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【幸福の在り方を問う】映画『オールド・フォックス 11歳の選択』感想

舞台は1899年から1900年、バブル期の到来を迎えた台湾。
父と2人で暮らす少年のリャオジエは、自分たちの店と家を持つことを夢見てコツコツと節約生活をしていた。

そんなリャオジエの前に"古狐=老獪なキツネ"と呼ばれる地主のシャが現れる。

ひょんなことからリャオジエを気に入ったシャは、この世を生き抜くための方法を教え込む。
その方法は非情なものだったが、権力を持つシャにリャオジエは次第に感化されていき…

もし日本でリメイクするとしたらシャは北野武とか似合いそう。

リャオジエの父親とシャ、2人はあらゆる点で対照的だ。
金銭、生き方に子供…正反対の2人を通じてリャオジエはどちらの道を生きるか迫られることになる。

リャオジエのお父さん、親1人子1人で大変なことが多いだろうけど、自分の好きなレコードを掛けたり趣味でサックスをたしなんでいたりと、傍から見ると「ちょっと良いな」と思える生き方をしている。

この父親の描き方こそ本作が描きたいことにも繋がっているんだと感じた。

リャオジエのお父さん、かつても恋人と良い感じになるし美人の不動産さんが家に通ってくれたりとなかなか素敵な人生を過ごしてるんだよね、後イケメン。

それはこの映画のテーマである「幸せの本質とは?」ということ。

リャオジエの父親は相手の気持ちを考えて行動するため損な役回りにまわることが多い。シャはそんな父親を「負け犬」だと見下している。

しかし、そのシャも裕福ではあるが空虚な生活を過ごしている。
彼の権威の象徴でもあるスポーツカーがゴミ捨て場に駐車してあるというアンバランスさもそのことを表していると思う。

裕福さは人生の豊さと直結しない。
自分の人生を充実したものといえるかどうか、それこそが幸せの本質ではないのか。
この映画はそう語りかけてくる。

充実とは要は大切な存在が身近にいてくれることと自分は捉えた。

とても真っ当で良い映画だと思った。
それこそ児童への推薦映画とかに認定されていても違和感ないし、子供に見せてどう感じたか感想を聞いてみたい。

そしてこの映画、音楽がとても良い。
レコードやサックスの音が自然に場面に溶け込んで、こちらの感情を煽ってくれる。全体的にレトロさを感じさせる色味も好み。

門脇麦がリャオジエのかつての恋人役として出演。現地の役なのに全く違和感ない。何気に門脇麦が出ている映画って面白いの多いイメージ。
2023年製作/112分/G/台湾・日本合作



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