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【かけがえのない あの時】映画『夏の庭 The Friends』感想

動画配信サービス「JAIHO」で7月16日より配信されている映画『夏の庭 The Friends』。観たことはなかったが作品の存在自体は前から知っていた。

原作の『夏の庭 The Friends』は小説で作者は湯本香樹実。
1992年に刊行されてから十数か国で翻訳出版されており、日本のみならず海外でも文学賞を受賞している。

本屋の特集コーナー(今だと「新潮文庫の100冊」フェアとか)で昔からよく見かけるので、いわゆる「名作」なのだろうと気になっていた。

加えて自分がもう一つ興味を惹かれた点は、本作の監督を務めているのが相米慎二そうまいしんじだということ。
相米慎二というと『セーラー服と機関銃』、『台風クラブ』等、名だたる作品で日本の映画史に残る監督の一人として知られている。

映画好きを自認しているが、実は相米慎二監督の作品をほとんど通ってきていない。蝉の鳴き声が響くこの季節にピッタリということで『夏の庭』を鑑賞した。

1994年製作/113分/日本

【感想】

小学生6年生の木山と山下と河辺の3人は、山下の祖母が亡くなったことをキッカケに「死」について考えるようになる。

そんな時、近所に死にそうなおじいさんが住んでいるという情報を知った3人は、彼が亡くなる瞬間を目撃しようとおじいさんの家を見張るようになるのだが…というあらすじ。

指摘されてる方も多いが「日本版スタンド・バイ・ミー」という印象を受けた。「死」が物語のフックになっている点もそうだし、少年たちのひと夏の冒険と友情が題材となっている点で共通している。

冒頭のあらすじを読んだ時点で、物語の大まかな予想はできるし、ほぼその通りにことが進むが物足りなさを感じることはない。展開そのものではなく、そこで描かれる人間模様こそ本作の醍醐味なのかもしれない。

個人的に、見た目こそ「The のび太」の河辺が一番ぶっ飛んだキャラクターだったのが意外。確かに河辺のように嘘をついてしまう子供は自分の学生時代にもいた。そんな彼がブランコに揺られながら自分の思いを吐露する場面がグッとくる。何故彼がああいう嘘をつくのか、その背景も感じ取ることができた。

おじいさんを演じた三國連太郎はさすがの存在感。居るだけで画面が引き締まる締まる(亡くなった場面でお腹が上下するのはご愛嬌だが)。

雑草だらけの庭が、少年たちの手によって綺麗になっていく過程は出来過ぎと思う反面、ある種の爽快感を感じたし『夏の庭』というタイトルの意味に納得した。

相米慎二監督、『セーラー服と機関銃』を観た時も思ったがファンタジックな作風が特徴的という印象。
庭がどんどん綺麗になっていく描写もそうだし、特に病院を木山が探索する場面は恐怖すらある。忘れていたが、子供の頃、病院とか死の香りが感じられる場所は不気味だったことを思い出した。

本作も撮り方次第では、もっとしっとりした感動作になるだろうに、そこに染みっぽさは感じられない。瑞々しさと不可思議さが共存した独特の世界観が拡がっている。

井戸はこの世とあの世を繋ぐ道。
井戸に向かって別れを告げる子供たちの姿が記憶に残る。

相米慎二監督、次は名作と名高い『お引越し』を観てみようかな。

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