください。



2. 話を嚙合わせるための話の伝え方


1. が分かったうえで、あなた自身には何が出来るのでしょうか。対策、具体的な行動案を書いていきましょう。


特に、相手がこちらの話を聞かない「早とちりタイプ」の場合には、
あなたの話を、効果的に相手に伝えなくてはなりません

ホールパート法(whole part)とは、最初に話の全体像(WHOLE)を相手に伝え、それから話の部分(PART)を説明する話し方のことです。

まず話の幹(全体像)を伝え(例:会社の売上を2倍にしたい)、
話の枝を伝え(例:幹である売上達成のために、新規顧客の獲得、顧客単価を上げる、商品数を増やす、製品の認知度を上げる)
話の葉となる、枝をつくるための具体的な行動案をあげる。(例:新規顧客の獲得のために、営業マンを増やす、新規営業にかける時間を増やす等)

幹→枝→葉の順で伝える事が大切です。

① 「幹」↓②「枝1」「枝2」「枝3」↓③「枝1+葉1」「枝2+葉2」「枝3+葉3」

の順序の具体例が、本書で紹介されています。


「「枝」や「葉」の部分で必要となる数値的根拠を「資料」などで用意しておく」
「途中で相手にレスポンスされないよう、最後まで駆け抜けるように話す」

などのテクニックも、時と場合によって使い分けられるようになると、話は噛み合いやすくなるでしょう。


また、話が噛み合わないと感じる場合は、往々にして「相手と前提知識が噛みあっていない」場合が見受けられます。

これをいかに見つけ出すか。

何らかの先入観や思い込みによって、論理コミュニケーションにおける重要なパーツが省略されている場合が多いです。

・「理由、論拠」が省略されている。(例:私は今の当社の製品はxxが欠けていると思うので、市場には受け入れられていないのだと思う。)
・「比較対象」が省略されている。(例:xxと比べて、私は任されている仕事量が3割は多いですので、他の方に依頼して頂けませんか)
・「結論」が省略されている。(例:事後報告がないんだよね。。。。(事後報告がないと、再度あなたにあの件はどうなっている?と確認しなくてはならず、コミュニケーションのコストが上がってしまう。
必ず毎日依頼事項に対して、就業後には報告してほしいんだ、出来るかい?))


前提知識を丁寧に伝えることを意識して、
論点がずれそうになったら、その都度議論を止めて相手に伝える。

これだけでも、話のズレは避けられます。

このくらいで話は通じるはずだ、とどうしても相手に期待してしまうものだけれでも、
言葉に出して相手に伝えないと、相手には伝わらないものです。


相手の思い込みを外すためには、
自身の意見が、客観的な事実に基づいたものであるかの確認が必要になります。
事実とあなたが思っていても、
あなた自身の主観が、多分に含まれた「あなた自身の思い込み」になっていないかどうかは、気をつけた方がいいでしょう。


「事実」とは、調査や実験によって客観的に確認できることであり、「意見」とは個人的な見解や推論のことで、
その人の経験によって左右されることが多いと言えます。


・会話をゆがませないための、資料づくりの注意点


必要な項目だけを入れた資料にする
意見ではなく、事実を載せる(議論を自分に優位な方向に持っていきたいときには、自分の意見を忍び込ませる事もテクニックとして重要。その場合には自分の意見を補足するための数値や事実を列挙するようにしよう)


話合いの進行については、相手に対して、「この資料に沿って、本日は進めます」と冒頭に伝えて、
話合いの枠組みを強制的に作ってしまう事、主導権を相手に渡さない事が重要だ。


会話の中で決まったことを、印刷した配布資料に書き込み、またはホワイトボードに相手の目の前で書き込み、
形に残す、会議が終わったら、結論を相手にすぐにメールすることで、勝手な解釈を防ぐことも有益です。


・話を噛み合わせるには、柔軟さも必要。

根気よく話し合うことでわかり合えることはあるでしょう。しかし、相手が感情的になっていたりする場合は、冷却期間も必要です。川の流れが激しい場合は、「いったん岸に上がり、川の流れが落ち着くまで待つ」というのも手なのです。「柔軟」の人はそのことをよく心得ています。たとえ話が噛み合わなくなっても、すぐに噛み合わせようとせず、主導権を握りながら、いったん話をそらします。そして時間をかけて根回しをしたり、別の視点で考えてもらったりしながら、じっくりと噛み合わせていくのです。

対面ではなく、メールで長々と自分の主張を書く人は、相手の意見対面ではなく、メールで長々と自分の主張を書く人は、相手の意見を聞く気がない、話し合うつもりがないと受け止めてもいいかもしれません。


本書を参考にされて、是非有意義なコミュニケーションが、読者のみなさまの人生の中で増えていくことを願っています。


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