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ハメをはずし過ぎて人生も踏み外した男達の物語『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

8月7日に公開された『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』。『スイス・アーミーマン』の監督とA24が再び組んだ新作という事で、公開前から映画好きの間で話題になっていた本作。『スイス・アーミーマン』も下ネタ全開だったが、今作もタイトルからして…(気になる人はディックという言葉を調べてみてね!)筆者も、新宿シネマカリテの8月22日の18:40の回で鑑賞してきたぞ。ここでは本作の感想を本作のポイントを交えて語りたいと思うので、興味ある方は是非ぜひ読んでいってほしい。

(ネタバレはしてないが、内容には触れているので気になる人は閲覧ご注意下さい)

ディックロングチケット

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製作年:2019年 製作国:アメリカ 監督:ダニエル・シャイナート

バンド仲間のジーク、アール、ディックは、いつものようにガレージに集まり、バンドの練習とその後に呑んだりしていつもと同じ日々を過ごしていた。しかし、ある原因によってディックが大ケガを負ってしまう。病院の前にディックを置き去りにした2人だが、ディックは死んでしまう。事件の話はがまたたく間に広がり、警察も捜査を進めるが、ディックの死の真相を知る2人は、なぜか彼の死因と自分たちの関与ををひた隠しにしようとするが…

【あの奇作『スイス・アーミーマン』監督の最新作!】

スイスアーミーマン

死体になったダニエル・ラドクリフが屁で海を渡る。
こんなとんでもない内容の作品で、その名を世界中に知らしめたのがダニエル・シャイナートとダニエル・クワンからなるダニエルコンビだ。
そんなダニエルコンビのダニエル・シャイナートが監督した新作が、本作の『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』だ。(ちなみに本作で監督してるのはダニエル・シャイナートのみ)
とんでも映画として語られがちな本作だが、個人的には『エターナル・サンシャイン』(2005年)、『ムードインディゴ うたかたの日々』(2013年)のミシェル・ゴンドリーのナイーブさに下品さを足して混ぜ合わせたかのようなエキセントリックな世界観は最高だと思う。こちらのインタビュー記事によると、今作は敢えて『スイス・アーミーマン』で見せたようなミュージックビデオ的な演出は避けたとの事。う~ん、正直、そういう演出を楽しみにしていので、敢えてしなかったのは残念!(ちなみに既に次回作の撮影は始まっており、そこでは再びダニエル・クワンと組んでるということなので、そちらも楽しみ!)

【この映画も「ハメを外しすぎて人生も踏み外した映画」だ!】

ハングオーバー①

本作を観た時、筆者が感じたのは、この映画は「ハメを外しすぎて人生も踏み外した映画」だということ。
「ハメを外しすぎて人生も踏み外した映画」とは、ふとした瞬間にハメを外しすぎたがゆえに、とりつかえしのつかない状態になってしまう映画である(注:筆者の造語)代表的な作品だと『ハング・オーバー』シリーズや『サンダーロード』(2020年)などが、このジャンルに該当する。こちらのインタビューでも、『ハングオーバー』シリーズを彷彿させると述べてるが、ダニエル・シャイナート監督によると、影響を受けた作品は、『スリング・ブレイド』(1996年)『メラニーは行く!』(2002年)そして特に『レポマン』(1984年)を挙げている。

【嘘みたいな本当の事件にインスパイアを受けた脚本】

本作は実際の事件にインスパイアを受けている。そしてその事件こそが『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』という問いかけに対しての答えにもなっている。下にその事件の全貌が載ったWikipediaを貼っておく(ただし英文)ちなみに本作を鑑賞前の人は大きくネタバレになってしまうので、閲覧要注意だ!


【途中、何を見せられてるんだろう感はある】

正直、本作に対する評判は賛否両論である(2020年9月2日時点でのFilmarksの評価は3.3)。筆者も映画好きの友達数人で鑑賞したのだが、正直友人達の評価は芳しくなかった。思うに『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』というタイトルも内容を表す言葉としてはあまり良くない。本作の原題は、『The Death of Dick Long』。邦題はキャッチーであるが、肝心の「なぜ死んだのか?」という点だけでいうと、それは物語中盤で明かされてしまうため、それ以降が長く感じてしまうかもしれない。(筆者も鑑賞途中で、何を見せられてるんだろうとは思った)。しかし、本来の本作のテーマは、打ち明けられない秘密を抱えた男の悲喜劇。これから観られる方は、そこを踏まえた上で観る事をお薦めしたい。

【エンディング曲の起用理由がひねくれてて面白い!】

本作のエンディング曲は、世界を代表するロックバンド、ニッケルバックの『How You Remind Me』。この曲を聴いた時、筆者はてっきり監督はニッケルバックの事が好きなんだろうなと思っていた。(チョイスが敢えてだったので)そしたら、実は監督はニッケルバンドの事を「最も嫌いなバンドのひとつ」だと語っているから驚きではないか。では、なぜ敢えて嫌いなバンドの曲を起用したのか?その理由が面白い。
「(劇中の)ジークやアールは、大多数の人物が共感できない人物だけど、映画を観ていると不思議と彼らに共感していくように構成を練ったんです。だから、僕も最も嫌いなバンドのニッケルバックの曲をあえてエンディングに使う事にしたんです。映画を観たあとにニッケルバックを聞くと、ジークやアールへ共感したのと同じように、良く聞こえてくるんです」(THE RIVER様のこちらの記事より抜粋)正直、分かるような分からないような理由だ。ただ、監督も語っているが、歌詞の内容は本当に本作の内容とリンクしてて合っている。



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