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【本紹介】インターネットの次にくるもの(Kevin Kelly著)

本書の原著名は、Inevitable 、著者はWIRED創業編集長であるKevin Kelly氏。

今後30年、テクノロジーの進歩と共に我々の社会はどう変わっていくのか。平易な言葉でわかりやすく、『12の動詞』の章から成り立っています。


1️⃣becoming
テクノロジーは人間性を加速する。実は人間にはこんなセンサー・こんな感覚が備わっていたというものを増長させる。

常に流れているという事は、単に物事が変化していく以上の意味を持つ。つまり流れの原動力であるプロセスの方が、そこから生み出される結果(プロダクト)より重要。過去100年で最高の発明は個別のガジェット・道具ではなく、科学的なプロセスそのものだ。

一度、科学的な方法論が発明されれば、それなしでは不可能だった何千もの素晴らしいものをすぐに作れるようになる。我々の新しい時代には『プロセスがプロダクトを凌駕する』
プロセスへ向かうこうした変化によって、我々が作るすべてのものは絶え間ない変化を運命づけられる。

不満足こそ、我々の創造性や成長のきっかけとなる。心に渇望感を持たない限り、自分や集団の自我を拡張することができない。もっと良い未来を目指すならこうした居心地の悪さを受け入れて対処しなければならない。進歩への道は、平凡で退屈な日々の繰り返しなのだ。

GAFAユーザーがサービスを価値あるものにする。Googleは月900億回の検索。ユーザーがコンテンツを作る事は、劇的に広まった。

商用のウェブは40%に過ぎない。自ら作り、より深く関わりたいという情熱は、数十年前から続く大きな力だったにもかかわらず、顧みられる事はなかった。参加したいという衝動は経済をひっくり返した。コラボレーションは着実に世の中の主流となっていった。

アプリ/動画/ゲームの中の世界を検索できるようになり、ハイパーリンクはすべてのデジタル情報をつなぐようになるだろう。(例:娘が学校に受かったその時の映像をスマートフォンですぐに呼び出せる。製品に埋め込まれた無料同然のセンサーが全てをウェブに繋げて、データを結びつける)
webは、朝起きた瞬間からあなたの意図を読み取ろうとする。2050年に、webは常時存在している会話の一種になるだろう。

2️⃣Cognifying

『○○にAIをつける』があらゆる分野で起こっている。今は医療分野が顕著。AI関連322のスタートアップに20億ドルが2014年時点で投入された。診断にAIが使われ、病名の特定精度が上がり、子供が大人になる頃には病名は家でも正確にわかるようになるかもしれない。

AIの出現は、さらに人間のチェスプレイヤーをも強くした。もしAIが人間を助けて、より優れたチェスプレイヤーにしてくれるなら、同じようにより優れたパイロット/医師/判事/教師が出てきてもおかしくない。
今は、商用で使われるAIはある目的に特化したものだが、進化していく。この10年で直接・間接を問わず、あなたが使うAIの99%は超有能な専門家のようなものになるだろう。

AIに"自意識"が生じないように、人間とは違う発想をするように、違う思考をするように設計する必要がある。

誰もがパーソナルロボットを使えるようになるだろうが、ただ持っているだけでは成功をつかめない。それよりも『ロボットと一緒に働くプロセスを最適化できたもの』が成功を掴み取るだろう。生産拠点の配置を考えるには、地理的な労働賃金の差よりも『人間の専門性の違い』を考慮することが重要になる。

人間とロボットの共生環境を考える。我々人間の役割は『ロボットのために仕事を作り続けること』になる。そしてこの作業には決して終わりがないだろう。あなたの将来の給料は『ロボットといかに協調して働けるか』にかかってる。

3️⃣flowing
期待される時間軸があまりに早く変わり、人々は待てなくなった。「その日に出来ないなら、もう結構。」同時性が品質より優先される。
(DVDでなく画質悪くてもNetflixでいい)

コピーできないものに価値がある。例えば、信用や経験。信用は、時間をかけて得るものであり、偽ることができない。リアルな経験、リッチな経験に人は金をより支払う。

人々は無料でも手に入るものになぜお金を払うのか。『本当は何を買っているのか』これを考えるのはよい思考訓練。

生成的なもの、これは無料より価値あり。それは、①即時性②パーソナライズ③解釈④信頼性⑤アクセス可能性⑥実体化⑦支援⑧発見可能性

4️⃣Screening

読書空間に入り込んでいると、頭がスクリーンで読んでいる時とは違う働きをするという。神経学の研究によれば、読むことを学ぶことで、脳の回路が変化する。読書をしている状態では、人をかき集めようとせわしなく行き来するのとは違い、人は別の空間に運ばれ、集中して没入する。

これから30年の間に、学者もファンも、コンピューターのアルゴリズムを使うことで、世界中の本を1つのネットワーク化した文献に積み上げていくことになる。

読者は図書館において、あるアイディアのソーシャルグラフや、ある概念の時間的経過や、ある考察の影響の関連性マップなどを生み出す事ができる。

我々はどんな仕事やアイディアも、孤立して存在しているのではないことを理解し、古今東西の互いに関係するものがより合わさったエコシステムこそが正しく美しいものだと知る。

