東京国際映画祭2021『一人と四人』感想
雪に覆われたチベットの山奥。管理小屋で暮らす監視人のもとに血だらけの男が訪ねてくる。彼は自分は森林警察だといい、密猟者を追いかけてる最中に車が事故に遭ってしまったと語る。密猟者も逃亡中だが、今晩は吹雪になるのでこの管理小屋に来るはずと語り、管理小屋で待ち受けようとする。男を疑う監視人だったが、そこにまた監視人の友人が訪れたことで事態が変わっていき…
東京国際映画祭の4本目に選んだ作品はコンペティション部門の『一人と四人』。こちらの作品を選んだのは、プログラミング・ディレクターの市山さんが語っていた「まるでレザボア・ドックス」という言葉に惹かれたから。
黒バックに赤字のオープニングが格好良い。映画自体はほぼワンシチュエーション、まるで舞台劇のよう。誰が本当の事を言っているのか分からない、果たして誰が密猟者なのか…前評判通りまさにクエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』(1992)、そもそも山小屋に訳アリの人物達が集まるという設定からして同監督の『ヘイトフルエイト』(2015)を思わせる。
社会派・アート色の濃い作品が並ぶコンペティション部門の中で、エンターテイメント色が強いという点でも本作は異色。こういった作品がコンペにあるのも面白い。アート系や映画祭に慣れてない人にも見易い作品ということでもお薦めしたい。
藪の中ならぬまさに雪の中といったような本作。正直、設定や展開などに目新しさはないが、ほぼワンシチュエーションの中、緊張感を失われうことはない。監督はチベット映画『羊飼いと風船』(2019)のペマ・ツェテンの息子、ジグメ・ティンレー。何と今作が監督デビュー作。デビュー作でこの完成度は素晴らしい。これからに期待してしまう。
※ここからは具体的な内容に触れる為、鑑賞予定の方はネタバレに気を付けて下さい。
角を切られた鹿=監視人ということかな。ラストの時計が動き出したのは、奇妙な空間からの生還ということだろうか。てっきり嵐の中、山小屋内で探り合いが展開されると予想していたら、嵐が来る前に映画が終わったのは意外だった。
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