見出し画像

凄いのは日本アニメだけじゃない!恐るべき海外アニメ映画Vol.1

日本のアニメは世界に誇る文化だ。『ドラえもん』、『ドラゴンボール』、『クレヨンしんちゃん』…世界を見ても、その知名度の高さは抜群で、ジャパニメーションという言葉も生まれるほど。今のハリウッドで活躍する監督にも日本のアニメに影響を受けたという人は数多く存在する。

アニメの人気は国内の映画業界のおいても絶大で、日本の映画の歴代興行収入一位は宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001年)だし、最近だと新海誠監督の『天気の子』(2019年)や『君の名は』(2016年)が社会現象ともいえる大ヒットを記録した。

千と千尋の神隠し①

国内においても海外においても、日本のアニメが凄いというのは間違いないが、実は最近は海外のアニメ映画も恐るべき作品が続々と登場しているのはご存じだろうか?以前から、海外のアニメ映画作品も日本で公開はされてきたが、筆者はここ最近特に海外アニメの勢いを感じる機会が多くなった。

ここでは、近年公開された海外のアニメ映画の中で、筆者が特に素晴らしいと感じた作品を6作品紹介したいと思う。ハリウッド製作の大型大作から、ヨーロッパのアート系アニメ、アジア圏のこれからを感じさせるアニメ映画など様々な作品を挙げてみたので、興味ある方はぜひ目を通していってほしい。

【アニメとコミックの融合の到着点『スパイダーマン スパイダーバー』】

画像1
2018年製作/117分/G/アメリカ

まずお薦めしたいのがこちら。2019年に公開されたスパイダーマンのアニメ映画だ。スパイダーマンといっても、MARVELのトム・ホランドが主演のスパイダーシリーズとは別。本作のスパイダーマンは、黒人の少年マイルス。

この作品の魅力は、ありとあらゆるタイプのスパイダーマンが登場するということ。というのも、この映画は様々な世界のスパイダーマンがある事情によりマイルスの世界に来てしまうというメタフィクション要素を含んだ話だからだ。

スパイダーバース①

この作品、映像×脚本×音楽、全てが完璧。オープニングからスタイリッシュ過ぎる映像でテンションをぶち上げてくれる。アニメーションでしかできない表現を追求しているという事が、演出を見ると分かるのだが、特に凄いのはアニメーションの漫画的表現の落とし込み方。

断言してしまうがアニメーションとコミックの融合という点でいえば、本作が一つの到達点であるといえる。感情を盛り立ててくれる音楽も素晴らしいのだが、個人的には、これだけ色んな要素を入れながら完璧にまとめてる脚本も凄い。アニメ好きの人にも、そうでない人にも問答無用でお薦めしたいが、もしあなたがアニメ好きを名乗るのなら、現在のアニメーションの最高峰を知るという意味でも、本作は観ておくべき作品だろう。

ちなみに本作はIMAXで観るのが、最高の鑑賞環境だと思う。個人的にはリバイバル上映を強く望む。

Amazon Primeほか、Rakuten TV、TSUTAYA TV等で動画配信。

【思い出すのはあの頃。台湾アニメーション『幸福路のチー』】

画像2
2017年製作/111分/G/台湾

大人になった女性が、自分の故郷に戻ったことにより子供時代を思い出しながら、自分の人生を見つめていく。日本のアニメーション映画でいえば『おもひでぽろぽろ』と同じ系統に連なる作品だろう。本作を観て思い出させるのは子供時代のあの頃感じた感情。

先生が怖かったり(今は怖いと思う先生もだいぶ少ないんだろうが)命の大切さと残酷さを知ったり、日本と台湾、国は違えど子供の頃、感じる気持ちはやはり同じ。本作を観ていると、自分も小学校時代のあの頃を思い出してノスタルジックな気持ちに浸ってしまった。

幸福路のチー①

本作のチーの声を担当しているのが、『藍色夏恋』(2002年)、『薄氷の殺人』(2015年)などで知られる台湾のスター、グイ・ルンメイなのも見どころの一つだがルンメイ曰く「「幸福路のチー」は台湾版「ちびまる子ちゃん」」とのこと。確かにちびまる子ちゃんにも通じている…!しみじみと良い映画を観たなぁ!と思わせてくれる作品。万人にお薦めしたい。