未来の参考書は、買って読んだ後に、個々のページはその一部を操作できることが売りになる。例えば自分だけの料理本の本棚を作ったり、様々な雑誌からの切り抜きを異なる参照先から他者のコメント付で集めて作れる。

ある特定の話題に関する本をまとめ、記事や本の各ページがどこでもあるようになり、入替えもできるようになり、移動できるようになる。優れたコレクションをキュレーションするユーザは評判になり、それで商売ができるようになる。

スクリーンは薄く安くなり、メガネ👓を通して現実の上に情報のレイヤーを付加できるようになる。そのものの場所の基本的な説明が、テキストのレイヤーとして重なって見える。スクリーンはただの文章だけでなくすべてのものを読むためのものになる。(食べ物の原産地,成分)

5️⃣Accessing
短期利用が標準になっていく。

トレンド
①非物質化(飲料缶の軽量化,software eating world.)"kindleはプロダクトでなく、読むものへのアクセスを売るサービス"とJ.ベゾスは言った。所有権に伴う責任,コントロール、排他性は足枷となる。
②リアルタイムのon demand
③分散化

6️⃣sharing
生産手段を持った大衆が共通の目標に向かって働き、プロダクトを共有し、自分の労働を賃金の対価なく提供し、成果物をただで享受していることを、新しい社会主義と呼ぶのに不自然な点はない。彼らが共通して使う動詞がshareするだ。Twitter/Facebookで流通しているコンテンツは無給の投稿者たち、つまりあなたのことだ、によって作られる。1つの大規模な目標に向かって一人一人が動くと、その結果は集団レベルで現れてくる。

10億の人々が、無償のコンテンツ作りに毎日多くの時間を費やしている。彼らは身の回りの出来事をレポートし、話をかいつまんで意見を加え、図版を作りジョークをひねり出し、かっこいい写真を投稿し映像まで作り出す。その対価は、14億(FBユーザー数)という確かな個人のつながりから生ずるコミニケーションや関係性の価値によって支払われている。その共同体に帰属することが報酬なのだ。

デジタル時代は非ベストセラーの時代でもある。誰も見向きもされなかった,ニッチなものにも同好者のattentionが寄せられる。

群衆によるshareを利用すれば、想像以上の事ができる。我々はその探求を始めたばかり。GEはQuirkyというサービスでイノベーションすら群衆から集めており、クラウドソーシング方式で集めたアイデアから400以上の新製品を出してる。

未来の仕事をエンジニアを例に。勤務体系は変わり、一つの会社のみに在籍する人は減り、1万もの異なる共同組合から自分が貢献できるものを選べる社会になる。最高の人々と仕事ができることを心から楽しめるような仕事を極力選ぶようにしている。レベルの高い共同組合に自分の仕事を受け入れてもらうのはハードルが高いが、達成感を感じられる。何年にもわたっていくつものプロジェクトに活発に関わり、複数の自動払いを受けているような人々は、このsharing economyの世界では誰もが求める人材となる。

7️⃣Filtering
テクノロジーでcommodityの価値は漸近線近似で、無料に近づいていく。

どんな基準でfilteringしてるかFB,amazon,政府は教えてくれない。リコメンドプログラムは最適化されていき続けるが、その最適化の意味は、サイト滞在時間を最大化する事かもしれない。

人間の目から見れば、フィルターはコンテンツに注目している。逆にコンテンツ側から見ると、フィルターは人間のアテンションに注目している。コンテンツの量が広がれば広がるほど、注意を向ける先はますます限られてくる。

ハーバードサイモン氏の言葉:
『情報に富んだ世界では、情報の潤沢さは何か他のものの結合を意味する。その希少性が何であれ、それは情報が消費することによって生じる。そして情報が消費するものとは明白で、それは情報の受け手のアテンションだ。つまり情報の潤沢さは、アテンションの貧困を生み出すことになる』

つまり、"潤沢な世界において、唯一の希少性は人間のアテンションにある"って事。

人間の払えるattentionは1人1日24時間と有限であり、この最後の希少性が向けられるところにお金が流れる。情報が欲するのは人間のattention。

これから20年は、もっと質の高いattentionを大規模に増やしていくためのfiltering techを利用する事がゴールであり、チャンス。
現在のネットは、品質の低いcommodity化したattentionによって経済のほとんどが支えられている。commodity化したattentionは、風や海の潮のようなもの。拡散したその力を捕まえるには大きな道具が必要。Google, fBはcommodity化したattentionをfilteringする巨大なインフラ。拡大する広告の世界を拡大する消費者の世界とマッチングさせるためにcomputerの力を最大限に利用。そこで使用されるAIは、最適な広告を、最適な時間に、最適な場所で最適な頻度で提供し、最適な方法で反応するように動いている。それはfilteringのエコシステムそのもので、ただの広告を超えたもの。
 
