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2021年上半期 わたしを救ってくれた10本の映画

気がついたら今年も半分終わってた。
今年の上半期も映画館あんまり行けなかったなーと思って本数を数えたら、劇場で見た映画は88本だった。
例年に比べたら圧倒的に少ない本数。
サブスクとかテレビで見たものもふくめたら240本くらい見てるけど、やっぱり映画館で見ないときちんと映画を見た感じがしない。
本数は少なかったけど、精神的に映画に支えられている部分は大きくて、とにかく映画がないと生きていけないし、映画には感謝しかない。

というわけで、2021年上半期、落ち込んだり、ダメになりそうになったわたしを救ってくれた映画を10本選んでみたので、簡単な感想つきで紹介します!!
あ、順番に意味はないです。最近見たものから順番になってます。


「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」

なんだ、圧倒的じゃないか!?
前作を見直しておさらいしてから見たんだけど、なにこれ、前作を軽く超えちゃってるじゃない。
正直びっくりした。

冒頭のシーンから良かった。
遠くで射殺される男にはじまり、静かに殺しのパターンを変えつつ手際のよさをみせておいて、突然始まるカーアクション。
やりすぎなくらいどハデなカーアクションなんだけど、見せ場としてしっかりハデにしながら、主人公はその状況を淡々とこなしていて、超人っぷりもしっかりキープしている。カンペキだ。

この映画、全体的にすごくいいのは、主人公の無敵感がしっかりキープされてるところだ。
普段は間が抜けた男なのに、危険な事態が起こると、とんでもない強さを淡々と発揮する。
とにかくこんなすさまじいアクションをなんでもなくこなしてしまう岡田准一は超人だと思うし、それを活かしきった演出もすごい。

とにかく終盤の「団地パニック」のすさまじさ!
縦横無尽に移動しながらの団地で展開される壮絶アクション。
岡田准一vs格闘家の橋本知之の格闘シーンの差し込み方とか、アクションのバラエティも豊富だし、緩急のつけ方も実に見事だ。
日本映画でこんなすごいアクションが見れるなんて!?
とにかく見てるだけで震えが走ってきて、ただただ感嘆しながら、いつのまにか泣いてしまった。
泣きにいったわけじゃなかったけど、とにかく涙がポロポロ流れてた。
仕事のもやもやも吹き飛んだ。
映画に命を救われた気分だ。
ロケ地の神戸の団地…いつか聖地巡礼にいかねば。


「映画大好きポンポさん」

泣いた。久々に号泣した。
突然映画監督を任される青年の話。
主人公の「なぜぼくなんかを選んでくれたんですか?」
って質問に、
「キミの目に光がなかったからだよ!」
って、もうここで泣いた。かなり冒頭のシーンだ。

コンプレックスを肯定される。
こういう映画が大好きだ。
周囲が満たされた人生を送ってキラキラした目をしている中で、輝いてない目をした自分が選ばれる。
満たされない心が圧倒的な創作エネルギーの源になる。
それを世界でたった一人見つけてくれた人がいる。
もうそこから泣き始めて、見てる間中、ずっと泣いてた。

映画自体はかなり予定調和な、正直、ダメなところも多い映画だとは思う。
だけど心を完全につかまれてしまった。

とにかくがむしゃらに全力を出す映画だ。
何かに全力を出す人を見てるだけで最近は泣けてしょうがない。
泣きすぎて、もう一本映画見て帰ろうと思ってたけどやめた。
完全に満たされた。

ここのところずっと自分がやってることがみっともなく感じたりたり、少しもやもやしてたんだけど、すっと洗い流せた。
やっぱり映画で涙を流すのは最高の心の洗濯だ。
みっともなくても、やれることをやっていこう、何もしないよりはましだ。
そんな気持ちになった。
また映画に命を救われた。


「Mr.ノーバディ」

何者でもない。
何者でもないけど、ただ者ではない。

いわゆる、なめてたおっさんが実は殺人マシンだったって映画なんだけど、
他の映画とはちょっと違う。
それはこのおっさんが、それはそれは楽しそうに人を殺しまくるってところ。
悲壮感ゼロ。

いつもなんとか波風立てないように、おとなしく過ごしていて、毎週火曜日はゴミ収集車にゴミを出すのが間に合わなくて、奥さんに「また間に合わなかったの?」なんて言われて、テヘペロして、ひたすら我慢していたおっさんが、娘が大事にしてた猫ちゃんのブレスレットを盗まれたことに腹を立ててブチ切れて、たまたま居合わせた関係ないチンピラに大けがをさせて、それがロシアの裏組織の関係者で…全然よくわからない理由で事態がどんどん悪い方向に転がっていくんだけど、その度に顔が活き活きしくる。
事態が悪くなっていくのが楽しくてしょうがないって感じ。

好きこそものの上手なれっていうけど、こんなに楽しそうに街のゴミ掃除をするんだもん、そりゃー無敵だよ。
ゴミ掃除たのしーー!って、ゴミ収集車に間に合わなかったうっぷんを晴らしまくって人殺しする、超楽しい映画でした。

そして、クリストファー・ロイド演じるお父さんが、最高!!!
クリストファー・ロイドファンは絶対見るべき映画だ。
そして、一人じゃないってステキなことね!