Amazon Primeほか、Rakuten TV、TSUTAYA TV等で動画配信。

【中国アニメーションの実力に感嘆せよ。『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』】

画像3
2019年製作/101分/G/中国

こちらの作品。実は日本語吹替版は、今年の11月7日から公開である。なので、まだ配信やソフト化もされていない。ただ、字幕版が去年から公開しており、それが一部のアニメ好き達の間で非常に話題になっていた。その様子は下の記事にまとめてあるので、興味のある人は是非読んでみて欲しい。

本作をお薦めする理由は、上記の記事でも述べたが、中国アニメーションの技術力に驚かされてしまったという点。日本のアニメーションが世界に誇る文化というのは間違いないが、それゆえに日本以外の国のアニメは大したことない、自分では気づかなくてもそう思っていたりしないだろうか?少なくとも筆者はそう思っていた。

日本ではそこまで知られていないが、中国のアニメーション業界はすごく活発だ。上に挙げた『スパイダーバース』など、ハリウッドが手掛けるアニメーションもそうなのだが、アニメーションに掛ける製作費や規模や、どうしても国力という点で、日本は負けてしまう。こ

れから中国のアニメーションが台頭するようになった時、日本はこれまでとは違うやり方で世界に勝負していかなければいけなくなる。そんな日は実はすごく近いのかもしれない…

話がズレてしまったが、本作は「中国アニメーション」ということ関係なしに面白い。日本のアニメや漫画に影響を受けたんだろうなと思わせるキャラデザや、人と自然の共存というテーマはジブリ作品っぽいため、日本のアニメ好きにも非常に見やすいだろう。

描かれてる題材やテーマは王道なため、目新しさは感じないが、脚本、演出、共に完成度が高い。興味ある方は是非ぜひ観る事をお薦めする。

【"ポストジブリ"とも評されるアイルランド産アニメ『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』】

画像4
2014年製作/93分/G/アイルランド・ルクセンブルク・ベルギー・フランス・デンマーク合作

これまで製作してきた長編アニメが、全てアカデミー賞にノミネートしてるアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」。ケルト神話を題材にして作られた本作は、『ブレンダンとケルズの秘密』(2009年)に続くケルト三部作の二部作目にあたる作品。

といっても前後に作品的な繋がりはないので本作を単体で観ても問題はない(ちなみにケルト神話について知らない方も多いと思うのでWikipediaのリンクを下に貼っておく。良かったら参考にどうぞ)また、神話をモチーフにしているが、本作のあらすじはシンプルかつ王道。知らずに観ても問題はない。

本作の魅力は何といっても、アニメーションの美麗さ。ポスタービジュアルで興味を持った人には、内容もその期待を裏切らない映像の美しさだという事を言っておきたい。ポスターだけ見ると女の子が主役のような印象だが、実際は兄と妹+犬のコンビによる冒険ファンタジー。どちらかというと主役はお兄ちゃんという気がする。ちなみにポスターに大量に登場しているアザラシはそこまでストーリーに絡んでこない(ジブリで例えるならコダマやマックスクロスケみたいなマスコットキャラクター的立ち位置)

自然と人間社会との共存など、こちらの作品もジブリと通じる点があるかだろう。下記の記事によるとポストジブリと評されているらしい。確かに演出などで影響を受けていると感じる点も多い。ただ、ジブリ作品のような冒険活劇とはまた違う立ち位置の作品だと筆者は思う。

麗なアニメーションとゆったりした演出は、まるで美しい絵本を捲っていくかのような感覚。子供の頃、寝る前に親からお話を聞かせてもらってるような感覚をおぼえた。なので、ジブリ作品のようなダイナミックな展開や演出を期待すると肩透かしを喰らうかもしれない。今回挙げた作品の中で、親子で一緒に見るのに一番おすすめしたい作品だ。ちなみに今秋には新作『ウルフウォーカー』も公開されるということで、こちらも絶対に観に行く。

Amazon Primeほか、Rakuten TV、TSUTAYA TV等で動画配信。

【犬の視点から描かれる幻想的なこの世界『マロナの幻想的な物語り』】

画像5
2019年製作/92分/G/ルーマニア・フランス・ベルギー合作

様々な飼い主のもとを渡り歩きながら、名前も変わっていく犬マロナの生涯を描いた作品。本作の最も大きい特徴は、その独特のアニメーション表現といえる。マロナの視点から描かれた世界ということなんだろうけど、手書きをベースとして描かれたアニメーションは唯一無二、まさに幻想的という表現が相応しい。

