ストレスへの対処法を知る①

 生きていれば、他人との接触は完全には避けられない。他人との接触があれば、自分との違いを感じる。相手への期待が生まれ、齟齬が生じる。生きて死ぬまで、ストレスとの賢い付き合える方を知っているかどうかはとても重要だ。相手はいつかいなくなるが、自分との付き合いは一生続く。「自分はどうしたら、自分をうまくコントロールできるか。」これにエネルギーを割こう。「相手をいかにして変えよう」という視点は、往々にして不毛に終わることも多い。

この分野の第一人者が行動心理学者のジム・レーヤー氏。著書メンタルタフネスは世界的な大ヒットとなった。氏は、精神的にタフな人達が効果的にストレスに対処するために身につけてきた思考と行動パターンをテーマに研究を続けてきた。特にテニスプレーヤーのそれを研究してきた。先人の知恵を拝借しよう。

・トップクラスの選手とそうでない選手は、各ポイント間に全く違う事を考え、行動してる。2時間の試合の中で、実際のプレー時間は20分程度。テニスの試合のうち、約80%が、得点が入ってから次のプレーに移るまでの「ポイント間の時間」である。1セットを取るまでのこのポイント間の時間(約25秒間)の過ごし方が極めて大事になる。

・トップクラスの選手達は、この時間を使って、試合における優位性を確実に獲得する方法ー何よりもまず、その前のポイントのストレスから回復する方法を身につけていた。このわずかな時間帯で、彼らは次のポイントを取るための最高の精神状態に持っていく術を身につけていたのだ。ポイント間の歩き方、頭/肩の位置、呼吸の仕方、ラケットの持ち方、思考や感情のコントロールの仕方。トップクラスの選手達には、これらに類似性が見られた。

・具体的には、刺激をコントロールし、気を散らさないためにラケットのガットを見て目を休め、呼吸の深さとリズムを整え、25秒間に行動と思考をコントロールする。これによって彼らは、その前のポイントのストレスに対処できるようになる。彼らが競り合いに勝てるのは、休息と回復の機会を最大限に利用しているためであるのは明らかだ。短いインターバルの間に最大の効果を獲得する能力が、競技を有利に導き、それが勝利のために不可欠な役割を果たす。

・何故、学ぶのか?

感情は私たちの人生を支配する。私たちが下す決断のほとんどは感情的なものだ。私たちは感情的に決断を下した後で、衝撃的な決断や行動を正当化するための論理的理由を考えようとする。これは特に対人関係についてよく当てはまる。
人生、法、現実は感情を司るルールについて、全く考慮に入れていない。私たちは感情による衝動の結果が好ましくなければ苦しみ、目標通りであれば恩恵を得る。このように、感情は私たちの人生を支配している。だが、感情そのものは思考しないし、推論をしないし、代案を比較考察しない。事実、そんなことはできない。

 弱くなると、気持ちが萎える。前向きになれなくなる。本来前向きな性格の人/真面目な性格の人(いや、そういう人だからこそ)、問題を深刻に、かつ自分に落ち度があるのではないかと悪循環に嵌っていく。人間は環境の生き物だ。良い人達に囲まれて暮らしたい。しかし、現実はそうはいかない。イヤなヤツらとも、沢山つきあっていかないといけない。生きやすくなるヒントを得よう。

・"自分の感じる不快さは、注意を払うべき警告のシグナル"

・弱くなるとは、肉体的ないし精神的ストレスに対して柔軟性がなく、反応が鈍く、活気がなく、回復力がなくなることだ。

・チャレンジは通常より大きなストレスに耐え、通常の限界を超える機会である。チャレンジを一貫したプログラムに取り入れる事によって、順応性と強靭さを高められる。但し、オーバートレーニングは良くない。

・精神的にタフになる過程は、肉体的なそれと同様に、測定することが可能。

・いかに本来の自分を、(出来るなら時間をかけずに)取り戻せるか?気持ちを切り替えて、前向きでベストな状態の自分を多く持てるか?

・精神的な回復のサイン(精神的に安堵感を感じる、冷静さが増す、精神的にスローダウンしたという感覚が増大する、精神の視野が広がる、空想/創造性が増加する、客観性が増大する、イメージが増大する)を見つける。

・今の自分に必要なのは、active restかpassive restか?

・強い感情的ストレスからの回復

①active rest(例:肉体的エクササイズ)を行う。一時的な感情の回復をもたらす。②自分の感情を口に出す、もしくは誰かに話す。(但し、競技や仕事の合間にネガティブな感情や気持ちを表現する事は通常パフォーマンスの低下を招く)③気持ちを紙の上に書き記す。一時的な感情の回復につながる。個人的に行えるので、リスクがない方法だ。④脳の活動を和らげる精神的活動か、肉体的活動を行う(瞑想、深呼吸、音楽鑑賞と言う受動的休息活動や、ヨガ、散歩、太極拳、軽いサイクリング活動等の活動的休息活動)。 ⑤ユーモアと笑いを取り入れる。笑いは感情のストレスホルモンの流れを直ぐに減らす。笑いは回復に有効な要素である。

・感情的に健康な人とは、意識からストレス要因を遮断するより、もっと直接的な回復の形(話したり書いたりすること)で、感情的ストレスから解放される方法を見つけ出した人だ。脳に情報が意識的に入らないようにすればするほど、ストレスの多い状態では、感情の柔軟性と反応力が鈍くなる。

・ストレスが高い間は、1日を通して、できるだけ多くの回復のウェーブを作るようにする。日常の楽しさの感度をチェックする。

・楽しむ事は、本質的には"心のあり方"であり、うまくコントロールできる。

・ストレスが高い時は、回復を欲する身体の自然な反応だけに頼ってはいけない。過度のストレスの元で、身体は、自然に感情的インパクトを取り除こうとする。身体の回復力の向上のための必要性を感じると感じまいと、規則正しい生活に従って、食べ、飲み、眠り、運動し、休息をとることを、心がけなければならない。辛い試練の時に最も頼りになるのは、確立された日常的なルーティンである。

続編へ続く。

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