「ファーザー」

すごいものを見てしまった。
そんな映画だった。

いろいろあって、突然身近な問題になってしまって他人ごとではなくなった「認知症」。
そんなこんなで去年くらいから本をたくさん読んだり、知識を深めようとしていたタイミングだったので、この映画は衝撃だった。

認知症についての映画だけど、認知症を外側から描くんじゃなくて、内側から描いた作品、つまり認知症の人に世界がどう見えているのかを体感させるような映画だった。

体験するそれはまるでホラー映画だ。
さっきまで話していたと思っていた人が別の人になっている、今までいたと思っていた場所が違う場所になっている、人が話す内容が意味不明で真実がわからない、未来に起きることが実は過去の記憶だったように感じたり、この人は誰? いま自分はどこにいる? 全てがわからなくなる悪夢のような体験。

とにかくすさまじく怖い映画ではあったけど、漠然と怖がるというより、その世界に触れることで、少しだけ世界が開かれる感覚があった。
きちんと「わたし」はそこに残っていて、そのわたしは正気で、おかしいのは自分の周りの世界なのだという感覚。
いろいろ思うところがありすぎて、心が爆発しそうになったけど、とにかく見て良かった。
少し前向きな気分になれた映画だった。


「BLUE/ブルー」

努力は果たして報われるのか…そんな映画だ。

いわゆるドラマチックな展開はない。
ボクシング映画としては地味な話だ。
背負ってるもののために闘うとかそういうのはなくて、でも実際スポーツに打ち込むことってこういう感じなのかなって思った。

なんとなくはじめてみて、楽しさを感じてのめり込む。
登場人物の一人で柄本時生が演じる「ボクシングやってる風」を目指してボクシングを始めたいい加減な練習生が、やがてボクシングに魅入られていくプロセスが全てを物語っているように感じた。
いつのまにかのめりこんで、やがてそれだけが自分の全てになっていく。

松山ケンイチ演じる主人公は、すごく真面目で、研究熱心で、努力家で、面倒見も良くて、人の良い先輩ボクサー。
誰よりも努力していて周囲はみんな彼を認めているんだけど、とにかく弱い。
全然勝てない。
努力しても努力してもそれが強さに結びつかない。
始めたばかりの人にバカにされたりもする。
でもやり続ける。練習し続ける。

その努力は報われるのか? ある意味で残酷な話でしかないんだけど、真の強さとは何か、やり続けた先に何が残るのか、そこがじんわりと描かれたラストに号泣してしまった。

続けた先には、その人にしか見えない風景がちゃんとある。
切ないけど、すがすがしい後味が残る映画だった。


「ジャンク・ヘッド」

な、なんじゃこりゃ。
こりゃすごいものを見ちまった。
ものすごいものを見てるっていう感覚にずっと震え続けるような、とんでもない映像体験だった。

一人で7年かけて、黙々と作り続けたストップモーションアニメ。
実験的で、ぶっ飛んでて、ブラックで、ジャンクで、ヘッドで、グロくて、下品で、生々しくて、でもすごく陽気で、明るくて、くだらなくて、でもって、これが単純に面白い。

一人の頭で考えた世界を、一人で作り抜いた先に生まれた奇跡のような作品。

作品として独自性が突き抜けすぎていて実験映画のようなシュールさなのに、セリフだってほとんどない作品なのに、ふつーに物語としても面白いって、こんなすごい作品バランスがこの世に存在するんだなと感心した。

ほとほと仕事がイヤになって、逃げ出すように突発的に見に行ったのだけど、とにかく見に行ってよかった。
たぶん、あのまま仕事を続けてたら、仕事を辞めちゃってた気がする。
そんくらいキツい仕事がこの時何本も連続していて、正直もう耐えられない感じだったけど、この映画に救われた。
単なる気分転換じゃなくて、命の洗濯だった。
やっぱりいつも映画に救われるんだな。
ありがとう!!!心の底から感謝したい映画だ。


「街の上で」

もう永遠に終わらなきゃいいのにって、映画見ながらずっと思ってた。
そんくらい幸せな気持ちになる映画だった。

特に何が起きるってわけでもなくて、のんびりと、ぼーっと時間が過ぎていくだけのようなに見えるんだけど、じつはそうやって何でもなく過ぎていく日常がとてもかけがえのないもので、愛おしい存在なんじゃないの?って思い出させてくれる映画だ。

なんか、ほんと、とにかく「愛おしい」。
このフィルムにおさめられた時間、全部が好き。
そう言いたくなるような映画だ。
また見たい。繰り返しみたい。
ほんとずっと終わらないでいて欲しいって、そういう映画だった。

