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【忘れられない一期一会】映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』感想

最初に「みじめさ」が印象的な映画だと思った。

序盤の手袋を投げる少年もそうだが、1人置いてけぼりをくらった時のアンガスや良い雰囲気になった女性を見送るハナムなど、観てて胸を締め付けられる表情のアップが多い。

「ああ、今の自分とてもみじめだな」と思うことは生きてれば少なからず経験するだろうし自分も経験がある。
だからこうした場面にまずグッときた。

物語は、孤独を抱えた立場の異なる3人が同じ時を過ごす内に互いの抱えてるものに触れ親しくなっていく…という話。
メアリーとの3人の関係性も良いがアンガスとハナム、やはりこの2
人の関係性に集約されると思う。

パンフレットによるとメアリーを加えようと提案したのは脚本を担当したデヴィット・ヘミングソン。自身の母親からインスピレーションを受けたそう。

実は似た者同士、同族嫌悪で本来なら仲良くなりえようもない。そんな2人が仲良くなっていくのだから面白くない訳がない。

成り行きで2人だけの秘密がどんどんできていく展開が良いし上手い。

「古代ギリシャ人は考えた。人は過去に導かれ、運命を生きる。…それはたわ言だ。」
過去の偉人たちの言葉を引き合いに出していたハナムがそれを否定してアンガスを励ます場面、あの時点でハナムは心を開いてたんだろうな。

この2人でなければこの結末は有り得なかったと思うと、とてもロマンチックな映画なんだよね。

骨折した時のドタバタ感や駐車場で燃えるケーキを囲む場面とか、1回の鑑賞じゃすくいきれないくらい好きな場面の多い映画だった。

印象的な会話も多かったな。
個人的に「税金払って死んでいくだけさ」(うろ覚え)って台詞は普通に使いたい。

全体的にシニカルというか「この世なんてこんなもんさ」といった冷ややかさも感じるんだけど、確かに心にグッとくる瞬間もある。

最後、ハナムの身を挺した行動は理解できるが、自分はアンガスより彼の将来を案じてしまった。長年過ごした場所を離れるだけじゃなく、あの年齢での生活の立て直しはかなりキツイだろうに…

この冬の出来事で確かに絆は生まれたけど、彼らの人生が劇的に変化した訳じゃない。

彼らはきっとこれからも悲しみや苦しみを抱えて人生を生きていくんだろうな。それならせめて、彼らの人生が少しでも希望に照らされてるものであることを願いたい。

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は6月21日より公開中。気になった人はチェックしてみては。

2023年製作/133分/PG12/アメリカ




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