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ICCやB Dash Campで3連覇!クアンド下岡が語る「勝つ」ピッチの極意

昨年(2022年)はお陰様で多くのピッチイベントで優勝することができました。「スタートアップがピッチに出るなんて時間の無駄。それより本業に時間を割くべき」と思っていた私も、ピッチイベントに出場し、優勝させて頂く体験を通して「アーリーフェーズのスタートアップには大きな効果がある」と考えを改めるようになりました。

そこで今回はピッチイベントを通して気づいた『勝つピッチのコツ』についてまとめたいと思います。まずは7分のピッチ動画をご覧ください。

クアンドは2022 ICC SaaSカタパルト、2022 B Dash Camp ピッチアリーナ、2023 ICC カタパルト・グランプリ、3つのピッチイベントで優勝しました

そもそも、ピッチに出る意味ってあるの?

シード・アーリーフェーズではかなり意味があると思っています。理由は以下のようなものです。

自分の頭の整理になる。ピッチ資料を作る過程で、事業の魅力や見せ方を考えるので、自分の思考の整理になります。さらに、観客が引き込まれやすい部分を発見することができます。クアンドの場合はデモ動画のポインタ機能でした。投資家を回るときの推しポイントにも繋がります。

会社の認知度が上がる。投資家や採用候補者など、様々な方々が会社に興味を持ってくれます。SmartHR宮田さん、メルカリ青柳さん、N1マーケティングの西口一希さんがクアンドのエンジェル投資家になったのもピッチの審査員だったからです。SmartHR現CEO芹沢さんも宮田さんのピッチを見たことでSmartHRの存在を知り、採用に繋がったそうです。

使いまわし可能なピッチの型が完成する。実はこれが一番大きいと思っているんですが、一度真剣にピッチを作りこむと、ずっと同じものを使いまわせます。3分、5分、7分といったバージョンそれぞれの長さでピッチデッキを作成しておくと、様々なシーンで役立ちます。私も出場する全てのピッチは最初に優勝したときのモノを使いまわしており、準備時間はほぼゼロです。

ここまでいくつかのメリットを述べてきましたが、私がピッチに出場した一番の目的は「クアンドの認知度をスタートアップ界隈で向上させ、採用に繋げること」でした。本社が福岡にあるため、多くの採用候補者と直接会う機会は限定的で、会社の認知度も上げにくい状況でした。しかし、優勝した後はスタートアップイベントでもお声掛け頂く機会が増え、スカウトを送ってもすでにクアンドのことを知ってくれている人が増えました。採用における最初の波はピッチイベントでの優勝が作ってくれたと思ってます。

どんな準備が必要なのか?

ピッチの結果は準備で9割決まると言っても過言ではありません。私は以下のようなことをしました。

お手本となるピッチを見る。まず、先人のピッチ動画を見ました。いくつか見ると、良い人の共通点が見え、それを自分のピッチに取り込んでいきました。私が参考にしたのはSmartHR宮田さん、RevComm會田さん、アダコテック河邑さん、ログラス布川さんなどです。ログラスの布川さんは投資家がALL STAR SAAS FUNDで一緒なので、ヒアリング&アドバイスの機会を頂戴しました(ありがとうございました!)

ストーリーラインを作成する。ここが最も重要だと思うのですが、個別の会社によって異なるストーリーがあるので一般化しにくい部分です。聞き手に飽きさせないようにストーリーが展開されるように注意していて、話が前に前に繋がるようにしていきました。私の場合は、以下のような順番です

1. 開発しようと思ったきっかけ(Why me)
2. 誰のどういう課題を解きたいのか(N1で)
3. 課題の原因となるもの(社会構造など)
4. ソリューション・解決方法(イメージしやすいデモ動画)
5. 導入効果(定量)
6. ユーザーの声
7. 導入実績
8. トラクション
9. 伸びている理由
10. 目指している市場
11. その先の展開
12. チーム
13. 想い(パッション)

各要素が独立しているのではなく、繋がっていることが大事です。例えば、私のピッチだと、実家の建設会社のベテランが辞めてしまった(きっかけ)--> なぜなら、ベテランに仕事が集中して、常に忙しいから(原因) --> これは個社の問題ではなく、建設の就業者数は年々減少しており全国的に人手不足(社会構造) --> そのような状況にも関わらず現場の移動にかなり時間使っていて勿体ない(解きたい課題) --> SynQRemoteで現場に行かずに解決。といった感じ。

ワンスライドワンメッセージのようなスライド単体の分かりやすさも重要ですが、ストーリーとして相手に考えさせない(スッと頭に入る)流れはかなり気を付けています。そして、ピッチの始まりはなぜ自分がやるのかの実体験(Why me)、最後は未来の夢や展望と熱さで締めて、プレゼンテーターも聞き手も気持ちよく終われるようにしています。

