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名コンビによるリブートホラーの傑作『透明人間』

7月10日から公開された『透明人間』。『ソウ』シリーズの脚本を手掛け、俳優でもあるリー・ワネルが監督をつとめた本作は全米で大ヒット、評論家や観客からも高い評価を得ている話題作だ。
筆者も7月15日(水)のTOHOシネマズ川崎の19時からの回で鑑賞してきた。

透明人間⑥

噂に違わぬ面白さで非常に楽しかった。しかし、当初は、全く別の作品になる予定でもあった本作。ここでは、本作の見所を、制作経緯や筆者の感想を交えてお薦めしていきたい。(※ネタバレは避けてますが、内容には触れているので未鑑賞の方はお気を付けください)

【制作経緯:当初はジョニー・デップ主演だった?】

本作の製作の発端は、『アベンジャーズ』シリーズで知られるマーベル・シネマティック・ユニバースの記録的ヒットから始まる。このユニバースに続けと、映画各社はこぞってユニバース企画を立ちあげた。『ワンダーウーマン』(2017年)、『ジャスティスリーグ』(2017年)などのDCユニバースや『GODZILA』(2014年)や『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017年)等のモンスターユニバース。そしてユニバーサル映画も往年のモンスター映画をリブートさせたダークユニバースを立ちあげる。その第一弾として製作されたのが、トム・クルーズ主演の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017年)だった。

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ところが、ユニバーサル映画の思惑とは逆に『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』は作品評価も芳しくなく、興行的にも失敗に終わってしまう。この事がキッカケとして、ダークユニバースは1作目にして終了してしまうのである。当初の計画では、『透明人間』は、ジョニー・デップ主演で、このダークユニバースに組み込む予定で企画されていた。しかし、脚本家の降板と『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』の失敗により、この企画もストップしてしまう。そしてユニバーサル映画は、モンスター映画のリブートをダークユニバース路線から、新進気鋭の監督達に撮らせる方向性へシフトチェンジしていくのである。

【作品情報:透明人間】

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製作年:2020年 製作国:アメリカ 監督:リー・ワネル

【あらすじ】富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れるエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残す。しかし、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、命まで脅かされるように。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが……(映画.com参照)

【脚本家×プロデューサーの名コンビによる脚本と演出が良い!】

本作のリー・ワネル監督の名前を知らない人でも、彼が関わった作品を観た事がある人は多いのではないだろうか?何故ならリー・ワネルは、あのホラー映画の名作『ソウ』シリーズの脚本家、『ソウ』といえば、最も成功したホラー映画としてギネスにも認定されているくらいの有名作品だ。リー・ワネルはシリーズ全ての作品に関わっており、1作目では俳優として作品にも出演している。
そんなソウシリーズの魅力といえば、観客を驚かせる巧みな脚本と演出。その手腕は今作でも遺憾なく発揮されている。序盤から観客を緊迫の展開に引きずり込むスリリングな展開、恐怖を煽り立てる音楽と演出。観客は最初から最後までスクリーンから目を離せない!

透明人間②

そして、本作の成功にはプロデューサーのジェイソン・ブラムの存在が大きい事も書いておきたい。ジェイソン・ブラムといえば、世界中で大ヒットした『パラノーマル・アクティビティ』(2010年)から『グリーン・インフェルノ』(2015年)、そしてアカデミー賞脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』(2017年)などこれまでに数々の名作を世に送り出してきた名プロデューサーだ。そんな名プロデューサーとリー・ワネル監督がタッグを組むのは今作が初めてではない。『インシディアス 序章』(2016年)、『アップグレード』(2019年)でもタッグを組んでおり、どちらも好評を博している。特に『アップグレード』は「AI」に乗っ取られる人間の恐怖を映しており、こちらはとても面白いので個人的にお薦めしたい。もし貴方が『透明人間』を観るのを迷ってるなら、先にこちらを観て判断材料にする事もありだと思うぞ。

アップグレード

【実力派女優のエリザベス・モスの演技が凄かった…】

この『透明人間』、様々な恐怖がある。一つはどこから襲って来るかわからない恐怖、二つは周りに話しても信じてもらえない怖さ。しかも相手が透明なので、その恐怖は観てる側にも伝わりづらい。だからこそ、役者陣の演技力が求められるのだが、本作のセシリアを演じたエリザベス・モスの演技が素晴らしい。日本ではあまり知られていない女優だが、これまでにTVシリーズ『ハンド・メイズ・テイル/次女の物語』(2017~)ではエミー賞、ゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を獲得、ブロードウェイでは、トニー賞主演女優賞にノミネートもされているなど、その実力は折り紙付き。どんどん追い詰められ精神的にも危うくなっていく(その為、周囲にはどんどん信じてもらえなくなる)姿は真に迫っており、本当に危うい人に見えるからさすがだ。

透明人間⑦

【これぞ正統派リブート『透明人間』というジャンルの代表作に推薦したい】

これまで透明人間を題材にした作品は大なり小なり作られてきたが、傑作といえる作品は実は少ないのはないかと思う。
「透明人間が出てくる映画」といえば、有名なのが『インビジブル』(2000年)。

インビジブル①

ポール・バーホーベン監督のこの作品は、ケビン・ベーコンの怪演透明になったのにやることのしょうもなさがネタにされており、映画ファンに愛されている作品だ。振り返ってみると「透明になる」というのは、超能力などの能力モノの一つとして扱われることの方が多い印象でもある

透明人間③

そんな『透明人間』というジャンルにおいて、本作は「透明人間」という題材を現代版に見事にアップデートしている。「透明になる」という観点でも「そうきたか」と唸らせてくれるし、透明人間=DV夫というのも今を反映している。(そして映画のラストの展開も)本作こそ、正当な『透明人間』映画として推したい。

(おまけ)ちなみに『透明人間』映画を調べてたら、こんな作品もあったので挙げておこう。『インビジブルシングス 未知なる能力』という何か色々掛け合わせたような邦題のこの作品。「透明人間」ではなく、透明になれる特殊能力を手に入れた少女の映画のよう。ちなみに公開日は『透明人間』と同じ7月10日である。気になる人はどうぞ。

インビジブルガールズ

【監督の次回作は狼男×ライアン・ゴズリング!】

本国で初週の興行成績1位を獲得し、全世界でも1億2000万ドルを超える大ヒットを記録した本作。今回の大評判を受け、ユニバーサル映画は『狼男』のリブートもリー・ワネル監督に任せる方向で交渉中とのニュースが挙がっている。本作の主演は、何と『ドライブ』(2012年)、『ラ・ラ・ランド』(2017年)のライアン・ゴズリング!まだ確定ではないが、『透明人間』も見事にリブートしてくれただけに『狼男』も素晴らしい作品にリブートしてくれそう!


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