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【今年の台風の目はこの作品で決まり!!】映画『侍タイムスリッパー』感想

『侍タイムスリッパー』という映画を知っているだろうか。
監督、脚本をつとめる安田淳一はじめ10数名の有志によって製作された自主映画だ。今一番話題になっていると映画といっても過言ではないだろう。

この映画、もともとは全国で1館だけの上映だったが作品内容の素晴らしさが話題を呼んでSNSを中心に絶賛の嵐となっている。

さらに9月13日からはギャガが共同配給につき新宿ピカデリーほか全国50館以上で順次拡大公開されるため、これからますます話題となることが予想される。

公式サイトのXより(ちなみに現在は全国91館まで拡大している。9/7時点)

映画好きとしてはここまで評判だと気になるというもの。たまたま東京に行く予定があったのでその機会に鑑賞することにした。

訪れたのは8月30日の金曜日。会場は池袋シネマ・ロサ
19時50分の回を予約したので余裕をもって19時頃に会場近くに到着する。
飲み屋街にあるため少々騒々しい中を歩いて劇場に向かった。

池袋シネマ・ロサ。
シアターは2階、ポスターも飾ってあった。

ということで鑑賞したけど話題になってるのも納得。

本当に面白かった、これは多くの人にお薦めしたい。

まず物語の展開からして面白い。
タイムスリップを題材としているが、良い意味で「多分こうなるのだろう」という予想を外してくる。

話がどんどん拡がっていくしら伏線などが想像以上に練り込まれていることにも驚かされた。
個人的には何も知らずに観た方が楽しめると感じた。

「侍が現代にタイムスリップする」

これから観る人はこの事前情報だけで充分じゃないだろうか。

そして話も笑えるし熱くて泣ける。
全体的にコミカルな雰囲気で進みつつも時おり熱さと泣きが入ってくる。この緩急の付け方も実に良い。

主演の新左衛門をつとめた山口馬木也さん。
『テルマエ・ロマエ』の阿部寛さんもそうだけど、顔が劇画タッチだからこそコミカルな演出が良くハマる。真面目な顔でズレた行動をする、これだけで笑ってしまう。

こういうのはその人自身にしか出せない味だよなぁ。

個人的には新左衛門が居候することになるお寺の住職夫妻がとぼけた味わいを出してて良かった。

特に紅萬子さんが演じる住職の奥さんの突っ込みがナイス。彼女が登場する度に何か面白いことが起きるんじゃないかワクワクしてた。

不可思議な運命に右往左往される新左衛門。
彼の登場は「時代劇」とその製作に携わる人たちの人生にも影響を及ぼしていくことになる。

斜陽産業である時代劇に対する諦観と「だけど、それは今日じゃない」と奮闘する人々。
ここも熱いし映画愛を感じられる。

時代劇、その裏方ともいえる製作陣、斬られ役、会津藩…
映画を観終わってみると題材になっているモノはいずれも表舞台とはいえないもの。そういう意味で、これは日陰に生きているモノに光を当てている作品だとも思った。

自分が一番好きな場面は物語の後半、新左衛門の提案に冨家ノリマサさん演じる風見恭一郎が静かに涙を流す場面。
同じ境遇だからこそ新左衛門の気持ちが理解できたに違いない。悲しくもロマンチックな場面だ。

さまざまな要素が絡み合い映画は見事なラストを迎える。
映画が終わった後は場内からは拍手が起きていたが、それも納得。
「お見事!」と思わず言いたくなるような終わり方なのだ。

映画が終わった後は舞台挨拶があり、そこで製作の裏話を聞かせてもらった。本作にはさまざまな映画のオマージュがあり監督の映画愛を伺い知ることができた。

舞台挨拶の様子。左から安藤彰則、沙倉ゆうの、冨家ノリマサ、監督の安田淳一(敬称略)

ということで『侍タイムスリッパー』、間違いなく今年の台風の目となる作品だ。こうした面白い自主映画こそ多くの人に観て欲しい。
気になった方もそうでない方も是非ともチェックしてみてね。


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