秒単位で一言違わずピッチができるように練習する。スライドもスクリプトも見ず、完璧に7分でプレゼンできるぐらい練習しました。その際、自分のピッチの様子を録画して振り返ることをお勧めします。客観的に見ると思っているよりも喋るのが速い、声のトーンが高い、身振り手振りが多くて気が散るなど、自分の癖に気づくことができます。

良いお手本を見て、自分のストーリーを磨いて、練習しまくる。シンプルですが、これを何度も何度も繰り返して、クオリティを上げていくしかないと思います。

ピッチ本番の細かいテクニック

ここからは私が使っていた本番のTipsです。

特定のスライドで残時間を確認する。本番は緊張するので、喋りが速くなったり、言葉が急に飛んだりします。このような事が起きると、ピッチが時間通りに終わらないかもしれないという焦りから、さらなる間違いや単語が出てこない状況に陥ります。これを防ぐため、3か所ぐらいのスライドで時間を確認し、ペースを把握していました。

最後のスライドは残時間に合わせて3パターン用意する。前述した内容はあくまでペースの確認のためであり、時間の調整は最後のスライドで行います。30秒、20秒、10秒で3パターン作っておけば、20秒程度の遅れはそこで吸収できます。何よりも最後に帳尻合わせすればいいという安心材料がプレゼン中の心理的安定をつくります。

想定されるQ&Aの回答を用意しておく。Q&Aで加点されるか、減点されるかは、ピッチの質同様に結果に大きく影響すると思います。B Dashの優勝はQ&Aによってもたらされたと思ってます。決勝出場者のピッチはみなさんレベルが高く、そこまで大差はなかったと思うのですが、私は直前でICCで優勝していたこともあり、5分のピッチはほぼ準備に時間をかけず、想定されるQ&Aの準備に時間を当てられました。結果、本番でも聞いて欲しい点を聞いてもらえ、自信を持って答えることができました。審査員には以下のようなことを聞かれました。

「ベンチマークとしてServicaTitanってみんないうけど、どうやって追い付こうとしているの?(メルカリ青柳さん)」
「高齢者も多いイメージだけど、使えるようなプロダクトなの?(マネックス清明さん)」
「保険の業界とかにも使えそうだけども事例とかある?今後どのような業界が有望?(SmartHR宮田さん)」
「クアンドの社名の由来は?話が理路整然としてて熱を感じない。熱いメッセージが欲しい(クラウドワークス吉田さん)」

ピッチ猛者のSmartHR宮田さんやRevcomm會田さんのQ&Aも参考になります。この堂々たる姿勢と受け答えが重要な気がします。

評価方式と審査員数を理解する。これは優勝したあと気づいたことなんですが、評価方式と審査員数は結果に大きく影響します。評価方式には大きく2つがあると思ってます。

  • 投票型(特に良かった数名の登壇者にのみ票を入れる。◎→2点、○→1点など若干の点数付けがある場合もある)

  • 採点型(全登壇者を採点する。1-5点もしくは1-10点の評価。総得点の多い人が勝利)

ICCは投票型であり、審査員も20名近くいます。ひとりの審査員が◎→2点、○→1点で採点する場合、1点の差しか生みません。つまりは少数の◎→2点よりも、多数の○→1点の方が強いのです。ICCではすべて登壇者に投票結果が公開されており、前回優勝したカタパルトグランプリを見ると、最も◎→2点を獲得したのは他のプレゼンテータでした。しかし、私は8割の審査員から○→1点を獲得できており、そこで逆転していました。つまりは大人数x投票型になると人数の影響の方が大きくなるのです。
一方、Bdashはおそらく採点型であり(採点方式も結果も非開示だが5名の審査員の投票型は考えにくく「点数」という言い方をしたので推察)、高得点の数を狙った方がいい気がします。

評価方式と審査員数

ゲームのルールを理解することで勝利に近づくかもしれません。

楽しむ!想いを込める!最後はやはり楽しむこと。それと想いを込めること。感情的なものは不思議と伝わり、人の心を動かします。

おまけ

広報(プレスリリースやSNSでの投稿文)は優勝したときに備えて事前に用意しておくことをお勧めします。ピッチの結果発表後は多くの方との名刺交換や表彰でスマホを触れません。一方、このようなトピックは即時性が重要で、どこよりも早く自社から出したいです。そのような状況に備えて予め投稿文などを準備しておくことをお勧めします。

さて、長々と書いてきましたが、みなさまの役に立つような情報は共有できたでしょうか?私はピッチに出場し、優勝し、見える景色や会える人が変わったなと思います。アーリーフェーズのスタートアップにとって、少しでも参考になればなと思います!

クアンドは絶賛、仲間を募集中です!


QUANDO CEO。九州工業大学 客員准教授。建設設備会社瀬登 取締役。地方でのスタートアップ、事業承継、大学発ベンチャーについて書いていきます。