2020年はアジア映画の年になるのではないだろうか。

コロナウイルスの影響によって映画製作がストップしたり、映画館が閉館になるなど、苦境にたたされてる映画業界だが、今年は映画史において重要な出来事があった年である事を忘れてはいけない。

それはご存じの通り、韓国映画『パラサイト』のアカデミー賞快挙だ。パルムドールをはじめ世界中の映画祭の賞を総なめにした本作は、日本でも興行収入40憶を超え、日本で公開された韓国映画の興行成績を塗り替えた。

パラサイトの凄まじさは言うまでもないが、実は今年は、アジア映画がとても豊作な年だと筆者は思う。そこで、今年公開された・これから公開される予定のアジアを映画を挙げていきたい。

『スウィング・キッズ』

1951年の朝鮮戦争の最中、捕虜収容所を舞台に生まれも育ちも異なる四人がタップダンスを通じて繋がっていく姿を描いた人間ドラマ。
主演が韓国のアイドルという事で、失礼な話、あまり期待せずに観たのだが、これが素晴らしい映画だった。
題材となっているタップダンスはもちろんの事、シリアスさとポップさのバランスが具合が絶妙で、観てるこちら側の様々な感情を揺さぶってくる。特に終盤の展開には驚かされた。さすが韓国…!と言いたくなる作品だ。

監督が、『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)を撮ったカン・ヒョンチョル監督と知って、作品のクオリティにも納得。もし鑑賞を迷ってる方がいたらお薦めしておきたい。 

『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』

2月28日から公開されてる本作は、中国の新星、ビー・ガン監督の2作目にあたる作品。この作品、特筆すべきなのが映画の中盤から3Dになるという事だ。
劇中のある合図で、3Dになるのだが、その合図もユニークだし、劇場の皆が一斉に3D眼鏡を掛けるのもそれ自体が面白い体験だった。

映画自体は、アート色が強いため、好き嫌いは正直別れるだろうが筆者はかなり好きだった。坂本龍一はじめ様々な著名人がコメントを寄せてるのも本作の特徴。公開館はかなり限られるが、上映中に是非とも劇場で体験して欲しいところだ。

 『人間の時間』

3月20日から公開される本作は、韓国の鬼才(ちなみに本作の公式サイトでは「狂才」と表記されているけど、どんな意味合いなんだろ?)キム・ギドク監督の新作。
キム・ギドクと言えば、『うつせみ』(2006年)、『嘆きのピエタ』(2013年)をはじめ、世界の映画祭の常連でもある監督。

観終わった後にずっしりと心に残る重い作風が特徴の一つ。正直、筆者にとっては、公開されたら必ず足を運ぶタイプの監督ではないが、今作は、様々な人々を乗せた軍艦が未知の世界で遭難するというあらすじからして面白そう。またオダギリジョーが出演してるのも個人的には気になるところ。どんな物語が描かれるか楽しみだ。

『はちどり』

個人的に、今年公開されるアジア映画で筆者が一番楽しみにしてる作品が今作の韓国映画だ。
舞台は1994年の韓国。14歳の少女、ウニが世界を知っていく様が描かれる人間ドラマという事だが、世界各地で45以上の賞を獲得していたり、韓国の単館映画として異例の大ヒットをしているなど、前情報だけでも期待大。


監督は38歳のキム・ボラで、今作が初長編との事。監督自身の少女時代をベースに、誰でも経験する思春期を描いてるという事だが、筆者は、特に90年代が舞台の映画が好きなので、その点でも楽しみである。


この透明感のある日本版ポスターも凄く良い感じ。
『はちどり』は4月25日から公開予定だ

『サタデーフィクション』

次に挙げる作品は中国のロウ・イエ監督による『サタデーフィクション』

ロウイエ監督といえば、今年の東京フィルメックスで、『シャドウプレイ』を見たばかり。シャドウプレイが大変面白かったので、こちらの新作も期待が募る。面白いのは、上記で挙げた『人間の時間』に続いて、この作品にもオダギリジョーが出演している事だ。


『スプリングフィーバー』にしろ『ブライトンドマッサージ』にしろ、匂い立つような性描写が特徴の監督だと思っているが、果たして今作はどんな物語になるのか。(ちなみに『シャドウプレイ』に関しては、そう感じさせる描写は少なかった)『シャドウプレイ』が今年6月、『サタデーフィクション』は今秋公開予定だったが、残念な事に、コロナウイルスの影響でどちらも公開延期&公開日未定という事態に。。さすがにこのまま劇場公開無し、配信orソフト化という事はないだろうが、いつになるかはとても気になる所。事態が一刻も収束してくれる事を願うばかりだ。

『フェアウェル』

今作は、これまで挙げた作品とは毛色が異なるが、ゴールデングローブ賞、主演女優賞&外国語映画賞ノミネートをはじめ各国の映画祭で様々な賞を受賞している注目作という事で、こちらもお勧めしておきたい。

今作の最も注目すべき点は、オールアジア人キャストなのに、全米でヒットを成し遂げたという事だろう。今作も公開当初は4館からスタートしたのが、口コミによって、公開館数が飛躍的を飛躍的に伸ばし、3週目には全米TOP10入りを果たすという快挙を成し遂げている。

『クレイジーリッチ』(2018年)をはじめ、『パラサイト』の快挙など、アジア人キャストのみの映画が全米でヒットするという事は、これが初めてではないが、まだまだ特別な事である事は間違いない。そういう意味で、ここ近年のアジア映画の快挙は、徐々にアジア映画が市民権を得はじめているという事かもしれない。
また、今作の配給が今をときめく『A24』という事も見逃せない点ではある。
監督が、中国生まれアメリカ育ちという事で、これまでに挙げたアジア映画とは少し意味合いは異なるが、今作も注目作品である事は間違いないだろう。

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