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【ひと夏の冒険と本当の別れ】映画『クレオの夏休み』感想

フランスには「バカンス映画」と呼ばれるジャンルがある。
これはフランスのバカンス法という長期休暇を題材にした映画のことなのだが、本作もそれに該当するのかな。

物語は6歳のクレオが母国に帰ってしまった乳母のグロリアに会いに夏休みに彼女の住む国を訪れるというあらすじ。

ただ6歳の女の子が1人で遠く離れた国に行くのはバカンスというよりもはや冒険だと思う。「小さい子供×夏休み」という点では日本の夏休み映画の方が近いかもしれない。

左上から時計周りに『みんなのヴァカンス』、『海辺のポーリーヌ』、『オルエットの方へ』、『7月14日の娘』フランスのバカンス制度羨ましい…!

本作はとにかくクレオが可愛い。本編の主な魅力を担ってるといっても過言じゃない。

クレオ役のルイーズ・モーロワ=パンザニは役者ではなく公園で遊んでいたところをスカウトされたらしいが演技経験ないのが信じられないくらい魅力的。83分ほぼクレオが出ずっぱりだがずっと見ていられる。

ちなみに全編カメラとクレオの距離が近いのだが、これは子供ならではの視野の狭さを表現しているんだと思った。

クレオのメガネは伊達メガネとのこと。

クレオも可愛いが舞台となるカーボベルデの景色も素晴らしい。
カーボベルデとは10の大きな島と8の小さな島からなる大西洋の島国とのこと。

自然が本当に美しい。空と海の濃い青色、風景のコントラストが印象的。クレオと風景、これだけでずっと見ていられる。

青い海、切り立った岩、着てる服が原色なのもあってとてもカラフル。

大好きなグロリアと会えて笑顔の絶えないクレオだが、この旅は楽しいだけじゃない。

長年フランスに出稼ぎに行っていたグロリアは自身の子供たちとの間に壁がある。特にセザールは思春期ということもあるのだろう、クレオへの嫌悪感を隠さない。

クレオが味わう疎外感とか自分の子供時代を思い出す…

本作はマリー・アマシュケリ監督の乳母への思い出を題材になっていることもあって直接言及こそされないが、フランスとカーボベルデの社会的格差の問題もはらんでいる(それはカーボベルデの住民の態度からも伺える)。

クレオはこの旅を通じてこれまでの「乳母」としてだけのグロリアじゃない彼女の新しい面を見る。

クレオがこの旅で経験するのは本当の意味での別れ。

グロリアの娘の出産をキッカケに影を差す2人の関係。グロリアもホテルを開設しようとするなど、新しい人生を踏み出そうとしている。クレオも嫉妬にかられていけないことをしてしまう。

ずっと同じではいられない。

「いつでも愛している」
クレオがグロリアのこの言葉を思い出す日もきっとくるのだろう。

ひと夏の成長と別れ、まさに王道の夏休み映画(バカンス映画)で面白かった。

パンフレットの装飾も可愛らしい。
2023年製作/83分/G/フランス



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