下に予告編映像を載せておくが、これが劇中の見せ場という訳でなく全編こんな雰囲気である。今回紹介した6作品の中では、最もアート色の強い作品ともいえるだろう。

筆者は、前情報無しに本作を観たので、鑑賞前はてっきり子犬のマロナの冒険物語くらいに思っていたのだが、内容はどちらかというとシニカル。始まりから「おお…」という気持ちにさせられる。マロナも「犬」というよりは「レディ」というキャラクターで、物語と合わせて、いかにもヨーロッパという感じ。犬好きとしては、切なくさせる場面もある作品だった。

正直、人は選ぶ作品だと思うが、このビジュアルに惹かれたなら是非とも観て欲しい作品だ。また、吹き替え版で観たのだが、マロナの声をのんが演じており、作品の幻想的な雰囲気とピッタリ合っていたぞ。本作は9月11日から劇場公開しているので、興味ある方は是非ともチェックしてみて欲しい。

【日本愛に溢れるストップモーションアニメ『KUBO クボ 二本の弦の秘密』】

画像7
2016年製作/103分/G/アメリカ

最後に紹介したいのは、これまでの作品とは少し異なるストップモーションアニメ作品。ストップモーションアニメとは、静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術を使ったアニメーション作品のことを指す。(Wikipedia参照)

日本だと『ピングー』などが身近なストップモーションアニメとして挙げられるのではないだろうか(ただし、『ピングー』の2017年からの新作はCGアニメとなっている)

ピングー①

本作は、世界最大級のレビューサイトRotten Tomatoesで97%の満足度を獲得、アカデミー賞の長編アニメ映画賞と視覚効果賞にノミネートされているなど、その素晴らしさは既に保証済み。だが、本作は特に日本人にこそ観て欲しい作品としてお薦めしたい。というのも、本作には溢れんばかりの日本愛が詰まっているからだ。

まず、本作の特徴ともいえるのが、劇中で描かれる日本文化。舞台が日本というだけでなく、三味線や折り紙など、日本を象徴するモチーフとして描かれている。監督のトラビス・ナイトは、8歳の時に日本を訪れてからというもの、日本の芸術や文化に魅了され、これまでに日本を何度も訪れているとのこと。製作にあたっては、日本人アーティストを招いて監修してもらっているだけあって、海外の映画で描かれがちな「とんでも日本」になっていない。それどころか本作の質感は日本の文化や雰囲気にぴったりはまっていて、日本以上に日本っぽいアニメになっているのだ。

トラビス監督は、本作は黒澤明監督のカット割りや宮崎駿の演出にも多大な影響を受けたと語っており、確かに黒澤明を彷彿されるカットがあるのも映画好きとしては楽しいところだ。

画像9

本作は公開当時、その内容の素晴らしさに、Twitterで『#一生のお願いだからクボを観て』とのハッシュタグをつけた感想がトレンド入りしたほど。正直、筆者も本作を観るつもりはなかったが、この絶賛を受けて観に行った訳だが、確かに評判通りの素晴らしい作品だった。上記で挙げた日本文化はもちろん、ストップモーションアニメの技術力が素晴らしい。全く動きがカクカクしておらず、驚くほどなめらか。

本作の製作期間は94週、総作業時間は114万9015時間、主人公のクボの人形の数は30体、その表情に使われた顔は4800万通りという、聞くだけで気が遠くなるような凄まじい作業数。下にメイキング画像を貼っておくので、良かったら参考に観て欲しい。どれだけの手間暇がかかっているか感じ取れることだろう。

ストーリーも王道の冒険活劇なので、誰が観ても楽しめることだろう。個人的に戦闘シーンであれだけ熱くなれるとは思わなかった。ちなみ11月13日にスタジオライカ新作『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』が公開されるので、こちらも興味ある方は是非ぜひ。

Amazon Primeほか、Rakuten TV、TSUTAYA TV等で動画配信。

【まとめ】

いかがだっただろうか。古今東西、様々なタイプのアニメ映画を挙げてみたが、どの作品も完成度はすさまじく高い。気になる作品があった方は是非とも見て観て欲しい、どの作品も本当素晴らしいから。日本のアニメは世界でもトップクラスに位置すると思うが、これらのアニメを見ると、日本もうかうかしていられないと焦るような気持ちすら感じさせる。

ちなみにここに挙げた6作品以外にも素晴らしいと思う海外のアニメ映画は多数あるので、そちらもまた紹介していきたい。また、これが凄かった!お薦めしたい!という海外アニメ作品がある人は、是非とも教えて欲しい。筆者も海外アニメは掘り下げて観てみたい。

読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。