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大橋でわらび餅

わらび餅、というと、
大体四角く切ったものがパックに入って売られている。

私の知ってるわらび餅は丸かった。

小学生の頃、
私と妹は、夏休みになると福岡市の大橋にある母方の祖父母の家に泊まりに行かされた。

確か、3回行ったと思う。

2年生、4年生、6年生の時だったかな。

我が家は東京なので、

娘2人のみを東海道新幹線の博多行きに乗せ、
博多駅では祖父母が待っているシステムだ。

両親共に福岡出身のため、父方の祖母も三池にいた。滞在2週間の後半は三池なのだが、父方の祖母は冷たかったので、出来れば大橋にずっと居たいといつも思っていた。

大橋のおうちで過ごす時間は大好きだった。

朝はおばあちゃんが箒で掃き掃除をする音で目が覚め、夜は縁側で花火をし、風呂上がりはおじいちゃんがベビーパウダーを体にぽんぽん付けてくれた。

夜はうちわで仰ぎながら眠りに落ちるのが大好きだった。

中でも一日の楽しみは、わらび餅だった。

私が知ってるわらび餅は、その大橋で食べたわらび餅だった。

とにかく暑い大橋の夏休み。

朝寝坊して

ちょっと宿題して

いとこが来て

市民プールに行って

プールの前にある小さな公園で、
わらび餅を食べる。      ←ココ!

帰って昼寝

これを1週間繰り返すのが大橋の時間だった。


一日の楽しみが凝縮しているのは、
プールではなく、

プールのあとのわらび餅

スポーツジムではなく、

ジムのあとのビール みたいに、

まさにそこだった。

なぜわらび餅かって?

小さなリヤカーの屋台を引いたおじいちゃんが、プールの前でわらび餅を売っていたからである。

実はこの屋台、後にも先にも大橋でしか見たことがない。

福岡のいとこが、

こっちでうまかもん言ったら、
駅前のマルイチラーメンと、
プールの前のわらび餅っちゃろ?
どっちももうなかっちゃけどw。

って(こんな調子だったかは忘れたけど)言ってくれるのが
私の大好きなフレーズだ。
ああ、あれは夢じゃなかったんだよね、そうだったよね、と思えた。

この二つが分かるのはいとこと私たち姉妹くらいなのだ。


さて、このわらび餅。

パックに入っていない。
アイスに使う最中の皮に入っている。

ここで屋台で買うわらび餅の記憶の限りで詳細な描写をしたいと思う。

①プールでクタクタになるまで2時間泳ぐ。
②プールの向かいの公園で屋台を見つける。
③わらび餅下さい、とおじいちゃんに言う。
④おじいちゃんが最中の皮に、ビー玉大くらいの大きさの丸い小さなわらび餅を専用のスコップでひとすくい分入れる。
⑤砂糖の混ざったきな粉をサラサラッとかける。
⑥最中の皮で更に上からフタをして、輪ゴムをかけ、爪楊枝をサクッと皮に差してくれる。
⑦わらび餅と交換に100円払う。

あとは公園でわらび餅を食べるだけである。

暑い大橋の夏休み、最高のひと時である。
この時に戻れるなら、タイムスリップも怖くない。

それくらい、これがまた美味しいのだ。

冷たすぎないのだけど、ちょっとひんやりしている。今思えば、氷で下から冷やしていたのかもしれない。優しい冷たさで、子供の口にちょうどいい小さな丸い形状だった。

これがわらび餅の雛形となっていた私は、
立派な大きいわらび餅をいくら食べても、
あの頃の美味しさには叶わない。
パックに入っている時点で美味しくない。
最中の、最中の皮じゃないと!


先日あまりにも恋しすぎて検索してみたら、
中洲だか天神だかの辺りで、息子さんが後を継いでやってるらしい。店舗もあるようです。一番太鼓という店名らしいです。
地元の方には有名なのかもしれません。

いや、当時のそれが一番太鼓だったのかはわからない。看板とか見てなかったもんなー。

屋台をしてた方は、特に子供好きっ!って感じのおじいちゃんでもなかったけど、
先代が戦後の子供たちのおやつを、
と初めていたそうで、
だから100円だったんだなぁ、(いや50円だったかも?)
あれは、デザインから何から子供用だったのかと、
その記事を見ておじいちゃんの優しさがじんわりきました。


ああ、あのわらび餅また食べたいよぅ。

ああ、でもきっと、
プールへの往復の暑い日照りの道や、
おばあちゃんとのお出かけや、
おばあちゃんが私よりも背がちいちゃかったことや、
三ツ矢サイダーが大好きだったことや、
夕方になるとおじいちゃんと川べりを散歩したことや、
東京に帰ってからもおじいちゃんが恋しくて毎日文通してたことが、
全部恋しいんだな。

おばあちゃんは500円玉貯金をして、
私たちにお祭りのお小遣いや、レストランや、プール代を用意してくれていて、
とある夜に
沢山積み分けられた500円玉と、
おばあちゃんの真剣な顔を見てしまった時に、
子供心に申し訳ない気持ちになったっけな。

あのわらび餅には、戻ってこない時間が凝縮されてるんだな。だから美味しかったのかな。


大橋で、わらび餅、食べたい。




あとがき
実は昨日、おんなじ場所で子供の頃わらび餅食べてた、ということが私の好きな作家さん、拝啓 あんこぼーろさんとコメントで話してて明らかになりました!その流れで同時にわらび餅の記事をリリースしております。
後ほど拝啓 あんこぼーろさんのリンクも貼らせていただきます!

【追記】リンクの貼り方やっとわかりました!

いやー!色々驚き桃の木山椒の木でした!!

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