完全に分散化したP2P方式でユーザ生成型のクラウドソーシングによる広告ネットワークとは、ユーザーに広告を作らせて、ユーザーであるパブリッシャーに、自分のサイトでどの広告を載せるかを決めさせるものだ。
ユーザーは広告を作ったり掲載するだけでなく、広告代理店にもなる。
 
テクノロジーの影響でコストは年々下がっていく。唯一コストが増加しているのは、人間の経験だ。これはコピーできない。
それ以外のものは全て、commodity化しフィルターをかけられるようになる。
経験の価値は上がり続けている。Personal coach,専用ベビーシッター、コンサートチケット、在宅訪問。こうしたものに我々は希少な注意を向けている。
経験をデザインするクリエーターは価値が上がる。
経験を創造したり消費したりするのに、人間が優れているのは偶然ではない。
ロボットが人間の仕事を奪って何が残るか知りたいなら、経験に注目するといい。
我々はtechを使ってcommodityを作り、自分自身がcommodityにならないよう、経験を生み出すだろう。
 
我々は自分が何を欲しがっているのか、何者なのかわかっていない。インタークラウドを動かす何百万のサーバーの中で走る何億行ものコードがフィルターにフィルターを重ねる事で、我々自身を蒸留してその特異な部分を抽出し、個性を最適化してくれる。
 
Personalizeが進めば進むほど、フィルターはその個性を認識しやすくなり、
より働きやすくなる。現代の経済はその中心の部分で、個別化と差異化の力が働いている。
それはフィルターとテクノロジーによってさらに増強されるだろう。大規模なフィルタリングを使う事で自分が誰であるかが形作られていき、自分自身という人間をpersonalizeしていくのだ。経験の価値は上がり続ける。

9️⃣Interacting

スマホのスクリーンが私の感情をスクリーンを通して読み取ってくれる。本を読んである言葉に躓いていると、その後の定義を表示してくれる。
同じ箇所を何度も読んでいたら、その部分の注釈を追加してくれる。
 
マイノリティリポートの製作プロセス。著者のKevin氏も専門家ヒアリングに参加。2050年には我々は全身と全感覚を使ってマシンとコミュニケーションするだろうという見解は、招集された参加者の共通のコンセンサスだった。
 
人工物との間のinteractionが増える事で、人工物を物体として愛でるようになる。①より多くの感覚②親密さを増す③没入感を増す

🔟tracking
シェアしたいという人類の衝動は、プライバシーを守りたいと言う気持ちを上回っている。選択をできる分岐点に来るために、われわれは平均的にはよりシェアし、よりオープンで透明な方向へと向かう傾向にある。つまり虚栄がプライバシを凌駕しているのだ。
2020年迄に年間540億個のセンサが製造される。

11Questioning
質問は無限に増えていく。マシンは無限に答えを増やしていく一方で、我々が質問するための時間はとても限られている。

良い質問を生み出すことと、答えを理解することの労力の間には非対称性がある。今や答えが安くなり、質問はもっと価値を持つと言う、逆転現象が起きている。

答えを生み出すテクノロジーは必要不可決のままであり、おかげで答えはどこにでもあり、すぐに得られ、信頼でき、ほぼ無料になる。しかし、質問を生み出すことを助けるテクノロジーは、もっと価値のあるものになる。

質問を生み出すものは、我々人類が絶え間なく探検する新しい領域産業ブランド、可能性、新しい大陸を生み出す原動力なのだときちんと理解されるようになるだろう。質問していく事は単純に言って答えることよりも力強いのだ。

不可能なことが現実になっているのは、以前には存在しなかったような新しいレベルの組織が出現したから。大規模なコラボレーションや大量のリアルタイムでの社会的インタラクションのせいで、瞬時に偏在した何十億もの人々を繋ぐことが可能になった。
 
Ebayの天才的なとこは、安価で簡単にすぐにレビューできる評価システムを作った事。
Wikipediaの「過去ログへ戻る」ボタンのお陰でページを荒らすより荒れたページを元に戻すほうが簡単になった。
―新しくより高いレベルの信頼の仕組を作り、かつてならこれだけ大規模にはあり得なかった人間のふるまいを強化する事になった。
 
現在では奇跡でも起こらない限り不可能と思われている事が、この共有しされた人々の繋がりによって可能になるだろう。
 
瞬時に世界がつながる時代になって、あらゆるものへの確信がますます持てなくなっている。
権威から真実を教えてもらうのではなく、webを流れている液化した事実から自分なりの確かさを集めて回る事になってしまったからだ。
唯一の真実だったものが、複数の事実の集まったものになった。
 
私の思考は熟慮するのではなく活発に動く。
疑問や直感から始めて心の中でひたすら熟慮を続け、
自分の無知のなすがままになるよりも、私はまず行動する。すぐに動き出す。
見て、調べ、訊いて、質問し、反論し、飛び込んで、メモを作り、ブックマークしてという具合にともかく自分なりに始めるのだ。
待つことはないし、待つ必要もない。アイデアがあったら考えるより前に行動するのだ。


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