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【思い出は美しい、それが後悔だとしても】映画『美しき仕事』感想

話の内容よりビジュアルに浸る…

舞台はアフリカのジブチに駐留する外国人部隊。
主人公ガルーはその舞台の上級曹長。話自体はとてもシンプル。
「上官に強い憧れを持つガルーが上官に気に入られた新兵に嫉妬し彼を破滅させようとする」

ただ映画はガルーの回想視点で時間も場所もバラバラ。「物語る」というよりガルーの回想に浸るといった印象を受けた。

主人公ガルーを演じるのはドニ・ラヴァン。

本作が撮られたのは1998年、監督は『ショコラ』、『パリ、18区、夜。』のクレール・ドゥニ。日本では長らく未公開だった作品だ。

物語の大半はガルーが所属する外国人部隊の日常が映し出される。ジブチの風景と躍動する男たちの肉体、ドゥニ監督が何を撮ろうとしたのかは明白。

ドゥニ監督曰く「男性の肉体をシンプルで美しいもの、弱いものとして撮りたかった」と語っている。劇中の外国人部隊が実戦がなくほぼ練習で済んでいるという点も男性の肉体を攻撃的なものとして描くことを避けている。

ドゥニ監督は幼いころジブチに住んでいたということもあってか、ジブチの撮り方も観光的ではなく近い距離感を感じる。

また本作のテーマは「外国人(よそ者)であるとはどういうことか?」
移民問題を抱える(そしてこれからもっと大きくなるであろう)我が国にも通じるテーマとも言える。

そんな本作だがドキュメンタリーっぽい撮り方で不思議と見入ってしまう。

景色の美しさはもちろん、彼らの統制が取れた動きが美しい(タイトルの『美しき仕事』の由来もそこからきているとのこと)。
機械が規則的な動きをしてるのをずっと観続けてしまう、そんな感じにも似てるかもしれない。

この映画の魅力、正直言語化するのが難しい…

音楽との親和性も良い。
オープニングが格好良いけど、それを超える勢いでエンディングがめちゃくちゃ良かった。ガルーが一人「The Rhythm of the Night」に合わせて踊り狂う。誰に見せるとも分からないダンス、まるで衝動。

自分がドニ・ラヴァンの名前を初めて知ったのがレオスカラックスの『汚れた血』。ドニ・ラヴァン演じるアレックスが「モダン・ラヴ」に合わせて疾走する場面が凄い好きで繰り返し見てたが、今作もそれに匹敵するくらい。

まさかまたドニ・ラヴァンに夢中にさせられるとは思わなかった…!
そんな思いがけない喜びもあった。

『汚れた血』、最初に観たのはDVD、好きな場面の多い映画だけどこの場面だけは繰り返し観たな。

観る人を選ぶだろうけじ自分は大好きな映画。これからも記憶に残りそう。

1998年製作/93分/PG12/フランス

※ドニ・ラヴァンといえば自分は『汚れた血』
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