ああ、下北いきてーー。


「野球少女」

良さそうって思って見に行って、想像より遥かに良い!って思った映画だった。

女子高生がプロ野球を目指す、単純にカテゴリー分けするとスポ根ものなんだけど、描写も着地もすごく抑制が効いていて、地味に、でもすごく響く映画だった。

見えない大きな壁を超えるためにどうやって戦うのか。
やっていることはものすごくロジカルで合理的だ。
しかしそれを支えるのが猛烈な彼女の努力と根性と信念だ。
「前例がなければ、自分がその最初になる」
その信念で道は拓かれていく。

家族からも反対されて、たった一人で闘い続ける彼女が、少しずつ周囲を巻き込んでいく姿と、最後まで妥協しないで全てを捨てる覚悟で挑んでいく姿に、とにかく涙が止まらなかった。


「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」

結局、3回映画館に行ってしまった。

1回目(通常上映3月8日):初日は異例の月曜公開。本来なら明けているはずだった緊急何チャラはまだ継続中だけど、劇場は満席だ。グッズ売り場はすごい行列でパンフレットを買うのは諦めた。入り口付近では、まだご覧になっていない人がいるので、作品の内容についてロビーで話すのは控えて欲しいとアナウンスが繰り返しされたいた。エヴァは、ぼくらの青春時代の「あの頃」であり、平成からずっと続く時代そのものだったようにも思う。これでひとまず平成なのか青春なのか何かが終わった気がする。25年の歳月を経てたどりついた結末は、何の終わりだったのか、それはあらかじめわかっていたことのようでもあるし、意外な結末だったような気もするし、ただ、とにかく何かが終わった。そしてやっぱり鉄道だ。エヴァは鉄道の映画でもある。最後に出てくる宇部新川駅にはいずれ行かないといけないだろう。

2回目(IMAX版3月12日):友人のお誘いでclubhouseで初トーク参加。30年来の友人とあの頃とエヴァについての思い出ばなしをした。だらだら3時間みっちりあの頃の話をした。なつかしい。東京ファンタで、攻殻機動隊、メモリーズを一緒に見た翌週にエヴァのテレビ放送が始まったんだな〜とか、その週末にマクロスプラスを劇場に見に行って、エヴァの1話目について文句をたらたら語った記憶とか、アスカ来日で一気にエヴァ熱に火がついたな〜とか、25年前のことをいろいろ話した。その勢いで劇場へ。IMAXで見た。25年間「ありがとう」まさにそういう作品だ。

3回目(ドルビーシネマ版6月23日):お昼にうっかりラジコのタイムフリーでシン・エヴァンゲリオンのオールナイトニッポンを聞いちゃったものだから、もういてもたってもいられなくなって、聞き終わると同時に劇場に走っていって、見てきた。3回目。仕事に支障をきたすのは覚悟の上でだったけど、もう見始めたら考えても仕方ない。慌ててうっかり間違えてチケットを2枚買ってしまったり…もちろんもうひと席は空席。3回目だし今回はカットが差し替わった1.01バージョンを…って思ったらドルビーシネマ版は通常版上映だったり、2席分のお金を払って旧バージョンをしかもドルビーの追加料金まで払って見て、さらに少しだけ仕事でも迷惑をかけて、バカ、バカだお前は、って散々自分をののしったけど、無事薄い本は手に入れた。しかも2冊。きっと新バージョンでは、最後にでてくるコントローラーがセガサターンのものになってるに違いないって希望を抱いているんだけど、なってるの?…とにかく、そうなっていることを期待して、いつか1.01も見に行きたいな。


「すばらしき世界」

西川美和…なんてものを作ってくれるんだ。
ずしんと胸に残ってしまって、心から離れないような、なんともすごい映画だった。

なんだろう、これ。
本当にそこに三上という人がいたみたいな、そんな感覚。
刑務所を出所した一匹狼のヤクザ者が、なんとか堅気として生きようとする話。
まっすぐで、根は善人で、でも暴力的で、不器用で、根気強くて、でも短気で、優しくて、でもすさまじい狂気も抱えていて、なんていう複雑な人間像なんだ。
とにかく、見ていて、この三上って人物を好きで好きでしょうがなくなっていく。ものすごく人間臭くて、かわいらしくて、怖い人間、それを演じている役所広司のすさまじさ。

そして取り巻く周囲の人たちも、小道具やロケーション、撮影もよかった。
食の描写ひとつとってもそれは見事で、出所した日のスキヤキの煮える音、朝のたまごかけご飯、焼き肉やのホルモン、投げつけるカップラーメン、九州で見栄を張ったヤクザの振る舞う豪勢な刺身盛り、就職祝いのスーパーの総菜、ひとつひとつが染みてくる。

音楽の使い方もよかった。
免許の一発試験のくだりなんて、始まる前からかかるBGMで爆笑だった。
ああ、なんていうか、そんなことを思い出すだけで泣いてしまう、そんな映画だ。




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